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ダイヤローグ

2022.12.23 05:28

http://copjapan.env.go.jp/talanoa/articles/16/ 【長崎県五島市「車座ふるさとトーク」:再生可能エネルギーで環境を良くして地域を豊かに】より

10月13日、長崎県五島市で「車座ふるさとトーク」が開かれ、城内環境副大臣が地域の企業や高校生など住民のみなさんと対話を行いました。

「車座ふるさとトーク」とは、大臣・副大臣・政務官等が地域に赴き、現場の方々と少人数で車座の対話を行い、生の声をつぶさに聞いて政策に活かそうという取り組みです。

五島市は、2030年度の再生可能エネルギー自給率132.4%を目標に掲げ、島嶼部という地理的特性と地域の知恵やネットワークを掛け合わせ、島全体で再生可能エネルギーを推進しています。今回は、地域の資源を持続可能な形で最大限活用する「地域循環共生圏」創造の先駆として、脱炭素化に向けた現状と課題、今後の展望を共有いただきました。

参加者からは、「すでに再エネ関連事業が9割を占めるが、石油関連事業や従事者も引き続き存在する中、経済や雇用が良くならなければ意味がない。環境だけでなく経済や雇用も良くするのは大前提だ」「山肌を切り開いて太陽光発電パネルを設置する事例が相次いでいる。安全性や環境負荷などを考慮した指針が必要ではないか」「日本初の浮体式洋上風力発電に協力したいとの気持ちでやってきた。漁業組合として、今後も発電事業者と漁業者でwin-winの関係を築きたい」など、積極的な意見や要望、具体的なアイディアが寄せられました。

城内環境副大臣は、五島市の取り組みが、環境を良くすることが地域を豊かにする好例であるとして、「本日いただいたご意見を含め、タラノア対話として、COP24などを通じて世界に発信していきたい」と話しました。

http://copjapan.env.go.jp/talanoa/about/ 【タラノア対話とは】より

2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で合意された、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」。このパリ協定では、「世界全体の平均気温の上昇を2℃より十分に低く抑える」という、2℃目標を掲げています。

「タラノア対話」は、この目標を達成するために、世界全体の温室効果ガス排出削減の取り組みに関する優良事例を共有し、目標達成に向けた取組意欲の向上を目指すものです。

「タラノア」とは、COP23の議長国フィジーの言葉で、「包摂的、参加型、透明な対話プロセス」を意味します。

タラノア対話では、ストーリーを語ることを通じてお互いの経験やアイディア、スキルを共有するというプロセスが大きな意味を持ちます。このプロセスで、参加者はお互いに対する共感と理解を深め、信頼を築き上げることができます。

こうした「タラノア」の精神を踏まえ、タラノア対話では、

我々はどこにいるのか?(Where are we?)

どこへ行きたいのか?(Where do we want to go?)

どうやって行くのか?(How do we get there?)

という3つの問いに答える形で、お互いのストーリーを共有し、1.現状を把握し、2.今後目指すべき将来像(目標)と3.その達成に向けた行動を確認します。

タラノア対話の進め方

タラノア対話は、2018年1月から12月のCOP24までの1年間を通じて実施されます。1月から、COP24までが「準備フェーズ」で、気候変動対策に取り組むあらゆる政府・自治体・企業・団体などから、温室効果ガスの排出削減等に関する取り組みの情報を集めるフェーズです。集められた情報は、公式ポータルサイトに掲載され、世界に向けて紹介されます。

そのうち、4月2日までに集められた情報は、COPの準備会合である補助機関会合(SB:2018年4月30日~5月10日)で議論され、その後も10月29日までこの情報収集は続きます。また、IPCCから出される1.5度特別報告書もタラノア対話にインプットされる重要な情報の1つです。

そして、12月3日~14日に、ポーランドのカトヴィツェで開催されるCOP24以降が政治フェーズです。政治フェーズでは、COP24において各国から閣僚級が参加して行われ、準備フェーズで集められた情報を元に、声明や基調講演、円卓会議等を行います。対話の成果は、レポートやサマリーとしてまとめられます。

日本版タラノア対話ポータルサイト

「未来を拓く、あなたの温暖化対策 優良事例ポータル - タラノアJAPAN」とは

パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする社会(脱炭素社会)を目指しています。脱炭素社会を実現するには、政府だけでなく、企業、自治体、研究機関、NGOなど、あらゆる方々の取り組みが不可欠です。日本政府はこの認識の下、タラノア対話が、その名前が意味するとおり、「あらゆる主体が参加する開かれたプロセス」となることが重要だと考えています。

