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路面電車とLRT

2022.12.23 03:03

1.はじめに

 みなさんこんにちは。研究副班長の○○です。今回は路面電車について研究したいと思います。拙い文章ですが、最後まで読んでいただければ幸いです。

2.路面電車の概要

(1)路面電車とは

 路面電車とは、字のごとく路面を走る電車のことです。基本的には道路との併用軌道ですが、鉄道のみが走行できる専用軌道もあります。東京周辺の路面電車には、都電荒川線や東急世田谷線などがあります。東急世田谷線のほとんどは専用軌道ですが、分類上は路面電車になります。普通鉄道ではありますが、江ノ島電鉄線も併用軌道を持つ路線です。全国でも多くの会社が路面電車を運転しています。

東急世田谷線の300系

(2)LRTとは

 LRTとはLight Rail Transitの略で、低床型車両の採用や軌道や電停などを改良した次世代型の路面電車のことを指します。自動車やバスに比べ環境にやさしく、乗降もしやすいなど近年再評価されています。日本では富山地方鉄道などが採用していて、欧米など諸外国でも多く採用されています。

3.吉備線LRTについて

(1)吉備線LRTの概要

吉備線とは岡山県の岡山駅から総社駅までを結ぶ20.4kmの路線です。岡山駅では山陽新幹線などの各路線に、総社駅では伯備線と井原鉄道線に乗り換えることができます。全線非電化でキハ40系列を中心に運転しており、桃太郎線という愛称がつけられています。終日毎時1~2本ほどの本数が運転されています。2016年の平均通過人員は5749人です。

LRT化される場合、岡山駅の南口まで延伸され、途中駅も新設される予定です。車両は福井鉄道で使用されているFUKURAMUをもとにした車両を運転する予定です。

吉備線LRTの路線図

(この他にも新駅が設置される予定です・計画は変更される可能性があります)

(2)LRT化の利点

・本数の増加

吉備線のLRT化は一部区間の複線化と交換設備の増設も含まれています。そのため、現在の朝ラッシュ時は15~20分おきの運転ですが、LRT化によって最大7~10分おき程度まで増発できるとされています。

・バリアフリー化などの利便性向上

 LRTは路面電車の中でも超低床型車両を使用しているため、バリアフリー化が実現できます。超高齢化社会において、高齢者の利用しやすい設備であることは重要であり、LRTの利用促進につながると思います。

・環境への負担軽減

運輸部門における二酸化炭素排出量(2018年度)

参考:国土交通省

 路面電車をはじめとする鉄道は二酸化炭素の排出量が自動車などと比較して大幅に低くなっています。従来の気動車と比較しても大幅に二酸化炭素放出量を減らすことが期待できます。地球温暖化抑止のためにも、旅客貨物ともに自動車社会から二酸化炭素排出量の少ない鉄道の利用を進めていく必要はあると思います。

(3)既存路線LRT化の前例

・富山地方鉄道富山港線(旧富山ライトレール)

富山港線および富山ライトレール富山港線の利用客数推移

(2005年は会社移行によりデータがありません 2006年から富山ライトレール)

参考:国土交通省

 JR富山港線は富山ライトレールとなり、新駅の設置や増発、バリアフリー化を行いました。その結果、2004年までの利用客数を大きく上回る利用客数を計測しました。利便性が高まった結果、自家用車やバスからのシフトが発生したものと思われます。吉備線も同様に既存路線からのLRT化のため、利便性が向上すれば利用客は増加すると思います。

