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小田急多摩線について

2022.12.23 05:27

1.はじめに

 みなさんこんにちは。研究班長の○○です。研究班の長になりましたがまったく実感がありません。同輩や後輩の協力に感謝いたします。今回は小田急多摩線の延伸計画について研究を書きました。小田急多摩線の延伸先は私の地元なので、今まで以上に詳しい調査、研究ができていると思います。最後まで読んでいただけると幸いです。

2.小田急多摩線とは

 小田急多摩線は神奈川県川崎市にある新百合ヶ丘駅と東京都多摩市の唐木田駅を結ぶ全長約10.6kmの路線です。新百合ヶ丘駅で小田急小田原線に接続しており直通の優等列車も運行されるなど、多摩ニュータウンと都心を結ぶ役割を持っています。多摩線内においては各駅停車と優等種別の2つの停車パターンがあります。

【図1】小田急多摩線の路線図

【写真1】小田急各線で運行されている8000形(前)と3000形(後)

3.小田急多摩線の課題

(1)京王相模原線との競合

 先述の通り、小田急線は多摩地区と都心のアクセスを担っていますが、小田急永山駅と小田急多摩センター駅で乗り換えのできる京王相模原線も京王線に直通し、都心へアクセスしています。そのため、京王相模原線との競合が発生しています。

【表1】多摩センター駅と永山駅の利用客数比較(2020年度)

 表1は小田急と京王の多摩センター駅と永山駅の利用客数を表しており、太字の部分が優位を取っている数値になります。このように、小田急は京王との競合に大きく差がつけられています。その原因は様々あります。なお、ダイヤ等は2021年11月時点のデータとなります。

(A)不便なダイヤ

【表2】多摩センター駅から新宿駅までの乗り継ぎ比較(平日日中時間帯上り)

 現状の日中時間帯のダイヤでは、所要時間、乗換回数、有効本数ともに小田急は京王に劣っていることがわかります。有効本数とは「ある目的地に行くのに実際に使える先着列車の本数」のことです。現在の多摩線は各駅停車が毎時6本、急行が毎時3本の合計9本運転されていますが、急行の前を走る各駅停車に乗車した場合でも新宿駅到着時刻は急行に乗車した場合と同じのため、有効本数は毎時6本となります。なお、この場合は上りですが、下りの場合は所要時間や有効本数が変化します。時間帯によっては、乗り継ぎ時間の増加によりさらに所要時間が増加します。詳しくは、4.解決策で解説します。

(B)高額な運賃

【表3】多摩センター駅から新宿駅までの料金比較

 表3から分かる通り、京王と小田急では料金面で大きく差をつけられています。定期運賃は6か月で5,000円以上も差が発生しています。会社によっては最安値の経路の運賃分のみが支給される会社もあり、京王のシェアが増加する原因となっています。

(C)座席指定列車の有無

【表4】朝ラッシュ時間帯にロマンスカーを利用する場合の時刻表

(新百合ヶ丘駅で乗り換え・太字はロマンスカー)

【表5】朝ラッシュ時間帯の京王ライナーの時刻表(相模原線系統のみ)

 京王では京王ライナーと呼ばれる座席指定列車を朝夕のラッシュ時間帯に運行しています。400円の追加料金で確実に座席を確保することが出来るので、路線を選ぶ際の付加価値となります。小田急にも座席指定特急のロマンスカーが時間帯を問わず運行されていますが、多摩線への直通は2016年のダイヤ改正で廃止されており、現在は新百合ヶ丘駅での乗り換えが必要となります。また、朝ラッシュ時においては新百合ヶ丘駅に停車するロマンスカーは多くなく、多摩線からの利用は難しくなっています。そのことから、快適に通勤したい利用客は京王を選択することになります。

【写真2】ロマンスカーの小田急30000形

【写真3】ライナーで運用される京王5000系

(2)人口減少と少子高齢化による利用客の減少

 小田急沿線の多摩ニュータウンに限らず、日本全国で人口は減少していくと見積もられています。人口減少と少子高齢化によって収入の大部分にあたる定期利用が減少し、将来的に大きな課題となるでしょう。

