題詠100☆2022 投稿100首
2011年からの毎年2月のお楽しみ「題詠100」!(旧「題詠マラソン」「題詠blog」)
今年もTwitter上でお題に参加させていただくこととなりました。五十嵐さん、中村さん、いつもありがとうございます。
12回目の参加となる今年も、11月中の完走は叶わず、結局クリスマスイブに完走となりました。
以下、今年の題詠100首です。(番号:お題/短歌)
2022-001:来/遠くない日をこわがって近ごろは眠らないまま朝ばかり来る
2022-002:扱/扱いに悩むゆうぐれ誰だっていつかは世界から消えるけど
2022-003:巡/前世とか巡り合わせのせいにするこんな今世なわけがないから
2022-004:積/塵のようにかすかな日々を積み重ね壊れるまではしあわせでいる
2022-005:時期/不安しかない時期すこし楽になる時期さよならを抱きしめる時期
2022-006:瞳/九割を別人にする副作用やさしい瞳だけが残って
2022-007:数/残された未来を数えることすらも嫌だいまだけふたりを生きる
2022-008:ひたすら/ひたすらに祈りたいことなんてなかっ たのに しあわせだったのに のに
2022-009:炊/炊飯器だけが高らかに楽しげにうたう春には遠いキッチン
2022-010:景色/唐突にいつもの景色が薄くなるふたりが当たり前じゃなくなって
2022-011:他/人生の半分以上を共にしたけれど結局他人だけれど
2022-012:軒/軒先に今年もやってくるのだろう つばめ ふたりでいられていいね
2022-013:いっそ/もういっそ嫌いになれたら楽なのか楽じゃないのかおしえてよ猫
2022-014:近/しあわせな匂いで炊ける近江米みずかがみってきれいななまえ
2022-015:贈/できなくなる分を先払いするようにくれるちいさな贈り物たち
2022-016:若者/若者と言われる日々は生きられてよかったなんて笑って言うか
2022-017:代/代わりなどいない年月 魂をぜんぶ愛したわけじゃないけど
2022-018:足/泣くための理由がほしい両足の掻きむしり傷にしみる軟膏
2022-019:諾/事後承諾みたいに軽くこびりつく憂鬱に購うペンふたつ
2022-020:段階/段階を経て悪性になってゆく 人も腫瘍もだいたいそんな
2022-021:居/温さよりそばに居たさが勝つらしい暖房のない足元に猫
2022-022:挑/何度でも果敢に挑みにくる猫をまた何度でも腹から下ろす
2022-023:ロマン/イケ猫が見つめてくるからロマンスが始まらないよう視線を逸らす
2022-024:彫/誰ひとりわたしのいまを知らなくて微かに笑う彫刻になる
2022-025:乳/言えないでいること乳房のうちがわにかかえて夜をまたひとつ越す
2022-026:紹介/どこかしら言い訳めいた自己紹介ぽつりと終えて苦くなる口
2022-027:託/託されてしまうのだろうこの先を越えないひとの穏やかな顔
2022-028:中央/内側の中央深くに住むきみを失くすだなんて思わなかった
2022-029:秘/どうしようもない秘めごとがひとつあるもう春なんてこない窓辺に
2022-030:以/いつだってわたし以上になりたくて背伸びをしたり裏返ったり
2022-031:あたふた/あたふたと言葉をさがす突然にこの世界からこぼれ落ちそうで
2022-032:偏/誰だって偏りはあるこの星は丸くてすこし傾いていて
2022-033:粗/巻き戻せたらいいのにね粗悪品みたいなわたしを選ぶ前まで
2022-034:惹/ひたひたに惹かれていると気づかずに青いためいきばかり零した
2022-035:日常/日常がほしかっただけ「しあわせにくらしました」で終えるみたいな
2022-036:醜/醜さを認められない醜さがきらい目隠しして老いてゆく
2022-037:述/供述によると「ストレスのせい」らしいゴミ箱に溢れた菓子袋
2022-038:襲/足りなさにふいに襲われまたひとつ使わないロルバーンを増やす
2022-039:グループ/きみどりのカーネーションはうなだれてグループLINEの通知をはずす
2022-040:探/遠い日にたしかに抱いていた熱のその手がかりを探す横顔
2022-041:江/かなしみと不安の混ざる春の雨ふるわたしにも近江富士にも
2022-042:懸/懸命にことばを伝えようとする君を失くすとまだ思えない
2022-043:小説/信じられないことばかり襲いくる朝 小説のように降る雨
2022-044:把/息をしていることだけを把握するために寝ている君にかざす手
2022-045:辿/午前四時 仕事を終えて辿りつくとは限らない未来を思う
2022-046:丹/丹念にいちごを洗う 先行きの見えない日々が晴れますように
2022-047:矢印/眠れない夜はすべての矢印が内側深くへ向かって痛む
2022-048:陶/手ざわりのやさしい陶器を洗いつつ心も丸く整えてゆく
2022-049:綴/三十一枚綴りの日めくり穏やかに一に戻してはじめる四月
2022-050:棒/棒切れのような心はぐらぐらと倒れてしまうほうが容易い
2022-051:かもめ/げんじつを塗り潰したくてGoogleに訊くうみねことかもめのちがい