(4)吉備線LRTの問題点

・混雑

 現在吉備線で使用されているキハ47系1両の定員は124人または128人で、ピーク時間帯は最大4両編成で運用されています。4両編成時の定員は約500人程度です。

吉備線の備中三門駅の岡山方面の時刻表

以前は4両編成だったが、3月のダイヤ改正で1両少なくなった。乗客によると、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の全面解除などを受け、人出が増えた今月になって混雑が一気に増したといい、「他の人と距離を取りたいけど、難しい状態」と総社市から利用する専門学校1年の女子(18)。同市、団体職員男性(61)も「感染リスクが不安」と漏らす。
 同支社の説明では、車両数を減らした理由は「より利用の多い時間帯の列車に割り当てるため」。減らした1両は、この便より前に岡山駅を発着する同じ桃太郎線の上下計4本に回し、各3両だった車両数を各4両に増やして運行しているという。「車両を新たに作るには、かなりのコストと時間がかかる」と同支社。「利用状況を踏まえながら、より満足度の高い運行となるよう限られた車両をやりくりしている」と理解を求める。
山陽新聞デジタル2020/6/10より

 現在ではダイヤ改正を挟んでおり実際に確認はしていませんが、以前の3両編成では非常に混雑していることがわかります。4両編成の定員は500人程度で、毎時3本の場合輸送能力は毎時1500人ほどになります。LRT使用予定のFUKURAMUの定員は155人で吉備線のLRTはピーク時毎時6~8本程度(毎時1200人程度)のため混雑が懸念されます。

・費用

吉備線の沿線も例外ではなく、人口減少が予想されています。LRTで利益を出し続けるには利用客を増やしていく必要があります。バスなどの周辺交通との協調などの対策をすべきだと思います。

(5)問題点の解決策

・増発

 一部複線化や交換設備の整備によって増発のハードルが下がります。本数は利便性に直結します。1両あたりの定員数が減少し、混雑も問題になっているためラッシュ時間帯含め増発は必須になるでしょう。

・周辺の交通機関との協調

 新駅の設置によって交通体型が変化します。バスと鉄道は競合関係にもなるため、人口が少ない地域だと共倒れしてしまう可能性もあります。それぞれの利点を活かすためにLRT化をきっかけに交通体型の再築をしても良いと思います。

 また、駐車場や駐輪場の整備によって「※パークアンドライド」の促進をして利用客を増やし、環境対策も同時に行う必要もあると思います。

・さまざまなイベントの実施

 イベントの実施によって、路面電車を地域に親しませて利用を促進します。吉備線は桃太郎線とも呼ばれており関連したイベントでもよいと思います。

・高齢者への割引

 こちらは行政にかかわりますが、高齢者の移動手段確保のためにLRTを含めた公共交通機関の割引をしてもよいと思います。近年、高齢者の自動車事故が多発している印象を受けます。その対策として公共交通機関を利用してもらえるようにしてもよいと思います。


※パークアンドライド

自動車でそのまま目的地に行くのではなく駅付近の駐車場に駐車して、主な移動は鉄道を使うというもの

自転車の場合はサイクルアンドライドと呼ばれる


4.宇都宮LRTについて

(1)宇都宮LRTの概要

東武宇都宮駅から芳賀町の工業団地を結ぶ路線です。JR宇都宮駅から芳賀町までの14.6kmが優先開業区間とされています。日本で初めてとなる、従来の軌道を利用しないLRTとなる予定です。宇都宮市は渋滞が激しく、路面電車の敷設が以前から検討されてきました。

芳賀町の工業団地には清原工業団地とホンダの工場群があり、従業員数も多くなっていると思います。宇都宮駅から通勤している人も一定数いると思うので、朝夕は混雑するでしょう。途中にはベルモールと呼ばれるイトーヨーカドー系列のスーパーマーケットがあるので、バスや自動車からシフトする人を増やすことが出来れば日中も一定の需要はあると思います。平賀町駅には駐車場などが併設され、パークアンドライドが促進されます。

