結城の伝統と魅力を味わう街なかフェス。【結いのおとインタビュー】
茨城県結城市で春に開催されているのが街なかフェス『結いのおと』。酒蔵や寺、結城紬の産地問屋などをライブ会場にした、他では味わうことができないフェスだ。ライブとライブの間は街を歩く。そこで街の魅力を発見する。野外フェスでも都市型フェスでもない、もうひとつのフェスのスタイルがここにある。実行委員会の野口純一さんに結城の魅力を聞いた。
–––– 今年で5回目の開催となります。今年は4月に開催時期が変更になりましたが、その理由は?
かなり内的な理由ですが、事業年度締めの関係です(笑)。どうしてもその年の年度末(3月)までに事業を実施しないと予算が使えなかったので。ただ『結いのおと』には弘経寺というお寺も会場になっていまして、ここは桜の名所なんです。ぜひ桜のシーズンに開催日を重ねてみたいということから、事業計画を次年度(4月)に変更した次第です。そうしたら今年は例年になく開花が早くて…なかなか思うようにいかないですね。
–––– 5回目の今年は、どんな特徴を持っていますか。
5回目という節目でもあり、イベント定着化がポイントです。今までは何かと手探りで試行錯誤しながらその回暮らしのイベントという開催でしたが、そろそろ内(街)のヒトや外のヒトに「毎年春になったら結城市では『結いのおと』が開催される」という認識になれたらと思っています。もちろん定着化=マンネリ化にならないよう常に変化は付けていきます。そのため(定着化)には、外への発信力をもっとつける必要があるということで、今回は企業さんとのコラボ企画なども多数組んでいます。
毎年恒例となっている手ぬぐい専門店かまわぬさんとのコラボ手ぬぐいや、もみじ市や東京(関西)蚤の市をはじめとした人気イベントを全国で企画運営されている手紙社さんなど、特にアパレル企業のFREAK’SSTOREさんとは事前プロモーションから関わっていただいており、コラボTシャツなども作りました。みなさん当日はブース出店もしていただきます。今後はこの街の持つ潜在的な地域資源とさまざまな縁を結びながら、よりおもしろい『結いのおと』にしていきたいと思っています。
–––– 土曜と日曜では会場が変わりますが、それは結城の街を見てもらいたいという思いからなのでしょうか。
その通りです。初めの頃は1日の開催で酒蔵から結城紬の産地問屋、カフェなど…結城の西から東まで会場にしていましたが、お客さんたちがそれぞれのエリアに滞留しがちで、あまり回遊がみられなかったのです。そこで1日目はお寺や酒蔵などの西側エリア、2日目は結城紬の産地問屋や古民家をリノベした飲食店などの東側エリアと2日間で開催エリアを分けることで、1日ずつじっくり街の特徴を伝えやすくなりました。
–––– 『結いのおと』でどんな時間を過ごしてほしいと思っていますか。
街なか特有の構造を活かしたイベントですので、お客さんにもアーティストさんにも「街」を感じて帰ってもらいたいです。結城の街の建物には重厚感があるので、そこを外から来た人たちに見てもらいたい。今の時代の建物じゃ絶対できないような良さがあって、音楽をやる上でも吹き抜けがうまく反響を作ったりとか、特に酒蔵なんかはまた違った味わいがあったりだとか。それに会場のキャパが狭いので、アーティストさんとの距離感がすごく近いです。これは結城ならではのある種の贅沢かと、逆を言えば会場のキャパはどれも大きくありあません。もしかしたら入場制限のかかる会場もあるかと思います。そんなときでも音が響く街なかをのんびりと歩く余裕を持ちながら、リラックスした時間をお過ごしいただけたらと思います。
–––– そもそも『結いのおと』をスタートさせたきっかけとは。
毎年10月に開催しているアートフェス『結い市』のカテゴリーに音楽もあり、回を重ねるうちに素敵なミュージシャンとの縁も重ねていきました。そんな縁を活用して年にもう一回ぐらいイベントが出来るのでは?と企画したのがきっかけです。スタート当初は、手探りの街なか音楽祭でしたので、先の展開も考えられないような状態でした。そんななかスタートした『結のおと』でしたが、たくさんのヒトと繋がりながら続けることで、今では『結い市』と並ぶ2大イベントとして成長してきました。身をもって継続する大切さを実感しております。
–––– 結城の魅力を教えてください。
結城紬をはじめとした歴史や文化、城下町としての趣のある街並みなどが印象的ですが、ヒトとの繋がりも魅力です。当日は大変貴重な建物をライブ会場として貸してくださいますし、貴重な結城紬のきものを貸していただき、着付けまでお手伝いしてくださいます。今回は、韻シストのみなさん、sugar meさん、MASSAN×BASHIRYさんなどが結城紬のきものでステージにあがります。何より街なかに音が鳴ること自体を許容してくれる。そんな協力体制があるのも結城の大きな魅力のひとつかと思います。そんな様々な結城の魅力を次の世代に伝えていく事も僕たちの役目かと思っています。
開催日:4月7日(土)、8日(日)
会場:弘経寺、武勇、結城酒造、Café la famille、奥順つむぎの館、御料理屋kokyu.、喜興(きよ)の湯
出演:KAKATO(鎮座DOPENESS×環ROY)、Polaris、田我流&MAHBIE、トクマルシュード、青葉市子、Michael Kaneko、韻シスト、tofubeats、WONK、ほか