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わかば通信

男子厨房に入ろう! をキャッチフレーズに 「くぬぎ男の料理教室」

2018.04.09 07:14

   このところ、料理教室に通う男性がふえています。しかも団塊の世代くらいの定年退職後の男性が多いと言われます。退職後の空き時間を利用した趣味の一つとして、おいしいものを自ら作って食べたい、食事を妻に頼らなくてすむようになど、きっかけはさまざま。

   ところで若葉台(横浜市旭区)には、なんと10年前から、「男子厨房に入ろう」をキャッチフレーズに活動している「くぬぎ男の料理教室」があります。 町内会に自発的にできたグループで、代表の飯田悦生さん、副代表の千葉清裕さんを中心に、約12人で月1回講師を招き、料理教室を開いています。  

   3月24日にも開催と聞いて、早速、若葉台地区センターの調理室にお邪魔してきました。 指導はベテランの料理家・池智子さん。

 教室に入ると、エプロンを着け、バンダナやチーフを頭に巻いた年齢70~80歳くらいの男性たちがスタンバイ。野菜を洗ったり、レシピを見たり、早くも下準備に余念がない。 さすが10年選手。皆さん、そんな姿が板についています。

《当日の献立》

・鶏肉が入った具たくさんのお寿司

・鯖の包み焼き

・春菊の白和え

 野菜たっぷりの、春らしいヘルシーなメニューです。

 さすが10年の実績があるだけに、皆さん、真剣な顔で野菜を切ったり、フライパンを火にかけるなど、黙々と作業をこなしていきます。

 「ささがきは、包丁をこう使うといいですよ」 「ニンジンは皮をむいて、2㌢の千切りにしてくださいね!」 

 ときどき池先生のアドバイスが入る。男性たちはうなずき、緊張した手つきで鍋を火にかけ、火加減を調整。ルーチン仕事のように着実に作業を進めていきます。

 そして1時間半後には見事に料理が完成していました。

 炒り卵のたっぷり乗った具沢山のかしわ寿司。サバのホイル焼きはアルミを開くと、ふっくらとしていかにもおいしそうに仕上がっています。 皆さん、大満足のようす。

  「これからこの料理を持参し、みんなでお花見をするんですよ!」

 その前に少し時間をいただき、お話をうかがいました。ちなみに平均年齢は75歳、うちその中の2人は80歳以上です。

 

 ――10年前、なぜ皆さんで、料理を習うことにしたんですか?

 「前から、こういう料理を作りたかったんです」

 ――料理が好きということですか? ちなみに、現役のときの仕事とどちらがおもしろいですか。

 「サラリーマンの時より、このほうが何倍も楽しいですね(笑)」

 ――皆さん、家でも料理の腕をふるってるんですか?

「あまり、家では作らないですね」

 ――それは、どうして?

 「やる人が、いるからね」

 ――そうですか。意外ですね。

 「でも、『手伝おうか』とは言いやすくなった。それに、レトルトを買って食べるのでも、アレンジができる(笑)」

 ――せっかく料理の腕があるのに、もったいない。

 「でも、必要になったら作りますよ。いざとなったら作れるんだから」

 

 一人暮らしになって習った料理が役立っている人も。積み上げてきたレシピが何よりありがたい。健康な生活が送れるのは、毎日の食事作りのお陰だと思っている。

 「いざとなったら、作れる」。これ、本当に大事ですね。 

 料理が作れるというのは、自立への第一歩かもしれません。 たとえ妻が病気で寝込んでも、かわりに食事くらい作れる。そうでないと自立した大人とは言えないでしょう。仕事もできるけれど、料理だってそこそこ作れる。いつだって、妻と役割を交代できる。これは一種の保険でもあり、生きることへの自信にもつながっているようです。

 「男性の料理による地域デビューを応援したい」

 と講師の池さんは話します。

 「自分で作って食べられる」

 「妻や家族に頼らなくても生活できる」

 この自信が、退職後、地域に目を向けるきっかけともなるようで、「くぬぎ男の料理教室」の皆さんは、園芸ボランティアを行うなど地域でも活発に活動しています。男性にとって、今や料理ができる、というのは、大事なスペックの一つになりつつあるのかもしれません。

 きっと皆さん、趣味であれ、仕事であれ、真剣に取り組まなければ気のすまない、日本の高度経済成長を支えてきた、まじめで心やさしい男性たちなのですね。

 

 その後、当日のお料理を持参し、皆さんで楽しくお花見をされたとのこと。きっとこれまでで最高のお花見弁当だったことでしょう。