3.延伸計画

(1)延伸計画とは

【図2】延伸区間の地図

『「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」における調査結果について』より引用

 現在の終着駅である唐木田駅から横浜線の相模原駅、相模線の上溝駅、愛川地区を経由して小田急線の本厚木駅まで延伸する計画があります。そのうち上溝駅までの区間が具体化しています。今回の研究では、上溝駅までの延伸について考えていきます。

(2)計画の概要

(A)延伸区間

 唐木田駅から上溝駅の約8.8kmの延伸計画で、唐木田駅と相模原駅の間の小山田地区に中間駅を設置する計画となっています。また、現在唐木田駅には車庫(喜多見検車区唐木田出張所)が併設されており、このうちの東側2線は延伸を見据えた設計となっています。その2線から延伸される予定です。

【図3】唐木田駅の配線図(矢印の番号は下の写真の番号です)

【写真4】右側2線から延伸される予定

【写真5】2線のみ他の線路と離れている

 路線が延長されるにあたって、必要となる編成数は当然増加します。また、現在の唐木田駅の2本の留置線を本線とするため、多摩線内における留置線の数は減少します。現在の唐木田駅では計16編成が夜間滞泊を行っており、使用可能な留置線の全てを使用しているため、どこかに夜間滞泊できる設備を建設しなければなりません。小田急線の他の路線にも留置線及び検車区等は存在しますが、ダイヤや運用の点を考慮すると多摩線内に建設するのが効率的です。建設場所を検討した結果、上溝駅の本線の延長上および小田急多摩センター駅の改良によって確保することとされています。上溝駅は1面2線と留置線2線で作られ、中間駅と相模原駅は2面2線となる予定です。

(B)既存設備の改良

 上溝駅のほかに夜間滞泊できる場所の一つとして小田急多摩センター駅の改良が挙げられています。現在は2面2線の小田急多摩センター駅は開業当初は2面4線の駅であり、現在も線路設備こそないもののスペースは確保されています。また、折り返し設備も設けられ一部列車は小田急多摩センター駅で折り返しをする予定となっています。ただ、この折り返し設備の建設のために、本線を約270mに渡り線形改良する必要があります。

【図4】小田急多摩センター駅の現在の配線図

【図5】小田急多摩センター駅改良後の配線図

【写真6】

2番線ホームにある旧4番線跡地

副本線として活用される

【写真7】

留置線を設置するスペースが少しだけ確保されている

(3)計画の課題点

(A)採算性


【表6】小田急多摩線延伸区間の費用便益比

 多くの新線建設の際に課題となる採算性についてですが、小田急多摩線も例外ではありません。小田急多摩線延伸計画の費用便益比は累計30年間で1.2、累計50年間で1.4となっています。費用便益比はその値が1以上であれば、その事業を社会的な観点から効率的な事業であると評価できる指標です。小田急多摩線延伸の投資効率性は認められるものの、相鉄東急直通線の費用便益比が2014年時点で2.2であったものが、2年後の2016年時点では1.6と急降下した例もあります。社会的意義は認められ黒字化は達成できるものの、依然採算性には課題があると言えます。

【写真8】相鉄東急直通線に乗り入れる予定の5080系

 また、相模原駅の隣に、京王相模原線が乗り入れリニア中央新幹線の途中停車駅となる予定である橋本駅があり、京王との競合が激しくなります。相模原駅へ延伸したとしても効果が限られてしまうでしょう。また、相模原駅は相模原市役所の最寄り駅ですが、市内には先述した橋本駅や相模大野駅など相模原駅よりも利用客数の多い駅が多数存在しています。市の中心部にありながら利用客数が多くないという点も採算性が低いことの原因となっています。

 また、上溝駅は乗降客数が1万人を割っており、相模原駅までの延伸以上に採算性に難があります。

【表7】相模原市内の駅の利用客数(一部・データは2020年度)


※費用便益比

「継続した場合」の便益から「中止した場合」の便益を引いたものと、「継続した場合」の費用から「中止した場合」の費用を引いたものの比


(B)駅名の重複

 現在、小田急小田原線には小田急相模原駅が存在しています。小田急多摩線がJRの相模原駅に延伸した場合、小田急の自社線内に相模原駅と小田急相模原駅の二つが混在してしまいまいます。相模原駅と小田急相模原駅は離れているため、初めて利用する乗客が混乱してしまう可能性があります。そのため、どちらかの駅名を変更する必要があるでしょう。

