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MDR-Z7改レビュー(4)

2022.12.29 06:51

はしがき


随分前にMDR-Z7のイヤーパッドをZ7M2からZ1Rの物に変更した旨を書きましたが今回はこの詳細報告です。

今回はかなり書いていますのでご注意ください。


MDR-Z1R


簡単にZ1Rについての説明をさせて下さい

MDR-Z1Rは2016年発売のSONYヘッドホンのフラグシップモデルです。

価格は20万円弱で現行の下位機種MDR-Z7M2が7万円台ということを考えるとかなりの価格差です。

MDR-Z1R



位置付けとしてはZ7の70mm振動板の継承とSONYが新たに開発したマグネシウム振動板の実践投入機になります。

QUALIAシリーズのヘッドホンQ010-MDR1の後継機に当たります。

MDR-1


マグネシウム振動板自体はスピーカーによく用いられています。

マグネシウムは内部損失が高く振動板の素子として理想的ですが腐食しやすい上加工難度が高く実用化が難しい技術者泣かせな素材です

オーディオメーカーとして卓越した技術力を誇るSONYでも実用化に10年以上かかっているのを見るにいかに実用化が難しいかを実感します。

Z1Rの振動板構造(SONY製品ページより)

SONYの場合振動板中心部にマグネシウムを使用し周囲はMDR-Z7などで実績のあるアルミコートLCPを組み合わせています

振動板をマグネシウム単体にできたかもしれませんが音にマグネシウム特有のくせが出ますしそれをケアするためにアルミコートLCPを組み合わせているのでしょう。

将来的には更にマグネシウムドームを改良してマグネシウム単一振動板を使用したフラグシップを出すかもしれませんね。


SONYのフラグシップ機の開発は10年くらいかけていますから水面下で次世代機の開発も進んでいるでしょう。


一般向けヘッドホンではワイヤレス機が席巻していますがメーカーの目指す音作りを誇示する点でフラグシップ機を開発する利点はありますし、最新の音質設計技術を反映させたり優秀な技術者の育成にも繋がります。


MDR-Z1Rは非常に高音域の伸びが良く程よい低音が味わえる点が特徴的です。

中音域はSONYらしい肉付きの良さがありボーカルは非常に生々しさがあります。

70mmという大型の振動板から繰り出される音は非常に立体感があります。

密閉型にありがちな閉塞感はなくオールジャンルに使える汎用性の高い機種です。

密閉型の極みを目指した機種と断言できます。




そんなフラグシップのZ1Rですがイヤーパッドにも非常に拘っておりシープスキンを利用した特別仕様になっています。



Z1Rイヤーパッド


ヘッドホンにおいてイヤーパッドの存在は音質において重要な意味を持ち耳が密閉されていないと低音が逃げスカスカな音になります。

音質設計上、最も重要な点であると言っても過言ではありません。

★通常フラグシップモデルは開発予算が潤沢に取られていますから素材の選定や実際の製品化において慎重に検討されるのが普通です。

こうした面から音質向上を期待してZ1Rのイヤーパッドを選定しました。

もしお使いのヘッドホンの音質が好みに合わなくなった場合はサードパーティが出すイヤーパッドに換装したりイヤーパッドの仕様が同じな他メーカーのものに換装するのも一つの手です。
換装することで帯域バランスが改善されるのも十分考えられます。
★特にメーカー内で上に上位機種があるようなモデルでは開発予算の都合上その機種に最適なイヤーパッドが搭載されているとは限りません             イヤーパッドの換装で機種をカスタマイズするのも一興だと思います。