2022-052:茂/暗色の不安は茂るとりあえず明日がふつうに過ぎますように
2022-053:映/これからはもっと映画に来ようって一年前の夜にも言った
2022-054:雰囲気/アルパカかラクダかラマの雰囲気でうとうとと聞くあなたの持論
2022-055:閑/閑古鳥 だれも寄り付かなくなったわたしに住んで鳴いてくれてる
2022-056:亡/げんじつを5センチ浮いて泳いでるわたしをたまに亡くしたくなる
2022-057:憧/憧れは憧れのまま目を閉じるうっかり届いてしまわないよう
2022-058:毒/摂取したアルコール分と同じだけ毒を吐き出す今日は3%
2022-059:出身/出身は大阪やけに遠のいて異世界めいて見える大阪
2022-060:濡/躊躇いもなくずぶ濡れの心ごとわたしを引き受けてしまうひと
2022-061:継/ベランダで洗濯物を干しながら生き抜くための息継ぎをする
2022-062:シンデレラ/シンデレラにはほど遠くパンプスで痛んだ足を引き摺り歩く
2022-063:伸/伸びをする姿が見えた はずはなく 思い出をくりかえし打ち消す
2022-064:罵/罵倒してほしい自分のさみしさのせいであふれてくる涙なら
2022-065:枚/三枚のタオルが揺れる窓の外どんな日々にも日常はあって
2022-066:平凡/少しずつ泣かなくなろう平坦で平凡な毎日に戻ろう
2022-067:密/叶わない約束があるただひとつきりの秘密として抱いてゆく
2022-068:帝/我が猫の帝国だったこの部屋にいまは皇帝だけが足りない
2022-069:大事/近すぎて見えなくなったせいなのか大事なものから失くしてしまう
2022-070:儲/また届く儲け話をブロックしいつのまにか冬だったこの国
2022-071:トルコ/SAのトルコアイスは買ったことなくて知らないことばかりある
2022-072:遣/遺されたわたしがこんなに泣くとこをきみには見せずに済んでよかった
2022-073:歪/投げられた歪な好意は足元に落ちてごめんね打ち返せない
2022-074:荷物/息をすることもくるしい馴染めないままに荷物をひらいてとじて
2022-075:償/償いとして出す今日の夕食をきみは無言で平らげてゆく
2022-076:睨/一通り睨みまわしてから選ぶたったひとつの今日のドーナツ
2022-077:与/与えられたものだけで生きていけなくてふいにひとりで旅などもする
2022-078:青春/その声を聴けばくすぶる心臓の隅にまだ青春の残骸
2022-079:尋/何もかも尋ねてしまいそうになる何ひとつ隠さないひとといて
2022-080:疎/おなじ空の下できらきら生きている わけもなく疎遠になったひと
2022-081:比喩/見せたくて見られたくない感情を木として隠す比喩の森林
2022-082:涼/できるだけ涼しげな顔を装って病のことをあなたに話す
2022-083:ドレス/電飾の青いドレスで着飾った誰ひとりいない夜の公園
2022-084:眺/ぼんやりと眺める文字の急流の濃く淡く生きるひとびとはいて
2022-085:浴/浴槽を洗えば冬は訪れて今年も壊れている給湯器
2022-086:鮮明/鮮明な記憶はにじみ雲となる数ヶ月前あえたあなたも
2022-087:堕/これもまた堕落でしょうか休日の午後四時に菓子パンの朝食
2022-088:耽/創作に耽る真夜中わたしだけのわたしを照らす豆球の月
2022-089:赴/約束ように赴く北端の湖(うみ)に落ちゆく夕陽を撮りに
2022-090:しぶき/予期せずにしぶきは立ってごめんまだ君のニュースを喜べなくて
2022-091:秩/別れにも秩序はあって易々ときみのメールがごちゃまぜにする
2022-092:冷/漠然と悪い予感が駆け巡り毛布のなかで冷えゆく手足
2022-093:無駄/夜更けごろ無駄に沸き立つ暗雲を閉じ込めるためぎゅっと瞑る目
2022-094:誓/クリスマスツリーを見てる白々と誓いを薄い雪で覆って
2022-095:凄/光より凄い速度でとくべつになってしまったきみに吐く息
2022-096:飯/白飯とお味噌汁だけあればいいふたりでいるには足りない日々に
2022-097:特別/特別なことがなんにもない今日にきみから届くおやすみは星
2022-098:酔/今夜だけ酔うことを許してあげるわたしのためにチーズを選ぶ
2022-099:白/一面の白い世界を点々と汚してしまうあなたを追えば
2022-100:翌/容赦なく翌日はきて夢だった記憶を夢に閉じ込めてゆく
以上100首、2月22日スタート、月1日ずつくらいのスローテンポで、結局12月24日にやっとゴール!
今年の裏テーマは「虚構や創作はなし/実際の自分で」という設定でした。これが難しかった……。
毎年のお楽しみ「題詠100」、今年も参加できてとても嬉しかったです。ありがとうございました!
★以下、これまでの裏テーマ一覧です。(備忘録)
- 2011 恋歌
- 2012 恋歌
- 2013 学生・学校
- 2014 大人短歌
- 2015 痛
- 2016 色
- 2017 キャラクターを立てる(女性/30代後半/会社員)
- 2018 水・液体
- 2019 五感
- 2020 食
- 2021 切なさ
- 2022 虚構創作なし