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ストーン・フルーツ(核果)の香りの正体とは?~ヴィオニエ、シャルドネ、ボトリティス化したセミヨンの分析~

2018.04.10 13:26

2018年オーストラリアのアデレード・ヒルズの南オーストラリア大学からの研究発表。

ワインの香りを表現する“ストーン・フルーツ”は多くのワインメーカー、ソムリエによって、特にシャルドネ、ヴィオニエ、ボトリティス化したセミヨン(以下セミヨン)の官能表現として使用されている。アプリコット、黄桃、白桃、ネクタリン様の香りとして用いられることが多い。消費者に行った調査ではアプリコットなどストーン・フルーツの香りのするワインを好むことが報告されている。このような香りを更に強くすることができれば、ワイン生産者にとって有益である。新鮮なストーン・フルーツ香は、ラクトン類※2〔n-アルキルγ-ラクトン(オクタ-、デカ-、ドデカ-)およびδ-デカラクトン〕が芳香化合物に影響すると考えられている。

実験の対象となるワインは、ワインの説明にストーン・フルーツの記述がある65のワインを選定し、テイスティングによって特にストーン・フルーツ香が強い10のワインを選定し、パネリストが評価したアロマと化合物のマッチングを行なった。またガスクロマトグラフィーと同時に質量分析を行うことで、アロマに起因する化合物でストーン・フルーツに関連する化合物の同定が行われた。

結果として他の先行研究とは異なり、アプリコットおよびモモの重要な芳香化合物であるラクトン類は、シャルドネ、ヴィオニエ、セミヨンのストーン・フルーツの主要な寄与因子ではなかった。しかし、γ‐ノナラクトン※3はセミヨンのストーン・フルーツ香に関連があった。ヴィオニエにおいては、リナロール、α-テルピネオールおよびゲラニオールといった”花の香り”と表現されるテルペン類(過去投稿参照)がストーン・フルーツの香りに起因していることが示唆された。またヴィオニエの複数のクローンから生成されるテルペン類の量は大きく異なることが示された。

ストーン・フルーツと感じさせる香りは単一ではないため、複数の化合物を混合することによる相乗効果、マスキング効果を含めた包括的な官能研究が必要である。

※1 ストーン・フルーツは日本語では核果と訳され、意味は“桃や梅のように、中心に硬い核(硬化した内果皮)がある果実”と訳されている(英辞郎 on the web)。

※2 ラクトン類はエステル基を持つ環状構造の化合物のこと。桃、ココナッツ、ミルクなどの香りと言われており、樽からも抽出される。和牛にも多く含まれる(Wikipediaなど)。

※3 γ‐ノナラクトンは天然にはモモやアンズなどの果実、ジャスミン油などに含まれる。ココナッツのような香りを持つが、希釈するとフルーツ、フローラル、ムスクのような香りとなる。ジャスミンなどのフローラル系やオリエンタル調の調合香料、ココナッツ・バター・キャラメル・バニラ系フレーバーなどに広く用いられる(Wikipedia)。

Investigation of 'stone fruit’ aroma in Chardonnay, Viognier and botrytis Semillon wines

Siebert T.E., Barter S.R., de Barros Lopes M.A., Herderich M.J., Francis I.L.

Food Chemistry 2018 256 (286-296)

ストーンフルーツの例。プラム、チェリー、プルオット、桃、アプリコット、マンゴー、ネクタリン。リンゴも種が中心の方にあるが、ストーンフルーツではない。