(2)宇都宮LRTの利点

・環境への負担軽減、バリアフリー化

 吉備線LRTの利点でもありましたが、路面電車の大きな強みには、環境への負担が少ないことやバリアフリー化によって高齢化社会でも利用しやすい点なども挙げられます。

・渋滞緩和

 宇都宮LRTの建設予定地付近には工業団地が多く存在します。現在、その工業団地に向かう自動車による渋滞が発生しています。

(3)宇都宮LRTの問題点

・需要

 宇都宮市では交通手段における自動車の割合が高くなっています。原因として、バス以外の交通手段が少なく、かつバスが不便である点にあります。戸口から戸口へ直接向かうことができる自家用車から、乗り換えの必要となるLRTにどれだけの人がシフトするのかは不透明です。需要が少なければ採算が取れないということになるため、自動車やバスからのシフト、新規需要の創出は必須だと思います。

・渋滞、道路との兼ね合い

 宇都宮LRTでは宇都宮駅から平賀町駅までは鬼怒通りと呼ばれる幹線道路を通ります。この通りは2車線(一部3車線)で、路面電車専用軌道を設けた場合1車線になってしまいます。渋滞の激しい鬼怒通りではあまり有効ではありません。しかし、道路と共用にした場合には列車が渋滞に巻き込まれたり、事故が増えるなど、サービスが低下してしまいます。サービスが低下した場合、利用客の減少や、自家用車の利用による渋滞の悪化などが考えられます。また、普通の鉄道と比較して自動車や歩行者との接触が多いため、路面電車は事故が多いという問題もあります。

・混雑

 需要と相反する課題ではありますが、工業団地への輸送を中心に混雑してしまう可能性もあります。宇都宮駅から工業団地へは多数の送迎バスが運転されており、どのくらいがシフトするのかも未知数です。現在予定されている本数では混雑したり輸送過多になってしまうかもしれません。

(4)問題点の解決策

・駐車場、駐輪場の追加整備と割引

 需要の創出のため駐車場と駐輪場を整備します。計画でも平賀町駅を中心に整備される予定ですが、より多くの駅で整備する方がよいと考えます。また、利用の促進のため、LRTとセットの場合割引が発生するなどして、利用客を増やしていくべきだと思います。

・周辺の公共交通機関との連携

  基本的には吉備線LRTと同じになります。既存の自動車道路1車線を使って建設するため、よりLRTに乗客が集まるような交通体系にすれば、渋滞の緩和と利便性向上が図れると思います。

・路面電車専用軌道について

 宇都宮LRTは現在、交差点を除き専用軌道での建設が予定されています。私は予定を変更せず建設するのが良いと思います。理由としては宇都宮のLRTは道路の中心部分を走行するため、停留所に自動車が侵入しないという利点が事故防止の上でも重要だと考えました。また、LRTを歩道沿いに建設する場合、工事の際に隣接する建物からの出入りがしにくくなるため道路の中心部に建設する必要があると思います。

5.路面電車の未来

 新型コロナウイルスの流行に伴い路面電車に関わる情勢は大きく変化しました。テレワークの推進や公共交通機関から自家用車へのシフトも発生しています。この研究は流行が収まり、以前の状況になる前提で書いていますが、計画が中止になる可能性も大きくあると思います。公共交通機関が便利になることは地方の人口減少に歯止めをかける意味でも必要だとは思いますが、財政面で大きな問題が生じると思います。流行具合や政府や地方自治体の対応によって変わるため計画中止の是非について明言はしません。しかし、LRT化が成功すればより地方の公共交通機関がより便利になっていくと思うので、これまでに述べてきた解決策でどうにか便利な路面電車を走らせてほしいと思います。

 

6.おわりに

 まず、研究をなかなか提出しなくてすみませんでした。そして久しぶりに提出した研究が期限ぎりぎりのこんな研究ですみませんでした。路面電車は古く新しい交通機関として長く走り続けてもらいたいなと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

・東洋経済オンライン https://toyokeizai.net

・タビリス https://tabiris.com

・宇都宮市 https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp

・岡山市 https://www.city.okayama.jp/

・富山市 https://www.city.toyama.toyama.jp/

・富山地方鉄道 https://www.chitetsu.co.jp/

・JR西日本 https://www.westjr.co.jp/

・JR東日本 https://www.jreast.co.jp/

・国土交通省 https://www.mlit.go.jp/


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。