そこで、パリ協定の目標達成に資する分析や計画、制度等、優れた知見・取り組みについて、国内の企業や自治体、NGO、研究機関などの様々な主体の方々から情報提供いただき、

提供いただいた情報を日本の取り組みとしてとりまとめ、タラノア対話公式プラットフォームにインプットするため、

提供いただいた情報や世界各国の情報を国内に広く発信するため、

国内外の情報を集約・発信する場が、この「未来を拓く、あなたの温暖化対策 優良事例ポータル - タラノアJAPAN」(以下、タラノアJAPAN)です。

提供いただいた情報はタラノアJAPANに掲載され、国内外へ発信するとともに、2018年10月29日までに日本の優れた経験やビジョン(ストーリー)をとりまとめ、日本の取り組みとして国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出する予定です。これにより、タラノア対話の目的である温室効果ガスの排出削減に向けた意欲向上や優れた取り組みの普及・促進に貢献することになります。

なぜタラノア対話に参加するのか

近年、COPは、世界各国の政府や企業、自治体のリーダー、そして報道陣が数万人規模で集まり、優れた技術や取り組みをアピールする場となっています。タラノア対話は、今年のCOP24で最も注目されるイベントの1つですので、タラノア対話を通じた発信効果は非常に高いといえます。

また、タラノア対話を通じて共有される国内外の優れた取り組みは、各主体が直面している課題を解決するための答えやヒントにもなり得るものです。タラノアJAPANでは、そうした有益な情報を日本から世界に発信し、また世界の優れた情報を日本国内に共有することで、更なる温室効果ガスの排出削減を新たな成長につなげることを目指しています。


Facebook向後 善之さん投稿記事

「感じるオープンダイアローグ 森川すいめい 著 講談社現代新書」

僕がアメリカでコミュニティメンタルヘルスの施設でインターンをした後日本に帰ってきて驚いたのは、医師から「統合失調症の人の話は聴いてはいけない。患者さんの状態が悪くなるから」と言われたことです。僕がインターンをしていた施設では、当たり前のように患者さんのお話を聴いていたものですから。

また、病院の職員が、患者さんを取り囲んでいるのを見たこともあります。その患者さんは、怯えた顔をして何か叫んでいました。もっと、別なやり方があるだろうと思いました。あんな人数(数人)で取り囲まれたら、患者さんは恐怖を感じるだろうと思ったのです。

この本の中で、森川さんも同じような違和感を持ったということが書かれていました(p.36,38など)。

この本は、著者によるオープンダイアローグの紹介とともに、おそらくもっと大切なのが、著者がオープンダイアローグのトレーニングを受けていく中で変容していく様子が書かれている第3章でしょう。トレーニングは、ざっくり言ってしまえば、自分を見つめ鎧をとっていくというものだと思います。

欧米では、教育分析を受けたり、個人カウンセリングを数十回受けるなどを通して自分を見つめることを科されていることが多いです。僕は、大学院修了までに40〜50時間程度のカウンセリング、その後は義務ではありませんでしたがカウンセリングを受け続け、合計は100時間を超えていると思います。その中で、それまで気がつかなかった、自分の中の思い込みとか、癖とか、防衛とかが見えてきました。

自分を徹底的に探求することは、ときにとても苦しいものだと思いますが、人の心を扱うプロになるとき必要なプロセスだと思います。

この本の最後の方で書かれていた、フィンランドのケロプダス病院での患者への初期対応が印象的です。

「ケロプダス病院では、最初の3回は、抗精神病薬(向精神薬の一つ)を処方しないと決めています。薬や診断名を考える前に、話をすることを優先させます。最初の対話のときに、医師が参加していないときもあります。一方で、看護師さんたちは数個の睡眠薬(向精神薬の一つ)をポケットに持っていて、それを渡すことがあります。(p.146)」

とても落ち着いた柔らかい感じの対応の様子が伺えます。


https://www.youtube.com/watch?v=ePGv6cSlS9k

オープンダイアローグ 変わり始めた精神医療 治療の最前線

いま精神医療の現場で、新たな手法「オープンダイアローグ」が注目を集めています。フィンランド発祥のこの治療法は、患者と医療者、ときには家族などの関係者も加わり、対話を行っていくもの。入院や薬による治療では得られなかった変化も見られるなど、その可能性に大きな期待が寄せられています。日本で始まったオープンダイアローグの実践の場を取材しました。

