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サメとゾンビと空伏空人

少年Nのいない世界:石川宏千花(講談社タイガ)

2018.04.07 04:51

 世の中のネット小説は毎日更新が必要らしい。

 どうやら毎日更新――なんなら、一日に三回、四回更新してでも、人の目に触れる機会を増やすという手段を用いないと人に見られないぐらい、ここのところ最近、ネット小説というものは溢れかえっているようだ。

 皆さん大変だなあ。と思いながら、ネット小説出身であるはずの私は今もこうして、一ヶ月に一回更新したら褒めて。な状況を保っている。我ながら、やる気がなさすぎる。まあ、ちょっと忙しい時期なので許してほしい。忙しいから更新をサボっているのに、ブログは更新するのか? と言われたら、ブログの文章の方が書きやすいからだと答えよう。前に、小説よりもエッセイの方が書きやすい。と言っていた作家を見たことがあるのだが、今ならその気持ちもよく分かる。


 さて。今回のブログの意図はタグの通り、タイトルの通り、読了本のおススメである。

 ブログを書くと決めてから数日、何冊か本を読んだのだが、どれもこれも、続編ばかりで、ブログで紹介するのなら、一巻からの方が良いだろう。と初めてのブログ記事で最終巻のおススメをした人間の口と手は考え、今こうして文章を打ち込んでいる。

 なので、少し前に読んだ本の中からの紹介だ。

 TwitterのTLで読んでいる人をあまり見かけない、しかし私自身は普通に面白いと思っている、おススメしがいのある本だ。そんなものがあるのか? あるんだよいっぱい。


 少年Nのいない世界。石川宏千花さん作。講談社タイガより発売。

 空伏空人は講談社タイガというレーベルに信頼感を多大に過剰なまでに持っている。そのせいか、家の本棚は、近所の本屋よりも講談社タイガの品ぞろえが良い。

 この本を買った理由も大体、そういう理由だ。あとはまあ、タイトルが妙に惹かれたのだ。なんか、良くない? 物寂しさが……ね?

 そもそも石川宏千花という作家すら、申し訳ない限りだけれども、私は知らなかった。見たことすらない名前だ。調べてみたら児童文学で活躍している方らしい。そりゃあ知らないはずだ。


 さて、少年Nのいない世界についてだ。

 ジャンルはファンタジーorSF。

 ジャンル分けというのは分かりやすくするためであり、その小説を固定し固執させるものではない。と考えているので、そこにはそんなに言及はしない。


 猫殺しの13きっぷ――。

 猫の首、十三匹分をビルの屋上から投げ落とし、自分も身を投げれば、違う世界――異世界に行くことができる。

 そんな噂話、都市伝説によって七人の少年少女は異世界に飛んでしまう。その言い方だとまるで喜んで七人が猫の首十三匹分を用意したかのようだけれども、用意したのはその中の一人――和久田悦史くんだけで、残りの六人は、巻き込まれただけだ。彼が猫殺しの犯人だと知って、飛び降り自殺しようとしているのを理解して、それを止めようとしたから。

 ちなみにだが、キャラデザで言えば、和久田くんが一番好きだ。クマがあるキャラ本当に好きねきみ


 異世界への逃避が叶い、彼らがたどり着いたのは『惑星キュア』あるいは、その周りの『惑星群』。異世界とは、遠い遠い、宇宙の先だったのである。まあ、全く違う世界の宇宙である可能性もあるのだけれども。惑星キュアとは、異世界の地球である可能性もあるのだけれども。

 ともかく。

 そんな異世界に、彼らは一人で、もしくは二人で取り残されてしまう。皆で異世界に飛んだのに、バラバラになってしまったのだ。しかも、別の惑星に。

 それから五年過ぎた現在。

 小学生だった少年少女が成長期を過ぎて、見た目も思考も変わっていく、そんな時間が経過した。

 少年少女の一人、長谷川歩巳くんはもう見た目がすげー変わってしまうのだけど、それは二巻の話である。

 この五年で、彼らは異世界においての自分の立場をつくりつつあった。

 地球にいた少年少女ではなく。

 遠い遠い宇宙の惑星群の僕らを。

 一人はスポーツ選手になった。一人は《惑星キュアの至宝》とまで呼ばれるようなバレリーナに。一人は食品加工工場で働き。

 一緒にこの異世界に飛んだ仲間を探そうとするもの。諦めたもの。ここでの生活で目一杯なもの。自由を失ったもの。

 五年という時間は、地球にいた頃の彼らではない彼らをつくりだすには、充分すぎる時間だ。

 しかし彼らはそのまま安住はしてられない。

 なぜなら彼らは、物語の主人公なのだから。


 さて、そんなわけで。この小説でなにが一番楽しめるのかと言えば、やっぱり『少年少女の成長』だ。

 成長期の五年なんて、心身ともに急成長するお年頃な彼らの人間関係恋愛関係仕事関係。成長していても、大人みたいになっていても、見違えていても、やはり変わらず子供である。そんな際どい年齢の子供たちの成長譚。読んでいて朗らかな気持ちになるし、ゆったりとした気分になる。

 決して派手ではない。スローな小説だ。

 でも、そのスローの中で明確に描かれていく心象描写は、たまらないんだ。


 そんなわけで、少年Nのいない世界。おススメします。四月二十日ぐらいに四巻が出るらしいので楽しみだ。

 あと「少年Nシリーズ」は別巻も存在する。二つの本で進めるシリーズなのである。こっちはいない少年、「少年N」のお話らしい。実はまだ読めてない。こっちも読みたいなあ。と思っている。