【ル】ROOTS(私的埋蔵文化財)
1977年、朝日放送で連夜放映された「ルーツ」は、社会現象といえるムーブメントを起こした。今私たちはごく一般的に「ルーツは・・・」と語る。しかしこのドラマを見るまで、そんな言い方はしなかった。当然、言葉はあったのだが、日本人の日常に登場することはなかった。
主人公のクンタ・キンテは西アフリカで奴隷商人にとらえられ、アメリカに売られる。ここから始まる物語が大ブームになった。
このパンフレットは販売されたものではない。アメリカの大ヒットTVドラマシリーズの日本放映を記念して、大阪・ABCホールで一挙上映会があった時に、配られたものだ。その抽選に当たったので観にいったのだ。
いやいや、正確に思い出すと違うな。あの時ABCホールでは妹と一緒だった。大阪の銀行勤めをしていた彼女はあの頃、映画試写会などにせっせと応募してよく当たっていた。その一つが「ルーツ」の特別上映会2名ご招待というのだった。それで誘われて出かけたのだった。
45年も前になるのか。私は当時30歳だから、結婚して福知山に住んでいて、まもなく二人目の子が誕生する、そんな時期だった。
「ルーツ」の主人公のように、国外から連れてこられた人の子孫や、移民した人、難民として逃れてきた人など、様々な理由で国境を越えて時が過ぎた人たちが、自分のルーツを探し出したいと思うのはわかるような気がする。
ずっと後、ロンドンの国立公文書館に調査で出かけた時、普通の市民が、自分のルーツ探しに資料を調べにたくさん来館していた。大英帝国が拡大していった結果、様々な地域から人が流入する国になって、やがて植民地は独立し、帝国は縮小してゆく。そこに住み着いた人たちの子孫が今、ルーツを探して家系図を制作するブームなのだと聞いた。
近年、日本でもNHKの番組「ファミリー・ヒストリー」が人気になって、そういう関心を持つ人が増えた。我が家も次男が強い関心をもって調査し始めたので、私も一緒に、祖父母やその上世代の歴史探索に関心が向いた。調べてみると仏壇の引き出しにあった過去帳なるものに記載された先祖代々の物語が、あちこちに残された墓や記録、古文書の中から立ち上がってくる。
それを見ていると、家柄がどうこうではなく、日本近代史の中に自分も含まれているのだなぁとしみじみするものがあるのだ。