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mikke!

Novel Therapy『 見つけた! 』Lily作

2023.01.15 15:00

『見つけた! 』

Lily 著


妖精の女の子のhanaは、ブルーシーというまちに住んでいます。


茶色で長いくるくるの髪の毛。

くりっとした青い目が、hanaの特徴。

それと、うたうことが大好きです。


お気に入りの黄色いワンピースを着て、今日もお気に入りの場所に向かいます。

ごつごつした岩と岩の間を登っていけるのは小さいhanaの特権。


岩を少し登った小高い場所が、hanaのお気に入りです。

ここに来れば、うみのむこうにあるものがみえる気がするから。


『うみのむこうになにがあるんだろう?』


ブルーシーは好きだけど、ブルーシーのひとたちと、hanaは心から仲良くできませんでした。

ブルーシーには、にぎやかな音楽も、かわいいお花屋さんも、おいしいパン屋さんもあるのに。


ブルーシーに住む人は、どこかhanaにうそをついているような気がして。

それがいつも、hanaはさみしかったのです。


『いつか、ブルシーのそとのせかいをみてみたいなあ』


ブルーシーにはないものを見てみたくて、hanaはお気に入りの場所でいつもそう考えていました。


Hanaには家族がいますが、お父さんもお母さんも、優しいけれど、あまり仲良くできませんでした。

お母さんのお花屋さんで、hanaはいつもいたずらばかり。

叱られるのはいやだけど、お母さんが叱ってくれるときだけは、さみしくない気がしていたからです。


『どこかにわたしのまだ知らない本当のかぞくがいるかも』


ある時から、hanaはそう思うようになりました。


『お気に入りの場所で歌ったら、本当のお父さんとお母さんに見つけてもらえるかも』


なんとなく思いついたアイデアを、hanaは試してみたくなりました。

その日、hanaはいつものくろいローファーを脱いで、はだしで岩を登りました。


『お父さんとお母さんに見つけてもらうために、いつもより高いところでうたわなくちゃ』


なんとかふだんより高いところにいい場所を見つけ、深呼吸をして、hanaは歌い始めました。

歌うのは、昔ゆめで聴いたうた。


ブルーシーの街ではきいたことがない言葉でしたが、hanaはなぜかよく覚えていました。


『ほんとうの家族に会えたら、いまのこのさみしさが消える気がする』


そんな気持ちを込めて一生懸命うたっていると・・・。


とつぜんどしゃぶりの雨が降ってきました。

晴れの日が多いブルーシーでは、経験したことのない雨です。


『しんじゃうかも、でも、かえりたくない!』


さくせんは失敗に思えました。

しぶしぶ高台をおりようにも降りれず、

どうしようかと考えていると、

手のこうにふわふわしたものを感じました。


それは大きな犬でした。

犬は、hanaをみちびくかのようにhanaの目を見た後すぐに歩き始めました。

hanaがそれにつづくと、いつのまにか岩陰にふたりはいました。


『ありがとう。』


小さな声でhanaがそう言ったとき、雨が小降りになってきました。

と、同時に足音がきこえます。


犬の飼い主のおじさんでした。

飼い主は、hanaをちらっとみましたが、すぐに犬を連れて帰ろうとしました。

が、犬がhanaのとなりをはなれなかったので、飼い主はしぶしぶhanaもつれていくことにしました。


少し歩いたら、おじさんの家につきました。

ここにくる道の間、おじさんはhanaと一言も話してくれませんでした。

どきどきしながらhanaがいると、

おじさんはhanaに温かいスープをおうちでごちそうしてくれました。


その時、hanaははじめて自分のこころが温かくなるのをかんじました。


『ありがとう。』


さっきより少しだけおおきな声でいえたとき、あめはすっかりやんでいました。

おじさんは、なにも言わずhanaを泊めてくれました。


hanaが気づいたとき、

おじさんと飼い犬との生活は、もうかなりの時間がたっていました。


あの雨の日の出来事から、hanaはおじさんと飼い犬に恩返しをするように、よく家のことを手伝いました。

まちのひとたちとも、自分から声をかけて仲良くしようとがんばりました。



hanaはもう、知っていました。



ほんとうにほしいものを手に入れる方法。



それは、

いたずらをして構ってもらうことでも、

高い場所で歌って見つけてもらうことでもなく。



まずは感謝すること。

そして、

自分からその感謝を伝えること。


だれかを待つのではなく、

自分で動くこと。



あれから、

hanaは自分のもつ力をおじさんや、

まちのひとたちのために使い始めました。

自分の力を誰かの笑顔のためにつかえることは、

hanaにとってすごくしあわせなことでした。


居場所は、

さがすのではなくつくればいい。


hanaはもう、見つけていました。


おしまい。