アベサイユのばら:#11 佐川氏“ゼロ回答” 野党、結束力の希薄さ露呈
先月27日行われた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問。
証人喚問は参考人招致と違い、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる可能性がある。
野党は、先月発覚した公文書改ざん問題という憲政史上まれに見る犯罪に安倍晋三首相や妻の昭恵氏、財務大臣の麻生太郎議員が関与しているかについて質す構えだった。
ただ、この証人喚問で事の真相がすべて明らかになるのではないかとの期待値は低かった。
というのも、日本ではえん罪による不当逮捕を防ぐため自白の強要は禁じられている。
喚問された証人に対しても自白の強要は許されないので、自らが刑事訴追を受ける可能性のあることについては証言を拒否できる(黙秘権の行使)
実際、佐川氏は大阪地検特捜部から捜査対象となっている人物。
つまり、自らに都合の悪い部分については「刑事訴追される恐れがあるためお答えできません」と逃げることが可能なのだ。
どんなに核心を突いた質問を繰り出しても黙秘権を行使されれば手も足も出ない。
そこで、野党は捜査対象とならないことがらについて質問を行うことで官邸の関与をあぶり出そうとした。
ところが、エリート街道を渡り歩いてきた官僚はその野党の目論見を見透かしたかのような見事な“ゼロ回答”を披露した。
佐川氏が言及を避けたこと
- 決裁文書改ざんへの自身の関与
- いつ、どのように改ざんされたか
- なぜ改ざんする必要があったのか
- 改ざん前の文書を見たか
- 改ざんを誰が指示したのか
少し頭を捻れば分かることだが、仮に佐川氏が改ざんに関わってないにも関わらず捜査対象となっていたとしたら、上記の質問に対してはっきりと答えられたはずだ。
それを「刑事訴追される恐れがあるためお答えできません」とはぐらかすということは、自身が関与していてその事実を認めれば刑事訴追されるし、とはいえ証人喚問の場で虚偽の証言をするわけにもいかないという思いから編み出した佐川氏にとっての最適解だったと言える。
これは、黙秘権の濫用にほかならない。
野党は、佐川氏の官僚らしい逃げ方に「これでは証人喚問の意味がないではないか」と憤った。
しかし、野党側も限られた時間で効率よく佐川氏からの証言を引き出すためにはもうひと知恵必要だったのではないか。
証人喚問では、質問者に与えられる時間は議席数に応じて決められており最も議席を有する自民党に多く時間が与えられている。(ことに森友問題の当事者の多くが自民党議員でありその政党に最も多くの時間が与えられていること自体、矛盾しているのだが)
世論調査における支持率をすべて足しても自民党に及ばない野党に与えられた時間は相対的に少ない。
だからこそ、野党は質問者を統一して代表者質問という形で追及をすべきだった。
それにも関わらず、野党は“仕事をしてます”アピールをするためかはいざ知らず、入れ替わり立ち替わり律儀に証人喚問を進めた。
ここに、野党の結束力の希薄さが表れているのではなかろうか。
公文書改ざんが行政の内部で行われたという重大事実に立ち向かうには、“個”を出している場合ではないはず。
防衛省で日報が隠蔽されていても、財務省で公文書が改ざんされても、厚労省が働き方改革に関するデータを捏造しても、トランプ大統領からはしごを外されても、総理の椅子に恋々としがみついている安倍さんのこと。
一か八かの「アベ難突破」の解散総選挙に打って出る可能性も否定できない。
そのときにも、野党がまとまらずそれぞれが党利党略を優先させるようなことになれば“アベ難”はいとも簡単に突破されてしまうだろう。