換装

MDR-Z1Rの純正イヤーパッドは某eイヤにて販売されていましたので購入しました。

Z1Rイヤーパッド


Z1RのイヤーパッドはZ1Rのハウジングのサイズの都合上Z7シリーズよりも大型になります。

そのため装着にはかなり手間取りましたがなんとか装着が可能でした。

ネジ止めした方がイヤーパッドとハウジング間の隙間がなくなり音質が良くなります。

低音がよく出るようになることで実感できます。

MDR-Z7オリジナル

Z1Rイヤーパッドに換装後のMDR-Z7


写真をご覧の通りイヤーパッドの方がハウジングよりも大きくなります。

イヤーパッド大きいことで装着時の安定感が増し密閉感も向上します。

素材としても本革になり高級感が増すのも嬉しい誤算です。

高級ヘッドホンでも合皮のものが少なくないですが本革ですと肌に触れた時の体温由来の温かみ、物としての美しさを感じます。

古来から人類が本革を愛用してきた理由の一端を感じます。


音質


もう一台予備としてストックしてあるMDR-Z7と比較して上での感想を書こうと思います。

左が予備機 右が普段使用機


簡単にオリジナルの音質を書くと

主に中低音が目立つ

高音の伸びが少なく少し低音がボワつく

全体的にまろやかな印象な美音系

という音質傾向です。

スローバラードやテンポが遅い曲なら最適ですがロックやアニソン系といった低音が強い楽曲には不向きな印象でした。


換装後についてまず端的にまとめると

音場が拡大

中低音の反響がなくなり

トランジェントが改善

高音域が出るようになり

帯域バランスが改善

といった印象になります。



まずイヤーパッドが巨大になり内部空間が増したことが音場の拡大につながったと思います。

MDR-Z7M2のイヤーパッド換装時よりも音場は拡大していると思います。


中低音の反響についてですがオリジナルはイヤーパッドの内部空間が小さくドライバーの音がイヤーパッドに反響することに起因します。

内部空間の拡大で直接耳にドライバーから音が届くようになりトランジェントも改善しました。

このことからかき消されていた超高音域も十分に聴こえるようになります。


おかげでテンポの速いロックでももたつくことなく堪能できます。


★帯域バランスの確認についてはドラムセットの音を聴くとわかりやすいです。

ライブ音源ですと実際に映像を見ながら確認ができますのでより確認がしやすいと思います。


Z7の更なる改善


Z7にZ1Rのイヤーパッドを装着したことで帯域バランスの改善や音場の拡大を図ることはできましたがZ7とZ1Rの差異としては

Z7は一般的なハウジングでドライバーを完全に密閉していますが

Z1Rでは

通気性に優れたエンクロージャーによる共振や反響の徹底的な排除です。

通気性に優れたZ1Rのエンクロージャー


共振・反響は密閉型のヘッドホンでは避けては通れない問題です

通常の密閉ヘッドホンではドライバーを完全にハウジングで遮断することでドライバーから出た音がハウジングで反射することになりハウジング内で反響します。

また音量を上げると、ドライバーの振動が増しますから共振が大きくなりダイナミックレンジが悪化します。


このことからスピーカーでは共振対策が最重要視されています。


Z7は一般の密閉型ヘッドホンですので共振を避けることはできません。

また、大型な70mmもドライバーを搭載している都合上共振も他のヘッドホンより大きくなります。

SONYは共振対策としてZ7のドライバーにフェルトを貼っていましたが、通常使用時でもハウジングが振動しており共振の対策は不十分といった印象を持ちました。

MDR-Z7ドライバー内部

ドライバーにフェルトが貼られている


そこで防振シートをハウジングに貼ることで共振を抑えることを思いつき試してみました。

具体的には細かくカットされたイヤホン用の防振シートを購入し段階的にMDR-Z7に貼ってみました。

貼った結果として簡単に述べると

ダイナミックレンジの向上

ハウジングの振動の減少

が確認できます。

ハウジングの振動が少なくなったことで共振が減少したことでダイナミックレンジが向上したように思います。


このように密閉型ヘッドホンの場合ネックになる共振に対策を施すことは音質改善に直結します。

ダイナミックレンジが根本的に改善しますので防振シートを導入するのも候補の一つになり得るかもしれません。


防振シートをヘッドホンに貼る場合にはハウジングの措置が無難です

ハウジング内部に貼るとハウジング内部体積の変化から帯域バランスが崩れる可能性が有ります




終わりに


MDR-Z7はSONYのフラグシップ機としてかなりの完成度を誇りますが中低音の反響や共振など問題点も見受けられました。

SONYもMDR-Z1Rでこれらの問題点をハウジングの構造の見直しやイヤーパッドの新規開発で改善しています。


MDR-Z7は低音が特徴的で力強いバスドラムを堪能でき個人的にかなり気に入っておりこれらの問題点を解消できないか試行錯誤していました。

具体的に上記の改良を施したことで音質向上が図れMDR-Z1Rに近づけたと思います。


お持ちのヘッドホンでご不満がありましたら新しいヘッドホン導入の前に既存の機種に

イヤーパッドの換装や防振シートの導入をすることで改善できる場合があります。


ヘッドホンを自分好みにカスタムするのも趣味としての一つの楽しみだと思います。

ご覧いただきありがとうございました。