篠笛
おらが村に悪人なし、とばかりに、開け放たれた玄関はいつものこと。靴棚に一筆記した名刺を置かんとするに一句。家奥に篠笛を聞く師走かな。正月向けの稽古か、普段は剽軽なOさんも裏に怠らぬ努力。いい音色だった。
さて、同伴せし知人より聞く感想や当日の「第九」ならぬそちら。ネット中継に見る意中の市議の質疑に憤懣やるかたなき様子。いや、確かにその映像を見ていて気にならなかったと言えばウソになり。市議の実名を公表せい、とは拙速。当人が憤るは内容にあらず。
そう、国会中継なんぞもあの枠内に居ればそれだけで仕事の証と話題に上がり。おらが代議士なんぞのその恩恵を享受しとる一人なれど、あの部屋に空席が目立たば世の反応やいかに。時折、全体の様子が映し出されていたはずも画面が切り替わらぬは操作側の負い目か。そう、市議会の話。
ぽつり残されし局長。左右ばかり背後まで不在のまま答弁読み上げるにもはや議会の体を成しておらぬ。途中、繰り返される入退場。答弁の機会なくば舞台裏に、と。最終楽章を前に入場する第九の合唱団じゃあるまいに。
控室等の別室にて聞いとることを以て「出席」の扱いにする。三密などと騒がれていた頃の負の遺産なれど、慣れとはかくも恐ろしきものにて未だその名目の下に継続した措置が取られ続け。何をバカな、正常に戻すべし、と知れど巷のマスクに同じ、抵抗勢力を押し切らねばならぬ。
定数、報酬に同じ、我こそが変革者などと善人ぶっても好んで身を切る必要など。私なんぞも外にいて机上に流れるやりとりに耳を立てれども来客あらばそこにいて無視は出来ず。これが議場となるとそうはいかぬ。軽々しく席を立つなんぞは。
役人側とて突然の指名があるやもしれぬ、という緊張感こそが耳を立てさせる原動力。好むと好まざると居合わせるあの境遇にあって市議の質問にその資質や性格を見極め、隣りの局長の答弁に文章力を磨く。
いつぞやの不祥事とて「結果は覆らぬ」など平然と言ってのける背景にはそのへんの経験の不足が大いに影響しておりはせぬか。いや、それにもまして他局といえど全市的な課題としての認識を共有できねば局長として失格。遠のく両者の距離。
そう、肝心な私の質問。新旧の指導法を巡る対立、数多の試練を乗り越えて掴みし全国大会の切符。市の看板を背負っていく以上は何かしらの助成あって然るべし。部活動とあらば旅費規定を定めた要綱に支出が可能なれど、合唱団は部活動にあらず、とか。
おい、バカ言うな。ちゃんと当該校の名を冠し、そこの音楽教師が指導者である以上は部活動と変わらぬ。そこが役人の役人たる所以なのだけれども杓子定規の解釈に弾力的な運用は認めぬ、との方針に混乱する現場。安からぬ旅費に中には断念せざるを得ぬ児童生徒とて。欠員ばかりか、んな気分のままに出場すれば結果や目に見えて。
どこぞの選考じゃあるまいに、世に覆らぬ結果など、と鼻息荒く乗り込まば、「しばし猶予を」と相手。見事、金賞を獲得して凱旋を果たせし合唱団。以後、同様のことがなきよう要綱の改正を、と。
(令和4年12月25日/2754回)