(C)上溝駅の留置線


 延伸線整備に伴い、整備される列車の留置については、小田急多摩線及び延伸線内を対象に検討する。 ただし、サービス水準により想定される留置必要編成数を前提として、網羅的に検討・ 整理し、実用性が高く効率的な留置線の設置位置の選定を行い、上溝駅後方に2編成分の留置線を整備する。        

「小田急多摩線延伸に関する関係者会議 報告書」より引用



 関係者会議の報告書には以上にように記載されています。しかし、上溝駅は高架で建設される予定となっており、周辺住宅への影響が懸念されます。また、同報告書には


 支障家屋を少なくするため、路線延長を極力短くする。

「小田急多摩線延伸に関する関係者会議 報告書」より引用


と記載されており、留置線の建設が適当であるのか疑問が残ります。また、上溝駅は相模線に沿って建設されることになっていますが、相模線の茅ヶ崎側の区間はすぐに住宅となる区間もあり、建設にあたっては支障となるでしょう。

(4)相模原駅までの先行開業案

 ここまで上溝駅までの開業を前提として考えていますが、相模原駅まで先行開業するという案もあり、現在はこちらが主流となっています。相模原駅までの延伸は2033年、上溝駅までの延伸時期は未定となっています。上溝駅まで延伸した場合採算性などさまざまな課題があるため、小田急多摩線は相模原駅までの延伸がと妥当であると考えます。

4.解決策

 現在の多摩線の課題と延伸後の課題の双方を踏まえて、解決策を考えていきたいと思います。

(1)沿線地域の魅力向上

 沿線の人口が増加すればその路線の利用客は増加します。人口流入を増加させるために小田急のブランド力、魅力を向上させる必要があると考えられます。

 現在小田急では子育てしやすい沿線の実現に向けた取り組みを強化しています。子育て世代に選ばれる路線となることによって、通勤通学の定期収入を確保できるという側面もあります。


・子育て応援トレイン/子育て見守り車両

・小児IC運賃一律50円

・「こどもの笑顔をつくる子育てパートナー」宣言

・『LOVE for BABY』プロジェクト

・小田急の子育て応援ナビ FunFanおだきゅう

・小田急こどもみらいクラブ


【表8】小田急の子育てしやすい沿線の実現に向けた取り組み(一部)

 沿線の魅力を向上するために小田急多摩線を「子育て応援路線」に設定し、小田急多摩線沿線の子育て環境を整備していくべきだと思います。

 子育て応援トレインと子育て見守り車両については「今後もより良い形で、プロジェクトの取組を継続していきたいと考えています。(小田急エージェンシーの2021/10/29の記事より)」とあるように小田急として前向きな姿勢を示しています。都営大江戸線では優先席のある車端部に子育て応援スペースを設けるなど、車両単位でなくても導入を進めていくべきだと考えています。

 小田急多摩線の各駅停車で運用される6両編成は小田急各線と共通の運用が組まれています。現在は多数の形式が運用に入っていますが、小田急5000形の導入により、8000形の6両編成を4両編成と連結した10両編成で運用することで、6両編成での運用は3000形に統一することができます。3000形は車齢が20年近くになる編成もあり、大規模更新が予想されるため、その際に多摩線専用の編成を設定し、子育て応援車両を導入するべきだと考えます。

 また、現在黒川駅の駅前には小田急が管理していると思われる広大な土地があります。この土地を子育て支援の場として整備するべきだと思います。小田急系列の保育園「小田急こどもみらいクラブ」は現在、梅ヶ丘駅、経堂駅、千歳船橋駅、喜多見駅と世田谷エリアに集中しており、多摩線沿線にはありません。この保育園の整備に加え、公園や小田急社員の子どもを預けられるスペースを併設した複合型保育園を建設し、小田急多摩線の子育て環境を整備していくべきだと考えています。

【写真11】黒川駅前の空きスペース

(2)ワンマン化など経費削減

 ワンマン化によって人件費を削減することで人口減少に対応しつつ、採算性を向上させるという策が考えられます。多摩線は全線にわたって立体交差化がされており踏切がなく、カーブ上にある駅もないため見通しも問題ありません。

