2022年のまとめ①~光合成、呼吸と収量
2022年もあとわずかですね。
2022年の反省をしたいと思い各月の環境データをまとめてみました。
環境データは弊社で使用している環境モニタリング装置Thinkingfarmからです。
今年のデータを基に光合成と収量に関して考えていきたいと思います。
農産物の収量を上げるためにはどうしたら良いか?
答えの一つとして植物の光合成を最大化することです。
では光合成を最大化するとはどういうことか?
光合成には光、水、二酸化炭素の3要素が必要になります。太陽から受けた光エネルギーを使い、根から吸った水(H₂O)や空気中の二酸化炭素(CO₂)で糖を生成し、酸素を吐き出す”事が光合成です。このとき生成される糖が多ければ多いほど植物の体内に(糖が)蓄積されていき、果実が大きくなります。なお、生成された糖は70~80%が果実に転流しますが、環境条件により転流率は変化しますので、転流率を上げるための環境調節も必要です。
では光の量が多ければ光合成量が増加するのでしょうか?
下のグラフは弊社の今年1年間の日射量(MJ/㎡)と施設内の平均気温(℃)をまとめたグラフになります。
冬は日照時間が短いので低くなりますが、グラフを見ると年間安定した数値であることがわかります。光合成量もそうなのでしょうか?Thinkingfarmは環境数値から光合成量をシミュレーションすることができます。次のグラフは日射と純光合成量のグラフです。
純光合成量(葉面積(1㎡)当たりの光合成量(g)、純光合成量=光合成量―呼吸量)は、日射が多い夏季よりも冬季の方が高いことがわかります。冬季の純光合成量が高いのは二酸化炭素施用の効果です。二酸化炭素施用に関しては過去ブログ内でも取り上げたことありますが、今回は夏季の純光合成量の大きな低下に着目したいと思います。夏季は、平均日射は高いのですが、梅雨で天気が安定していないことが純光合成量低下の要因のひとつと考えられます。また、夏季は温度が高いことが問題になります。次のグラフは平均気温と純光合成量を示したものです。
平均気温が25℃以上になる月は光合成量が低いことがわかります。ここでもうひとつ着目したのが呼吸です。植物も動物と同じように呼吸をしています。光合成と呼吸は簡単に言えば逆の反応です。光合成量を考えるときに次の式を考えることになります。
純光合成量=光合成量―呼吸量
光合成は光がないと行われないのですが、呼吸は昼夜を問わず常に行われています。そのため呼吸が多いと光合成をいくらしても相殺されてしまうことになります。 次のグラフは純光合成量と呼吸量の関係を示したものです。
これまで示していた純光合成量は緑のグラフで、黒のグラフから赤色のグラフを引いたものになります。7~9月は呼吸量が多く、光合成量が多くても相殺されてしまい低くなってしまうことがわかります。呼吸量が多い月はどんな月でしょうか?下のグラフは平均気温と呼吸量を示したものです。
平均気温が高いと呼吸量が高いことが言えます。 温度が高いと、①光合成能力が下がる②呼吸量が増える、のダブルでマイナスになってしまいます。せっかく日射量があるのに温度が高いせいで純光合成量が下がってしまうので勿体ない季節です。冷房はコストパフォーマンスが悪いと思うので適度な遮光で温度上昇を抑えていくことが大事だと考えられます。今季は弊社では過去ブログで紹介した通り夏季の成績がよくありませんでした。これは純光合成量がグラフでもわかるよう低いことが原因だと思われます。では最後に実際に純光合成量と収量は関係あるのでしょうか? 今年の各作型の収量と純光合成量の関係をグラフ化してみました。
各作型株数、段数が異なるので各作型の収量を段数、株数で割った1段当たりの値を縦軸に、純光合成量を横軸にして、各作型の結果をプロットしました。グラフから分かる通り収量と純光合成量に相関が取れていることが分かります。つまり栽培期間の純光合成量が高ければ収量も上がると言えますが、夏期の温室内気温を遮光や細霧冷房などで下げる、二酸化炭素施用により光合成量を増やすなどの対策により、夏期に低下する収量を増加させる対策が必要です。また純光合成量が分かれば収量予測も可能になると言えます。
今回弊社の今年のデータを使って、純光合成量と収量の関係を見ました。
環境値をモニタリングすることで日々の環境変化を可視化することが勿論できますが、反省や課題を見つけるきっかけにすることもできます。
スマート農業で環境モニタリング装置を導入することが増えていますが、ただ測定して終わりだけでなくせっかくある数値を反省に生かし、次に生かしていくことが大事なのではと思います。