家族と喧嘩した日に読んでほしい本。原田マハ「スイートホーム」読書感想文
「もしも、窓がなければ、窓辺のように花を置けばいい。光が入らなければ、明るい絵を掛ければいい。家は、そこに住む人が、明るく、あたたかくするものだから」
当ブログが『HOME個別指導塾』の日常を描いたものであると同時に、私も最近ホームを見つけたばかりなので、そこを幸せ溢れるスイート・ホームにしたくて、こんな名言が散りばめられた本『スイート・ホーム』を読んでみました。
筆者は『本日はお日柄もよく』や『楽園のカンヴァス』の原田マハさん。自身が美術館のキュレーターだったご経験から、美術系の作品が多い印象ですが、それ以外も面白いです。
まずは『スイート・ホーム』のあらすじを見てみましょう。
幸せのレシピ。 隠し味は、誰かを大切に想う気持ち――。 うつくしい高台の街にある小さな洋菓子店で繰り広げられる、 愛に満ちた家族の物語。 香田陽皆(こうだ・ひな)は、雑貨店に勤める引っ込み思案な二十八歳。 地元で愛される小さな洋菓子店「スイート・ホーム」を営む、腕利きだけれど不器用なパティシエの父、 明るい「看板娘」の母、華やかで積極的な性格の妹との四人暮らしだ。 ある男性に恋心を抱いている陽皆だが、なかなか想いを告げられず……。(「スイート・ホーム」) 料理研究家の未来と年下のスイーツ男子・辰野との切ない恋の行方(「あしたのレシピ」)、 香田一家といっしょに暮らしはじめた〝いっこおばちゃん〟が見舞われた思いがけない出来事(「希望のギフト」)など、 稀代のストーリーテラーが紡ぎあげる心温まる連作短編集。
連作短編集に外れなしの印象あり。『阪急電車』や『死神の精度』みたいなやつですね。
とにかくあったかい、陽だまりみたいな物語でした。原田マハさんの文章は読みやすく、心にすんなり入ってくる感じがします。
人生や物語につきものの「悪いこと」も、必要以上に胸がえぐられることもなく、安心して読むことができます。
それでいて、ちゃんと感動できるのもさすがです。
生徒たちに読ませる「課題図書」にしたいな。なんだか家族とうまくいかなかった日に、親と子、お互いに読んでほしいな。
きっと心にぽっと火が灯る。やさしい灯。あったかくて、不安が吹き飛ぶような、それでいて暗い道のりでは力強く輝く、道標になるような。
きっとそれが「ホーム」っていうものなんだろうと思います。
「家は、人が住んで、家庭になる。「ハウス」は、人が人と暮らして、時を経て「ホーム」になる」
明るい「看板娘」のお母さんのそんな一言が染みる、素敵な小説です。ぜひ読んでみてください。家族でね。
原田マハ『スイート・ホーム』読書感想文
『ホームをホームたらしめるもの』
ちょうどこの本を読み終えた日、メジャーリーガーになった大谷翔平が、初の本拠地(ホームグラウンド)での公式戦で、本塁打を放った。
ホームの魔力、はよくスポーツで使われる言葉だ。多くの選手にとって、ホームはアウェイより戦いやすい。それはスポーツ選手ではない僕らにとっても、イメージがしやすい事柄であろう。
なぜなんだろう。当たり前のことをぼんやりと考えてみた。勝手を知っているから?安心するから?ファンが多いから?答えはきっと一つではないが、まとめてこう言ってもいいんじゃないか。
「陽だまりみたいだから」
よくわからないと首を傾げた方に説明しよう。ホームとは、自分にとって最高に気持ちのいい空間。リラックスできる場所。身体的にも、気持ち的にも、いい状態でいられる。もっと言えば寒くもなく温かくもなく、ちょうどいいあたたかさ。ほら、まるで陽だまりみたいでしょ。
「違うな」と思っても、読み進めてほしい。細かいことはどうでもいいのだ。言いたいのは、ホームがあると人は強くなるということだ。
この本を読めば、それがすぐにわかる。
原田マハさんの新作『スイート・ホーム』は、連作短編集の形をとり、沢山の主人公が出てくる。洋菓子店「スイート・ホーム」の家族たちはもちろん、その街で暮らす常連さんたちを主役に据えた一遍一遍は、どれも心をほんわり温めてくれる、ハートフルで素敵な物語だ。
主人公たちはみんな、心にチクリと刺さるような痛みや寂しさ、迷いを抱えている。でも、彼らにはホームがある。心安らげる場所がある。陽だまりが、ある。
だから、力強く前へ進める。いいと思ったことを、堂々とやれる。挑戦できる。
だって、いつも背中を押してくれる場所があるから。何が起きても、あたたかく迎えてくれる場所があるから。
そこに、大好きな人達がいるから。
そう、ホームをホームたらしめるのは、きっと人だ。自分自身をも含めた、その場所を創っている人たち。味方。そうか、守られているから、陽だまりみたい(こだわる)に心や身体がポカポカしてくるのか。
そして物語同様、そんな人たちは自分たちの手で増やしていくことができる。私たちはつながって、広がって、もっと大きく、もっと強くなれる。
この物語は不動産屋さんのHPで発表されたということで、掌で踊らされた感覚はあれど、家っていいなと思ってしまった。でも、上記の通り、本当に大事なのは家じゃない。
そこにいる人だ。
そこにいる人たちが、ホームの正体だ。
「ほんでね。わが家は特別。なんていうても、ただのホームやないから。「スイート・ホーム」やもん」
仮にも「ホーム」を名乗っている者として、『スイート・ホーム』のお母さんみたいに、そう言える場所を目指さなくちゃな。
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我が塾「HOME」も、そこにいる生徒たちが主役です。丁寧に、感謝しよう。
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