(A)ワンマン化の課題

 ワンマン化の問題点としては①安全性、②運転士の負担増加、③車両改造の必要性の3つがあげられます。

①安全性

 ワンマン化によってさまざまな安全性の課題があげられます。例としては車掌がいないため出発時の列車との接触等に気が付かない点や、車内でテロ等が発生した場合に対応が難しいという点です。1つめに関しては運転士がモニターで確認しながら運転するなどの対応策が考えられますが、課題②の運転士の負担増加につながってしまいます。

②運転士の負担増加

 ワンマン化することによって、車掌が行っていた業務は一部自動化されるものの基本的に運転士が行うことになり負担が増加します。運転士の負担が増加することによって事故が発生してしまう可能性は増加します。また、業務内容の専門化が進むため、人員の確保や育成も難しくなります。

③車両改造の必要

 現在、小田急線内ではワンマン化を行っておらず、ワンマン運転対応した車両は常磐緩行線でのワンマン化を想定した10両編成の4000形と直通先の東京メトロ16000系、JRのE233系2000番台のみとなっています。現状の運用では多摩線の運用は小田原線などと共通化されているため、優等運用に就く10両編成と線内各停の運用に就く6両編成だけで小田急の多くの編成の改造が必要になります。また、車齢が30年を超えている8000形にワンマン化の改造を行う必要があるのかという問題もあります。

(B)ワンマン化の課題に対する解決策

①ホームドアの設置

 ホームドアを設置することで発着時の列車との接触事故削減と、安全確認時間を減少させることが可能だと考えられます。しかし、現在小田急では1日の利用客数が10万人以上の駅を中心にホームドアの設置を行っており、多摩線に該当する駅はありません。そのため、ワンマン化とホームドアの完全設置を相模原駅までの延伸開業と同時期の2033年と設定するのが良いと思います。

 また、多摩線内の利用客数が10万人以上の駅は存在しない(2020年度の乗降客数を参考)ため、多摩線内にホームドアを設置する計画はありません。転落防止の観点からも乗降客数が多い駅から設置することが望ましいと考えているので、延伸開業するタイミングで問題ないと思います。

【写真12】小田急のホームドア(画像は新宿駅)

②各駅停車運用の固定化

 先述の通り小田急多摩線の運用は他の路線と共通となっています。そのため、新旧問わずさまざまな編成が多摩線を走行することになります。編成数が多く車齢30年を超える8000形が主流である優等運用はワンマン化せず、先述の子育て応援車両の設置改造と同時に、3000形の大規模更新にあわせてワンマン化改造を行い、多摩線の各駅停車専用で運用に就かせるのが良いかと思います。

③緊急時に運輸指令から直接乗客に指示できる体制を構築

 2021年10月31日、京王線の車内で傷害事件が発生しました。当時運転士が運輸指令の指示を受けている際に乗客が窓から脱出し始めました。運転士が車掌の役割も担うことで、乗客への指示ができなくなり、さらなる混乱を招く可能性が高まります。このような事件が発生した際に、車内の防犯カメラを運輸指令が確認し、運輸指令が直接乗客への指示をできるようにするという体制を作るべきだと考えています。車内でSOSボタンが押されると、運輸指令が確認でき、各車両の防犯カメラや位置情報から乗客と乗務員の双方に指示を出すというものです。車掌の役割を運輸指令が担うことによって、緊急時の運転士の負担を削減します。

④列車の自動運転化

 運転士の負担削減のために列車の自動運転を導入するべきだと思います。現在でも地下鉄やJRの一部路線で取り入れられています。こちらも車両の改造や設備の新設が必要になるため、2033年の延伸開業時に一括で導入するべきだと思います。また、多摩線内のみの運用となる各駅停車用の編成のみの導入にすべきだと思います。

(3)相模原駅の駅名の重複問題

 相模原駅の駅名の重複については、小田急相模原駅の改名が妥当だと考えています。JRの相模原駅は横浜線との乗換駅になるため、駅名を統一すべきだと考えています。小田急多摩線の開業でJRの駅名を変更することは難しいと思います。小田急相模原という駅名は「おださが」の愛称で親しまれているなど地域に定着しており、沿線住民からの反発が無いと言い切ることはできません。そのような場合は副駅名に残すなど沿線住民と協議していく必要があると思います。変更後の駅名については住所通り「南台」、相模原市側の「相模台」、座間市側の「相模が丘」などから選ぶのが良いのではないかと思います。