【対話を重視するオープンダイアローグ】

実際に、オープンダイアローグはどのような環境で行われるのでしょうか。

オープンダイアローグを実践している千葉県のクリニックの部屋では、ソファーと柔らかい雰囲気のある椅子が並べられています。医療者と患者が向き合う従来のような堅苦しい雰囲気はなく、まるで家庭のリビングのようです。

このクリニックで診療を行っている精神科医の斎藤環さんは、オープンダイアローグに関する情報提供などを行っているオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン共同代表を務めています。オープンダイアローグと、これまでの精神医療の手法とはどのような違いがあるのか、斎藤さんにお聞きしました。

「非常に大きな違いがいろいろありますが、まず、何といってもお薬とか入院はできるだけしないで、対話を中心に治療を進めていくというところがまず挙げられると思います。それからもう1つは、患者さんが安心感とか安全保障感をできるだけ強く感じられるような雰囲気を作ること。この部屋もそのつもりでレイアウトされています。くつろいで安心できる空間でこそよい治療ができるという発想も、従来は乏しかったと私は思いますので、オープンダイアローグ独特のものと言っていいんじゃないかと。

従来の医療に比べて、医師・患者関係は限りなく対等に近づいてきていて、フラットな関係でやるというのが原則になっています」(斎藤さん)

対話の“普通さ”が問題を“解決”に導く

実際にオープンダイアローグによる治療はどのように行われているのでしょうか。ある都内のクリニックの様子です。

統合失調症型障害と診断されているKさん(20代)。

10代の頃から、外出すると周囲に見られているように感じ、家にこもらざるを得ないことに苦しんできました。

森川さん「一緒に会話していく森川と申します、よろしくお願いします」

画像(オープンダイアローグの場に集まった専門職の人たち)

この日参加したのは、Kさんと母親、そして医師、看護師、心理士、家族療法・トラウマセラピストなど、5人の専門職。オープンダイアローグでは、こうしたチームで対話を行います。

森川さん「今日この場において、話したいなって思ってたことってありましたか?」

Kさん「例えばいまは大丈夫なんですけど、家とかで母親とちょっと言い合いになっちゃったり、そういうのはあって」

大切にされるのは、患者がいま話したいことを尊重すること。通常の診察とは違い、診断名に関わる症状以外のことも時間をかけて聞いていきます。本人だけでなく家族の声にも平等に耳を傾けます。

森川さん「お母様は今日特に何か話したかったなって」

母親「私がちょっと仕事に出ようと思ったときに、『今日、俺、1日なにも予定がない、どうしよう』と。で、それを私に言ってきて。ただその話をしているとケンカになっちゃうんですよ」

森川さん「言い争いになっちゃうことについて、ただ聞いてるだけでも、聞かずにぼんやりしていただいていてもいいので、ちょっと5人で話してみてもいいですか?」

医師や専門職の参加者が体の向きを変えて話し始めました。通常、患者の前では行わない専門職同士の意見交換を目の前で行うリフレクティングという手法です。

看護師「私が思ったのが、何回でもそうやってケンカして、やり直してっていうのが、なんかそう思える安心感っていうか、なんか安心してケンカできたら、いいのかなっていうのは思った」

森川さん「安心してケンカする?」

家族療法・トラウマセラピスト「この10年の間にお二人の関係性がどうだったのかなって思って。それがここまでケンカしても今日仲良くいらっしゃっているというふうに、回復してきたっていう関係性が私はすごく信頼があるなって思いました。だから、ケンカしてるっておっしゃってるけども、その質っていうのがだいぶ違うんじゃないかなって思ったんですよね」

森川さん「ケンカの質が変わってきてるんじゃないか?」

家族療法・トラウマセラピスト「回復に合わせて、たぶん質も変わってるし、長さも変わってるし」

専門職にもさまざまな見方があるのを知ることで、患者や家族は自分の悩みを、自然に違った角度からも捉えていきます。

森川さん「いま話したいことってありますか?」

Kさん「周りが見てる、感じてることを聞くとやっぱり自分で新たに『ああ、そうだったな』と思うとこもあって。前に比べたら本当によくなってるのはよくなってるので」

母親「そうなんですよね。忘れちゃうんですけどね、結構その大変だった時期って。でもやっぱり思い返すと本当に遠慮して遠慮して、もう怒らせないように怒らせないようにしてましたので。普通の病院の診察で、先生1人と親子の3人で話してますと、絶対私の本音も言えないですし、最近こういう状態なんですっていうことを言うと、先生が『ああそう、じゃあ薬どうする?』ってそれで終わりなので」

