夢の舞台
【ショートショートエッセイ】
ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCでの「マスターズ」もいよいよ本日が最終日になる。
もう20年以上も前に、このフェアウエイでまだ大学生だったタイガー・ウッドのプレイを観ていた。桁外れの新人であった。
そしてこのコースも桁外れであった。いかにも“南部の貴族”趣味の横溢したものだ。
このカントリークラブにも数は少ないがメンバーはいる。広いアメリカに散らばって300人とかいわれている。(ここでプレイしたい向きは、このメンバーを探して、一緒にプレイすればできる。)
だが、そのメンバーがここでプレイできるのは、半年あるかないかだという。この「マスターズ」が終わって5月中旬にはクローズで、夏が終わった秋口にオープンして、冬前にはクローズになる。そして、そのまま来年の「マスターズ」までコースの養生に専念する。
なるほど、「マスターズ」のためだけに作られたコースだというコンセプトは少しも揺らいでない。
初めてこのコースを歩いてみて感じたことは、「舞台」だなってこと。「千両役者」だけが立てる「舞台」だなって。つまり、ボビー・ジョーンズはゴルファーたちの「夢の舞台」をデザインしたんだってことを再確認させられた。
フェアウエイの緑、バンカーの白い砂、池の青い水がすべて目に沁みる。
そして、さまざまな花々。……ボビー・ジョーンズは世界中の花を集めろ!と言ったとか。
アザレア、マグノリア、アメリカハナミズキ、椿、藤、雪柳などなど……がコースを彩っている。
待てよ……?
これらの花期って違うのに、なぜオーガスタ・ナショナルGCでは一斉に咲くのか?
尋ねてみて、驚いた。
コース内に温水のパイプと冷水のパイプが通っていて、それがコンピュータでコントロールされ、4月第一週の「マスターズ」のときにそれぞれの植物が満開になるように管理しているというのだ。
やはり、「夢の舞台」であった。