(4)ダイヤの改善

 京王相模原線との比較でも述べたように現在の多摩線のダイヤでは京王に劣っている部分が多くあります。小田原線や江ノ島線との兼ね合いや需要と供給の関係を考えると大きく改善できるわけではありませんが、可能な範囲内で延伸後のダイヤを踏まえて改善点を上げていきたいと思います。

5.ダイヤの現状と延伸後の改善案

※ダイヤについては2021年3月改正のダイヤを参照しています。

(1)日中時間帯

 日中は、20分パターンで新宿駅発着の急行を毎時3本、新百合ヶ丘駅発着の各駅停車を毎時6本運行するダイヤとなっています。ただし、土休日の一部時間帯に限り、新宿駅発着の急行が多摩線内各駅停車となり、各駅停車を毎時6本運行するダイヤとなります。また、上りと下りでは接続が異なっており、詳しいダイヤは以下のようになっています。

(A)現在の平日日中時間帯のパターン

【表9】日中時間帯下りの乗り継ぎ時刻表

【表10】日中時間帯上りの乗り継ぎ時刻表

 日中のダイヤは20分パターンに小田原駅・藤沢駅発着の快速急行、新松田駅・唐木田駅発着の急行、向ヶ丘遊園駅発着で千代田線直通の準急がそれぞれ1本、本厚木駅発着の各駅停車が2本運転されています。

 多摩線関連では、下りの場合、新百合ヶ丘駅始発の各駅停車が快速急行からの接続を受け、唐木田駅発着の急行は新百合ヶ丘駅で快速急行からの接続を受けません。そのため、有効本数は毎時9本となり、多摩センター駅までの最速の乗り継ぎの所要時間は38分となります。上りの場合、唐木田駅発の急行が新百合ヶ丘駅で小田原駅発の快速急行に接続するため、有効本数が毎時6本と少なくなり、最速の乗り継ぎの所要時間が33分と下りと比較して速くなります。


【表11】日中時間帯における新宿駅~多摩センター駅間の乗り継ぎ比較

(B)現在の土休日13時台から15時台のパターン


【表12】土休日一部時間の下りの乗継時刻表

【表13】土休日一部時間の上りの乗継時刻表

 土休日の13時台から15時台までは新宿駅から直通する急行が多摩線内各駅停車になり、多摩線内のみを走る各駅停車が20分間隔の毎時3本となります。下りの有効本数は上りと同じ毎時6本となり、新百合ヶ丘駅での乗り換え時間の増加により最速乗り継ぎの所要時間は40分と増加します。上りの場合、有効本数は毎時6本と変わらないものの、最速乗り継ぎの所要時間が37分と増加します。

 【表14】土休日一部時間帯における新宿駅~多摩センター駅間の乗り継ぎ比較

(C)延伸後の優等停車駅

 快速急行は唐木田駅と小山田地区の新駅を通過、通勤急行と急行は停車とします。詳しくはそれぞれの種別が運行される時間帯の改善ダイヤで後述します。

【図6】延伸後の改善ダイヤにおける停車パターンの路線図

(D)日中の改善ダイヤ


【表15】日中下り改善ダイヤ

【表16】日中上り改善ダイヤ

 延伸の影響で利用客が増加すると考えられるため、土休日のみの減便を廃止し全日統一のダイヤにしました。各駅停車の一部は多摩センター駅で折り返し、急行は唐木田駅と小山田地区の新駅にも停車させます。また、各駅停車と快速急行の接続を一部改善し、新宿方面の所要時間を短縮しました。上下線ともに相模原駅からの有効本数を毎時6本確保しました。

(3)夕ラッシュ時間帯

【表17】夕ラッシュ時間帯の下り時刻表

 夕ラッシュ時間帯は30分のパターンダイヤになっており、新宿駅毎時02分と32分発の快速急行が多摩線へ直通します。小田急多摩センター駅までの所要時間は36分と日中の急行よりも速くなっています。小田急多摩センター駅への有効本数は8本で京王の6本を上回っています。

 夕ラッシュ時間帯の課題としては直通の本数の少なさです。京王相模原線には各駅停車を含めて毎時12本直通しているのに対して小田急多摩線へは毎時2本と大幅に少なくなっています。町田、本厚木方面の乗車が多く、多摩線に本数を多く割けられないのが現状です。

