アワ族
https://karapaia.com/archives/52207631.html?fbclid=IwAR0kmZNPx2XPaOynHMP4EuAqu_TcXS1K2nC9WrgdVXaSbZVWSm0gilWdr4o 【消滅の瀬戸際に追い込まれている、野生動物を友として暮らすアマゾンの部族「アワ族」】より
アマゾンの密林の奥深く、世界でもっとも危険にさらされた部族が住んでいる。古くからここで生活しているアワ族は、子どもから武器からペットまで、あらゆるものを運びながら、このブラジルの森の中を彷徨い歩いている。
そんな彼らは今、消滅の瀬戸際に追い込まれている。かつて奴隷として連れ去られたり、外部からもたらされた病気や農場を作るために土地を焼き払われたりすることで、その数はついに300~400人となった。
彼らはジャングルと完全に調和して暮らしている。アワ族の家族は、野生動物を大切にしてかわいがり、驚いたことに女性は自分の母乳を与えて彼らを育てるのだ。これまで現代世界と隔絶して生きてきた彼らは、ジャングルに守られてきた。そのため、アワ族に遭遇したことがある人間はほとんどいない。写真家のドメニコ・プリエセは、この稀有な部族と一緒に過ごして、彼らを笑わせることができたラッキーなひとりだ。
プリエセが初めてアワ族に会ったのは2009年のこと。友人のジャーナリストと人類学者一緒に2日間の川下りの旅に同行し、アワ族の住む手つかずの雨林に分け入った。
「彼らはモーターボートのエンジン音と聞きつけて、川岸に現われた。まるで別世界で、この衝撃を言葉で説明することはとてもできない」とプリエセは語る。奇妙な侵入者のことを、アワ族の人たちがどう思ったのか、すぐにはわからなかった。
彼らはプリエセがどこからやってきたのか知らないし、世界という概念がない。アワ族にとって、家族はなによりも大切なもので、大人になっても家族がないことは考えられない。
大切なのは家族だけではない。野生動物も同様にかわいがる。そのせいか、動物たちは木の実を割ったり、高い木から果物を取ってきたり、寝ている間に見張りをしてくれたりするという。彼らにとって、子どもたちと同じように動物たちもまた家族の一員なのだ。
野生のリスに自分の母乳を与える女
アワ族の子どもたちは、動物と共に成長する。ほとんどが野生動物を友として暮らしている。
そして生きるために必要な分だけ狩る
野生動物に助けられながら生きているアワ族
アワ族は、野生のブタ、リス、インコ、大型のネズミなどを手なずけているが、中でもお気に入りはサルだ。サルはアワ族にとって、貴重な食糧源だが、赤ん坊には母乳を与えて育て、決して食べない。森へ戻してもそれが家族の一員だとわかるのだ。
アワ族の女性は、自分の子どもと同じように、リスやサルに母乳を与える。アワ族は自然に近いのではなく、自然そのものなのだ。だが、そんな平穏な調和がむしばまれている。
500年前、ポルトガル人入植者がやってきたとき、ブラジル、マラニャン州のいたるところに数万人のアワ族が住んでいたが、現在は300~400人しか残っていないという。彼らの約60%は外の世界と接触したことがない。
ほとんどが、入植者によってもたらされた天然痘、はしか、流感などの病にかかって亡くなり、生き残った者たちはゴムやサトウキビ農園で奴隷のように働かされた。1835年、何世紀にも渡る抑圧を経て、部族たちがヨーロッパの支配者に対して立ち上がった。5年に渡る暴動で、10万人の地元民が虐殺されたという。
アワ族は、虐殺を逃れるため、新たに遊牧民のような移動生活を余儀なくされた。その後の200年の間に、狩りの達人となり、数時間でシェルターを建てる方法を学んだ。数日後にはそのシェルターは捨てるのだ。こうした遊牧民的な新しいライフスタイルのせいで、農作など失ってしまった昔の知恵も多い。
1982年、世界銀行やEUが、こうした地元部族の土地を守るためにブラジルに6億ポンドの融資をしたが、不法な伐採者たちがその後30年も彼らの存在を脅かし続けた。2003年から2010年の間に、450の部族民が殺されたという。
3年前、アワ族の8歳の少女が、保護区から外に迷い出てしまったせいで、農場主に生きながら焼かれたという。ほかの部族の長は、少女は見せしめで殺されたと言っている。
ブラジル政府は去年、侵入者はすべてアワ族の土地から一掃されたと発表したが、今、アワ族は新たな危険に直面している。アマゾンをなめ尽くす野火だ。農場主が土地を農園にしようとして、ジャングルを焼き払ったせいで広がった火事だ。地球の呼吸器と呼ばれているアマゾン東部の密林のかなりの面積を焼き尽くしてしまった。
いたるところ炎と煙と粉塵だらけで、アワ族の住む場所にも迫っている。このままでは、果実が豊富な森がすべて破壊され、水源が干上がってしまう。とても自分たちでは消火できるものではないので、政府になんとかしてもらいたいとアワ族は訴える。
ジャングルは火事や農地化によって、徐々に死に向かっている。アワ族にとって死活問題なのだ。だが、アワ族を助けに来たつもりの人間も、はからずも彼らの微妙なバランスを破壊しているのかもしれないと、プリエセは気づいている。
アワ族に贈ったTシャツなどが、彼らの生活様式をさらに破壊しているのかもしれない、とプリエセは懸念している。彼らは気に入ってくれたようだが。彼らはTシャツがなにから作られているのか、知らないし、製造工場など想像もできないだろう。木がもたらしてくれるものだと思っているかもしれない。木が豊富なジャングルで、結局彼らは毎日買い物をしているようなものだ。