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不思議な夢

2018.04.10 14:23

​​帰りの飛行機で今回の旅の出来事を振り返っていた。

一週間ほど自由に過ごせる時間が出来たので、都会を離れて自分の生まれ故郷へ帰省していた。

軽い気持ちで休暇を過ごす予定が、まさかこんなに考えさせられることになるとは思わなかった。

現在僕は33歳、大学卒業までは田舎の実家で過ごし、卒業と同時に町を出た。

やりたい事が特にあったわけでもない。

田舎が嫌いだったわけでもない。

ただ直感で、「ここは僕がいるべき場所ではない」と感じていたのだ。

上京してからは、バイトを転々として生活していた。家事や食事、働いてお金を稼ぐということを身をもって体験することで自分を育ててくれた両親に感謝の気持ちが湧いた。

 

故郷を離れて3年が経つ頃には、就職先が決まって運良く会社で昇進もしていった。

生活に不自由することもなく、会社の人間関係も良好、今のところ自分の人生になんの不満も無かった。

久しぶりの田舎は新鮮な空気を吸わせてくれた。立ち並ぶビルも、ひしめき合う建物も無く、真上の青空が果てしなく遠い存在に思えた。

小学校の時の僕は野球少年だった。

本当はサッカーをやりたかったのだが、当時僕が通う小学校にサッカー部は無かった。

クラスの同級生(後に親友になるのだが)

のケンジから誘われて野球部に入った。

ケンジは僕の良いライバルでもあり、唯一心を許せる親友でもあった。

ケンジはショート、僕はセカンドを守り、野球の腕前を競い合ってお互い成長していった。

中学でも一緒に野球をしたかったのだが、ケンジの親の転勤で離ればなれになってしまった。それ以降ケンジとは一回も会っていない。



僕は田舎の懐かしさにひかれて、小学校のグラウンドに来ていた。

何も変わっていない。グラウンドを整備するための道具は変わらずにバックネットに立てかけてある。

夕暮れ時まで白球を追って練習した日々。

厳しかった練習もケンジと一緒だったから乗り越えてゆけた気がする。

結果、僕とケンジの野球少年団はこの町で一番強いチームになることができた。

僕はグラウンドのピッチャーマウンドに立って昔の記憶を取り戻していた。

グラウンドを出て真っ直ぐ実家へ戻った。

両親と夕食を済ませた後、部屋で昔のアルバムを見ながらゆっくりした。

アルバムの写真は野球のものだけじゃなく、僕とケンジが映画館に行った時の写真などもあった。

初めて映画館へ行って、映画を一緒に観た相手がケンジだった。観た映画はSF物だったと記憶している。

その映画の中で僕達が影響を受けたセリフがあった。「自分のハートに従って人生を生きろ」

セリフの意味をよく理解していた訳じゃ無かったのだが、なんとなくニュアンスがカッコ良かった。

アルバムを閉じた僕は猛烈にやってきた睡魔に襲われ、布団にも入らずそのまま眠りにおちてしまった。

夢の中にケンジが出てきた。自分の部屋の中で何かを書いている。

一生懸命書いている。そういえばケンジは物語をたまに書いてると言っていたのを思い出した。

小学校の卒業文集には「大人になったら小説家になりたい」とケンジは書いてあった。僕は卒業文集に自分で何て書いたのか思い出せなかった。

夢の中のケンジは、丁寧に書いた紙をポスターが入っていたと思われる丸い筒に入れてガムテープでぐるぐる巻きにした。

ケンジはその筒を持って家を飛び出し、小学校のグラウンドに向かった。

グラウンドの片隅にブランコが二つあり、正面から左側のブランコの下をスコップで掘り出した。

・・・その夢の途中で僕は目覚めた。



夢とは知っていたものの、今の夢には何か意味があるんじゃないかと僕は感じた。

時間は午前2時を回ったばかりであった。

「グラウンドに行ってみよう」

真っ暗なグラウンドの一部だけ電灯が少し当たっていた。そこが夢に出てきたブランコの場所であった。

僕はスコップで土を掘り始めた。

15分位掘った時、スコップの先に何かが触れた。取り出した時、僕は少し怖くなった。なぜならさっき夢に出てきた丸い筒が出てきたからである。

僕は信じられない気持ちでガムテープをほどき、中から一枚の紙を取り出した。

紙にはこう書かれていた。

    シンヤへ

    明日僕は遠い場所へ引っ越す

    実はこの国を出て海外に行くんだ

    ウソついてごめん。

    親の転勤じゃないんだ

    僕は心臓の病気で海外に行かなきゃ

    手術できないんだって

    君に心配かけたくないから黙ってた。

    

    多分

    僕の夢は叶わないかもしれない

    でもシンヤは自分のハートに従って

    素敵な人生にしてね

    最高の思い出をありがとう

                                                        ケンジ

                                                                    」

僕は手紙を持ったまま動くことができなかった。

手紙を大切にポケットにしまい実家に戻った。そして、僕は夜が明けるまで当時の卒業文集を探した。

実家で過ごす時間はあっという間だった。

帰りの飛行機の中で僕は小学校時代の卒業文集を見ていた。

      僕の夢

    僕には今のところ夢がない。

    やりたいことも特にない。

    野球は好きだけど

    プロを目指すつもりはない。

    友達のケンジは夢があるみたいだ。

    ブランコに二人で乗っている時

    僕に夢の話を聞かせてくれた。

    

    そうだ。

    どうせ僕は夢が無いから

    ケンジの夢をお手伝いしよう。

    だってケンジは僕の親友だから。 

    ケンジの夢は僕が叶える。          

                                                             」

僕は飛行機の中から窓の外に目をやった。

ケンジの手術は上手くいったのだろうか?

今も生きているのだろうか?

そんなことを考えてもしょうがないということは解っていた。

僕はある事を思いつく。

もし僕が作家になって有名になったら、

この世界のどこかにいるケンジとまた再会できるかもしれない。

よし!僕は心の中で小さな決意をして、飛行機の到着時刻までもう少し眠ることにした。