こうして対話を繰り返す中で、親子の関係は少しずつ改善してきました。

現在、実践が始まったばかりの日本で、治療の有効性を裏付けるほどのデータは集まっていませんが、2年前から治療を受け始めたKさんは、1人で外出する機会が増えてきました。飲んでいる薬の量も減ってくるなど、オープンダイアローグを受け始めてからの変化を実感しています。

気持ちが前向きになり、最近では、自動車の教習所に通い始めたと言います。

「最近ずいぶん出られるようになってきたんで、やっぱりいろんなところ行ってみたいなっていう気持ちになりますね」(Kさん)

しかし、すべてが順調なわけではありません。

「その教習官の人に手をパンって払われて、言い方も結構きついかなって思うようなこともあったんですけど」(Kさん)

こうした日常で感じる不安も、逐一オープンダイアローグの場で相談していきます。

森川さん「その教習所に、また行きたい?」

Kさん「行きたいんですけど教習所の中って人も多いんですよね。それプラス教習官が大丈夫かなって思ったりもするんで」

森川さん「私は先月免許を取ったんですけど、教官は苦労しまして」

Kさん「あー、なるほど」

森川さん「教官もいろんな種類がいるから、怖い人もいるけど怖かったら途中で抜けて、いい人と出会えるんだってわくわくしながら行ってみるのも」

医師は、従来の医療ではタブー視されがちだった個人的な体験も話し、一緒に考えていきます。オープンダイアローグの対話を通し、Kさんはどう感じているのでしょうか。

「一方通行じゃないというのも、もちろんありますし、表面だけじゃない、ちゃんと話を聞いてくれる質感を感じます。それを繰り返すことによって、どんどん解決に向かっていくっていうか」(Kさん)

森川さんは、「人間対人間」という関係で行う対話の“普通さ”に可能性を感じています。

「話を聞くってこと自体は同じだとしても、病気に関わる話を聞くのか、本人の話したい話、苦しさとかを聞くのかって、病人を診てるのか病気を持っている一人の人間を見てるのかで違う感じがするんですね。専門家があまりにも強くなりすぎて決めつけられたりする中で、話せなくなる人たちがいっぱいるんじゃないかなって。対等な立場で輪になって“普通に”話せるようになれば、その言葉を話せなくなった、話しちゃいけなくなった人たちが自分の苦しさを話せるようになっていくんじゃないかなって。そうなると楽になっていくっていうか」(森川さん)

【人と人との対話がもたらす効果】

森川さんとKさんたちの対話について、斎藤さんはどのような感想を持ったのでしょうか。

「治療チームの側が、すごく笑顔が多くて感情を出している。これ、当たり前に見えるんですけど、従来の治療で考えるとわりと珍しいことなんです。治療者は中立性を保つ必要があって、その中には感情を出さないとか、あと、プライベートなことはあまり話さないとか、そういうルールが従来あったんですけど、全然そういうことを気にせずに、非常に自然にしゃべっているというのが印象的でしたね」(斎藤さん)

フィンランドでは、オープンダイアローグを導入した地域で入院期間の短縮や再発率の低下が報告されています。Kさんの事例についても、自動車の教習所にまで通うようになったという進展がありました。このような効果があるのはなぜなのでしょうか。

「持論としましては、ああいう変化はなかなか薬では起こせないんです。薬は、その場の不安感を緩和するのに役立ちますが、飲んだからといって何かしたいという気持ちが芽生えてくるものでもありません。患者さんの多くは対話がない状態で自問自答したりとか、あるいは堂々巡りに陥ったりしていることがあって、これはモノローグと言うんですけれども、モノローグの状態というのは、放っておきますとどんどん妄想的になり、こじれていきやすい過程なんです。だから、ただそれをダイアローグに開くというだけでもかなり症状は軽減できるというところがあると思います」(斎藤さん)

そして、「人」対「人」という関係で対話することが、大きな効果を生んでいると言います。

「私はよく、ある精神科医の言葉を引用して、『人薬(ひとぐすり)』という言い方をしますが、人間がそこにいるということの効果が非常に大きいと思います。薬とかそういう要素的なものじゃなくて、丸ごとの人間がそこに複数いて、その存在から受ける賦活効果というか、動機づけというか、それがすごく効いてるなという感じがあって、オープンダイアローグというフォーマットがすごく有効に役立っているというふうに感じています」(斎藤さん)

日本の精神医療において、少しずつ広がりを見せているオープンダイアローグ。その可能性に、大きな期待が寄せられています。