不登校の生徒が高校受験をする時に知っておいた方がいいこと〜二次選考や定時制・通信制・クリエイティブスクール・私立高校・専修学校について〜
先日、はじめての来塾になる保護者の方が、面談でこんなお話をされました。
「実は、学校に行けてなくて…成績もついてなくて…もう行ける高校なんてないですよね…」
お母様はだいぶ困っていそうです。こんな時のための「第二の家」ですからね。あらかたお話をお伺いし、状況が掴めたので、「選択肢はこれだけありますよ」というお話をしました。
最初の一言。早く安心をさせてあげたくて、ちょっと芝居がかった表現になってしまいました。
「お母さん、まだ選択肢は一つもなくなってなんかいませんよ」
では、早速その選択肢を挙げていきたいと思います。
公立高校へ二次選考で進学するという選択肢
「成績などを一旦考えずに選ぶとすると、公立か私立かはお考えありますか?」
私がそう訊くとお母様は「やっぱり公立ですかね」と答えました。でしたらまずは公立高校についての説明を致しましょう。
公立高校受検の仕組みはシンプルです。一発勝負です。
まず「内申」と「学力検査」と「面接」の得点で競います。上位校には「特色検査」と呼ばれる独自のテストもあります。それらで合否を判断する選考を一次選考と呼び、約9割をこの仕組みで選抜します。
もちろん一次選考では「内申」がないことが不利になります。ちなみに「内申」とは「二年生の学年末(45)」と「三年生の後期中間or二学期を2倍したもの(90)」の合計(135)のことです。
「内申」がついていない不登校生にとって重要なのは、一次選考と同時に行われる二次選考です。約1割を選抜するこの二次選考は、「学力検査」と「面接」(とあれば「特色検査」)で合否を判断します。「内申」が関係ない入試なのです。
ですから、5科目の得点をしっかり取れれば、県下トップと言われる湘南高校だって合格できる仕組みになっています。
詳しくは『内申0で受かる!?二次選考の仕組み』でも説明しています。簡単な受験制度の説明と偏差値を記したこちらの表も載せておきます。
たとえ学校に行ってなくても、この表全部が、ちゃんと選択肢に成り得ます。
「え?そうなんですか!」という驚きとともに、「でも、実力が足りているかどうかって事前にわかるものなんですか?」という質問がありました。
答えとしては、「ある程度わかります」。もちろん、一発勝負なので、確定というわけではないのですが、神奈川県の模試は非常に精度が高いことで有名です。
理由としては、公立高校入試の答案が個々人に返却されていることにあるでしょう。そういった取り組みは全国を見ても珍しいです。データが集計しやすくなっていることで、より精度の高い判定が出せる模試になっているわけですね。助かります。
私の場合は、その模試と自身の経験を活かして「実力が足りているかどうか」を判断します。読者の方で困っている方が居れば、信頼できる塾の先生や学校の先生に相談してみましょう。
使えるものは使ったほうが良いです。
クリエイティブスクールという選択肢
「クリエイティブスクールという選択肢もあります」
お母様が身を乗り出しました。「クリエイティブスクールって、聞いたことはあるんですけど、どんな学校なんですか?」
クリエイティブスクールとは、不登校生や学力不振など、小中学校時代に持っている力を十分に発揮できなかった生徒に対して、基礎学力や社会で活かせる力を身につけさせる学校のことです。
2009年に大楠高校、釜利谷高校、田奈高校の3校がクリエイティブスクールの指定を受け、2017年度には大井高校、大和東高校が新たに指定されました。
開設当初は高い倍率を誇っていたクリエイティブスクールですが、30年度は大和東高校(1.37倍)以外は定員割れという状況でした。
選考方法に関しては、調査書の「関心・意欲・態度」の評価と、面接、作文などで合否を判定される場合が多いです。
全日制であること、普通科であること、少人数制&複数担任制できめ細かい指導をしてくれることなど、メリットは豊富です。気になる方はぜひ見学に行って雰囲気を見てみましょう。
定時制や通信制という選択肢
「定時制や通信制ももちろん選択肢には入ります」
