アマゾン、配送料引き上げの深謀
2018.04.06 10:23
2018.04.05(木)日経産業新聞
アマゾンジャパンは4日、ネット通販の小口の配送手数料を一部引き上げた。手数料が最大1.5倍となる。宅配大手の人手不足が深刻化するなか、消費者向けの料金を改定し配送サービスの維持やシステム更新の投資に充てる。宅配大手の値上げ要請がきっかけだが、これを契機に配送料が無料になる有料会員へ利用者を誘導する深謀もありそうだ。
記事では、アマゾンのメリットを2点示している。1つ目に、配送料無料のプライム会員の価値が相対的に高まること。年間3900円又は月400円の会費を支払い、「プライム会員にならない理由が無くなった」と非会員に言わせることだ。こうして会員が増えれば、年会費による収益基盤の安定化が確保される。2つ目には、送料が無料になる購入金額合計2千円を超えるよう、まとめ買いをする利用者が増えることによる客単価上昇だ。大量購入が増えれば、トータルで物流コストが低下する可能性もありうる。
加えて、今般の施策は顧客の選別とも見て取れる。優良顧客の囲い込みだ。豊富な商品ラインナップを誇り、スピーディーな配送を実現し、一定の「満足」を売り切った状態と整理し、次なるステージへと入った印象だ。もちろん外部要因がきっかけとなった施策とは理解するが、絶妙な対応を進めたと感じる。百貨店や航空会社で用いられる、いわゆるFSP(フリークエント・ショッパー・プログラム)の取り組みによる「優遇策」と同義に捉えた。
うまく配送料の値上げを転嫁しながら、収益力を高める施策。同業が溢れるECでの今般の取り組みは、小売りに留まらず、他産業にも応用して活用できるといえそうだ。