 かつてはロマンスカーが多摩線に直通していましたが、利用客が少なかったことを受けて2016年のダイヤ改正で廃止されました。小田原方面の利用客が多いことや新宿駅のホーム運用、VSE引退に伴う編成数の減少などを踏まえると、多摩線へのロマンスカー設定は適切ではないと考えられます。

【表18】延伸後の夕ラッシュ時間帯の下り改善ダイヤの時刻表

 改善ダイヤでは毎時17、47分の急行を快速急行とし、その後ろに急行を新設しました。代々木上原駅までのダイヤが多少窮屈となりますが、複々線区間はちょうど7.5分間隔で快速急行と急行が走ることになります。また、優等種別の行先変更も行うことで、偏っていた小田原方面行の優等列車の間隔を一部均等化しました。

(4)朝ラッシュ時間帯

【表19】現在の朝ラッシュ時上りの時刻表

 朝ラッシュピーク時間帯は10分の中に快速急行と各駅停車がそれぞれ2本、通勤急行と通勤準急がそれぞれ1本ずつ運転されています。多摩線の各駅停車は10分に1本の運転で、一部は新百合ヶ丘駅で藤沢駅始発の快速急行に接続します。

 課題としては多摩線が延伸されることにより利用客が増加し、混雑の悪化やそれに伴う遅延が発生することです。ただ、新百合ヶ丘駅から向ヶ丘遊園駅間は毎時30本運行されておりこれ以上の運行は不可能であり、新宿駅のホーム数を考えると新宿口の増発も難しくなっています。現状のダイヤは大きく変更する必要はないと考えています。

 ただ、時間帯によって同じ10分パターン内でも多摩線内各駅停車から藤沢駅始発の快速急行に乗り換えられない列車があります。小田急が公表している列車ごとの混雑のデータを参照すると、快速急行よりも通勤急行の方が混雑している場合と、その逆の両方があります。そのため、新百合ヶ丘駅での接続については、快速急行の方が混雑している場合は通勤急行に乗り換えるようなダイヤ設定にすることで混雑の平準化を図るべきでしょう.。

【表20】延伸後の朝ラッシュ時上り改善時刻表

 通勤急行は20分おきに相模原駅始発と多摩センター駅始発を交互に運転します。その上で通勤急行の多摩線内において小田急永山駅から各駅に停車するべきだと考えています。各駅停車が多摩センター駅で始発の通勤急行に接続をとった場合、各駅停車の相模原駅発車間隔がばらけてしまう他、現在の唐木田駅は通勤急行が停車しているので通過としてしまうと利便性が低下してしまうため通勤急行を停車させるべきだと考えています。

6.総括

・沿線の魅力向上のために子育て環境の整備やブランドイメージの向上を行う

・課題を解決したうえでワンマン化などの経費削減を行う

・ダイヤは夕ラッシュ時を中心に改善し、新駅と唐木田駅は快速急行のみ通過とする

・駅名は小田急相模原駅を改名する

7.あとがき

 いかがだったでしょうか。小田急多摩線はさまざまな問題点は抱えているものの、延伸など明るい材料も多く持ち合わせている路線です。ただ、研究を書き終えた後の2022年3月のダイヤ改正概要が発表され、夕ラッシュ時間帯の快速急行の格下げや小田急全体で減便されることなど、新型コロナウイルスの影響は鉄道会社にとって大きなものなのだと実感しています。延伸の動向のみならず、今後の小田急多摩線に注目していきたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

8.参考文献

・国土交通省

・小田急電鉄

https://www.mlit.go.jp/

https://www.odakyu.jp/

・京王電鉄

・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

https://www.keio.co.jp/

https://www.jrtt.go.jp/

・相模原市

・町田市

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/

https://www.city.machida.tokyo.jp/

・国土地理院

・多摩市

https://www.gsi.go.jp/

https://www.city.tama.lg.jp/

・LOVE for BABY

・小田急こどもみらいクラブ

https://loveforbaby.jp/

https://www.odakyu-kodomomirai.jp/

・駅探

https://ekitan.com/

・小田急多摩線延伸に関する関係者会議 報告書

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました。掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とは若干異なる場合があります。