公立高校の定時制は、夜間や特別な時間(午前または午後など)に1日4時間程度学習をする形を取っています。多くの学校では、17時30分頃から21時頃まで授業を行い、そのあとに部活動などがあります。
種類としては普通科の「学年制」や「単位制」、総合学科の「単位制」、専門学科の「学年制」などがあります。一つずつ見ていきましょう。全部で21校あります。
普通科の「学年制」は、ほとんどの科目についてクラスで勉強し、1学年ずつ進級していきます。横浜翠嵐、希望ヶ丘、横須賀、追浜、茅ヶ崎、伊勢原、津久井がそれにあたります。
普通科の「単位制」は、学年の区分がなく、必要単位数を満たすと卒業ができます。横浜明朋、川崎、湘南、小田原、厚木清南、相模向陽館がそれにあたります。
総合学科は、幅広い科目が魅力です。こちらも必要単位数を満たすことで卒業ができます。磯子工業、向の岡工業、平塚商業、秦野総合、神奈川総合産業ですね。
専門学科は、未来のスペシャリストとして専門的な知識を学びます。学年制ですので、一年ごとに進級します。農業を学べる三浦初声、工業を学べる神奈川工業、小田原城北工業があります。
また、公立の通信制高校は2校です。横浜修悠館と厚木清南ですね。
通信制の高校では、自宅学習を中心に、報告課題(レポート)と面接指導(スクーリング)により学習を進めます。卒業時に与えられる資格は、全日制・定時制と同じです。
お母様も「そんなにあるんですね」と驚いていました。また、中身を説明すると持っていたイメージとは少し違っていたそう。
定時制や通信制は、公立高校や私立高校が駄目だった時の選択肢にもなります。少し頭に入れておくと安心かもしれません。
私立高校という選択肢
ここまで多くの選択肢を見てきました。しかし、選択肢はまだまだあります。
その一つが私立高校です。お母様にも「公立高校というお話でしたが…」という前提で説明をしました。
私立のデメリットといえば「コスト」が挙がるかと思いますが、神奈川県では国に先駆けて授業料無償化の試みを始めています。年収ベースにはなりますが、これはとても大きなことです。
詳しくは『私立高校無償化から伝わる神奈川県の心意気』を御覧下さい。
私立高校というくくりの中にも、全日制や通信制など、幅広い選択肢があります。公立高校に比べてもその特色やサポート体制は豊かになりますので、検討してみるのも手でしょう。
ちなみに、全私学高校展は今年は7月16日(月祝)にパシフィコ横浜で行われます。私立の学校検索はこちら。
専修学校という選択肢
話の終盤、お母様から「生蘭高等専修学校という学校を聞いたのですが…」という言葉がありました。
これはさらなる選択肢、専修学校です。
看護系や調理系など専修学校の種類は豊富ですが、3年制であれば、高卒資格(大学受験資格)が得られるところもあります。加えて、様々な資格が取得できるところが多いですね。
名前が出てきた生蘭は綾瀬にある学校で、簿記や各種検定などの資格取得にも力を入れています。30年度には新しいキャンパスに移転をしたそうです。
専修学校については神奈川県専修学校各種学校協会のHPが見やすくてわかりやすいです。会員校だけですがかなりの数の一覧もありますので、気になったら覗いてみましょう。
不登校生に伝えたいこと
ここまで、高校についての説明でしたが、ちょっと長くなってしまいました。
でも、これらの選択肢について話をしていると、だんだんとお母様の顔が明るくなり「選択肢、こんなにあるんですね」と最後には感動されていました。
私自身当たり前のこととして仕組みについて説明していましたが、確かに考えてみるとすごい数の選択肢。神奈川県、やるじゃん。
そこからはお母様も終始笑顔で、将来についての話で盛り上がりました。
ね、もしもこの画面の向こうで、「学校に行けていない」ことで苦しんでいる人が居たら、ちゃんと知ってほしい。
そのことで「選択肢がなくなる」なんてことはないことを。
だから、慌てずに、だけどしっかりと、自分の未来について、とにかくワクワクしながら考えてみましょう。あれは無理、これは駄目なんて決めつけずにさ。
あなたの可能性は、いつも、今も、無限大です。
そのことを、忘れないでね。
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もしも不登校について悩んでいるなら『かがみの孤城』という本屋大賞を獲った小説もおすすめです。