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フルーツサンド

2018.04.10 14:31

たった一人との出会い。

たった一曲のメロディ。

たった一枚の写真。

たった一冊の本。

たった一言のアドバイス。

たった一回の喜びや悲しみ。

物語のスタートは小さな出来事から始まる。どんな大きな船であっても、最初は少しずつゆっくりと動き出す。

そう、あのフルーツサンドを「たった一口」食べたことからこの物語も始まったんだ・・・



街の名はレディーコーク。

さほど有名じゃないけれど、レンガ造りの家が建ち並ぶキュートな街。 

おっと、自己紹介が遅れた。

オイラはジル。人はオイラを鼠って呼ぶ。

この街には喫茶店が一つだけあって、オイラもしょっちゅう通ってる。

一昨日の出来事を話すよ。

60歳位の紳士が喫茶店に現れた。 

紳士はフルーツサンドとコーヒーを注文して鞄から本を取り出した。

熱心に本を読んでたから注文がテーブルに届いても少しの間放置してた。

オイラ余りに腹が空いてたもんだから、気づかれないようにテーブルの上のフルーツサンドを少し頂いたんだ。

紳士が読書を休憩して、フルーツサンドを食べようと手で掴もうとしたその瞬間、端っこが無くなっていたのに気付いてびっくりしてた。歯型がついていたことにも驚いてた。

紳士は喫茶店のマスターを呼ぶと、マスターは深く頭を下げて謝った。

マスターはすぐにフルーツサンドを作り直しさせるために厨房へ向かった。

厨房のスタッフは21歳の女の子。

大学に通いながらここでアルバイトをしてた。オイラもこの子の大ファンさ。

女の子はフルーツがもう無くなって作れないとマスターに伝えた。

マスターは紳士の元へ行き事情を説明すると、紳士は適当にサンドイッチを作ってくれと言った。

厨房の女の子は頭を悩ませた。

自由に作ってくれと言われると逆に難しかったみたいだ。

少ししてから女の子は閃いた。

「あれを作ろう!」



女の子が中学生の時に母親と父親の仲が悪くなり、母親が頻繁に家を空けるようになった。  

後に両親は離婚して、女の子はどちらにもつかず親戚に預けられた。

母親が家を空けていた時、料理のできなかった父親が一度だけ作ってくれたのが「しりしりサンド」だった。

冷蔵庫にあった人参を見つけた父親は、適当に人参を細く切り、フライパンで炒めながらシーチキンと醤油を入れた。

それをパンに挟みマヨネーズをかけて娘に食べさせると、意外に娘が喜んで食べていたので父親も嬉しかった。

女の子は急に思い出した「しりしりサンド」を完成させて、マスターに持っていってもらった。

そして丁度バイトスタッフの入れ替わりの時間が来たので、女の子は大学生の男の子にバトンタッチして家に帰っていった。



次の日、女の子がバイト先に到着するとマスターが女の子に封筒を渡した。

「え?マスター、給料日変わったんですか?」

「違うよ、昨日の紳士からサンドイッチあまりにも美味しかったから作ってくれた人に渡してほしいって頼まれたのさ」

女の子が封筒の中を覗くと、紙が一枚入っていた。紙にはペンで何か書かれていた。

​​「

      サンドイッチとても美味しかった。

      ありがとうございます。

      この街には観光で来てました。

      今日の夜に街を出てまた違う街

      へ行く予定です。

      マスターに聞いたのですが大学に

      通っているそうですね。

      いつも元気で明るい子とマスター

      が言ってました。

      私もあなたと同じ位の娘がいます。

      あ、そうそう、あなたのサンドイッチ

      とても美味しかったんだけど

      もっと美味しくなる方法を教えます。

      ケチャップソースよりもマヨネーズ

      にした方がいいですよ。

      

      あなたがこれからも幸せに生きて

      ゆけるよう願っています。             

      ではさようなら。                           

                                                                   」

                                                                      

その後女の子はマスターに断わってから喫茶店を飛び出し、今日最終の船が出る港へ向かって勢いよく走っていった。

                                                                          

      


​​