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Botanical Muse

美しさのまとい方 エストロゲンとがん

2018.04.23 08:00

【女性の肥満はエストロゲンが増え、がんのリスクが高まる】

アメリカでは全国民の30%以上が肥満であり、肥満は“現代病”ともいえる。肥満女性では卵巣機能が乱れ、規則的な排卵は起こりにくくなる。その結果、正常な月経周期でみられるような、“めいはり”のあるエストロゲンの変動は消失する。

なぜ、肥満では卵巣機能が障害されるのだろうか。

正常な女性でも肥満組織でもわずかではあるが、エストロゲンが作られる。しかし、肥満女性では豊富な脂肪組織から相当量のエストロゲンが産生され、そのため、正常月経周期にみられる卵巣から出るエストロゲンの特徴的な血中濃度の変動がかく乱される。一方、性中枢(視床下部ー下垂体系)は、血中のエストロゲン濃度に応じて精緻に卵巣機能を調節し、その結果、卵巣は正常に機能することになる。もし、月経周期によりエストロゲン濃度の変動が乱れると、性中枢は卵巣に正しいシグナルを送れなくなり、卵巣機能は障害される。その結果、子宮体がんのリスクが高まる。また肥満女性では、インスリンの作用が低下しており、そのため、身体は懸命にインスリンを合成し、血中のインスリン値が高値となる。インスリン値の上昇も卵巣機能の失調の原因のひとつとなる。インスリンは子宮内膜の増値を促す作用がある。このため、肥満女性ではエストロゲンの分泌異常に加え、インスリンの過剰分泌も子宮体がんのリスクをさらに高めている。なお、肥満はなくとも2型糖尿病でも卵巣機能は乱される。2型糖尿病では、インスリンはある程度分泌されており、肥満女性と似たようなホルモン環境となる。そのため、子宮体がんになりやすくなる。

肥満女性では、閉経しても卵巣由来の男性ホルモンを基にして脂肪組織でエストロゲンが作られるため、子宮体がんや乳がんのリスクが高まる。一方、肥満男性では、若干大腸がんのリスクが高まるという報告があるが、女性ほど明らかではない。このように、肥満による発がんリスクは男女で異なる。

肥満にはしばしば高コレステロール血症を伴う。コレステロールも乳がんのリスクを高める可能性があるという研究結果がある。この研究は、コレステロールの分解物がエストロゲン受容体と結合してエストロゲンのように振る舞い、乳がんリスクを高めているという仮説を提出している。


【運動はエストロゲンを下げ、乳がんが減る】

運動は、乳がんの予防につながることが知られている。いくつかの報告を総合すると、運動をほとんどしない女性と比べ、運動をする女性では乳がんの発生は約25%減少する。この場合の運動とは、日々の家事、庭仕事程度でも効果がある。運動は、乳がんと同様に、エストロゲンが関係する子宮体がんの予防効果がある。

月経のある女性では、激しい運動をすると周期が乱れたり月経が消失したりする。この場合にエストロゲン値が低下するのは理解できる。ところが、乳がんのリスクが高い女性は、月経が乱れない程度の運動でも乳がんの予防効果がある。あまり過度な運動でなくても、エストロゲンや黄体ホルモンの値が約20%低下する。このことが乳がんのリスクを低下させているのだろう。なお、運動とエストロゲンに関しては、エストロゲンの代謝物が変化することで、乳がんを予防するという報告もある。

閉経後のみならず、卵巣機能が著しく低下している閉経後の女性でも、運動により一般に血中のエストロゲン値は低下し、そのことが乳がんの予防につながると考えられる。運動のほかに、カロリー摂取の制限もエストロゲン分泌を減らすが、運動とカロリー摂取制限を同時に行うと、エストロゲンはさらに低下する。運動はエストロゲン分泌への影響以外に、インスリンに対する感受性を高めることや、脂肪組織を減らすことなどを介して、乳がんの予防効果を発揮する。