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「こころのやさしいかいじゅうくん」マックス・ベルジュイス

2018.04.05 10:43

たくさんの方から心配して頂いていた妻の体調なのですが、最近はほぼ、通常通りの生活に戻れております。たくさんの暖かいお言葉を頂き、誠に感謝しております。

発送のスケジュールもここのところは通常通り行えているのですが、来週の木曜日、12日から18日まで、自分がパリへ買い付けへ行ってしまうので、この期間に頂いたご注文は19日以降に順次発送をさせて頂くことになってしまいますので、予めご了承下さい。

ご注文はこの期間も受け付けておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

さて、今日紹介したいな、と思っている絵本は可愛らしい絵本ですけれど、色々と考えさせられる絵本ですね。

本は、時にリトマス試験紙のように、その読む人の考えや思想を映し「そういう風に書かれている」と思わされてしまうことが度々あります。

このマックス・ベルジュイスによる絵本「こころのやさしいかいじゅうくん」もそんな本の一つではないでしょうか。

それは、世界の果ての小さな、そして平和な国のお話です。

人々は不自由なく、静かにゆっくりと生活をしていました。

ところが或る日、ある農夫の畑が荒らされていました。犯人はわかりません。それから次の日も、次の日も、違う畑が荒らされてしまいます。

農夫たちは困っていると森から巨大な炎が上がり、人々が口々に火事だ!と叫び出します。消防隊の人達と一緒になって森へ向かうと、森の中からのっしのっしと大きな一匹の怪獣が現れたのでした!

この「怪獣」と出会ったこの国の人々は怪獣をどうしようかと、色々と議論します。

軍隊で兵器として利用しようとしたり、檻に入れ見世物にしようとしたり、しかしそのどれも失敗に終わってしまいます。

そして最後にこの怪獣とこの国の人々が、ともに生きるために取った方法とは…。

可愛らしくも何処か抜けた、優しい雰囲気の絵、そしてその当の怪獣ものほほんとした性格がそのまま表れたような姿で描かれていて、厳しく鋭い内容がこの絵本に含まれているとは表紙からは想像も出来なかったのですが、読んでみれば現代の人々なら、色々なことを考えてしまう作品になっています。

この本の出版は1970年代です。恐らく作者の頭の中には核エネルギーについての意識は少なからずあったかと思われます。

この「怪獣」を何と読むか、それは本当に人それぞれではないでしょうか。2018年の日本人の私には勿論核エネルギーのメタファーと読むことも出来ますし、例えば怪獣をAIとしても読むことも出来るかと思います。

人が未知の新しい何物かと出会う時、それとどうやって付き合っていけば良いのか、その正解は無いのかもしれませんが、考え続けることはとても大切なことだと思わされますね。

ところで一点気になるところがありまして、このお話の、この国は一番最初に「ひとびとが何の心配もなく、平和に暮らしていました」と書かれているのですが、そんな平和な国が、怪獣をどう利用しようか、話し合った時最初に出した答えは軍事利用なのでした…。これには強烈な風刺が利いていると思いますが、皆さんは如何でしょうか。

どうぞオンラインストアの方でもご覧ください。

ちなみに当店在庫品は1978年日本語版初版(カバー付き!)です。

当店のマックス・ベルジュイスの絵本はこちらです。