第15回 感性を磨く
感性を磨く
童話を書くにあたって、日頃から感性を磨くことは大切なことです。
本を読み、音楽を聴くのもいいですが、たまにコンサートの生演奏に耳を傾けたり絵画を鑑賞してみるのも心が洗われるというものです。また、旅先で思いがけない自然の美しさに触れて、感激に涙することもあるでしょう。そんな積み重ねが感性を磨くことにつながるのだと信じています。演劇や映画に感動するのは、拍手や笑いが湧きおこり、観客と共に喜びを共有できるからです。
映画の名作は、なるべくスクリーンで観賞してください。DVDなどの映画よりも、情報量や迫力がまるで違います。
とはいえ、名作映画もなかなか上映する機会にめぐまれません。
そこで、動画の配信でもアップされているフランス映画を紹介することにします。 アルベール・ラモリスが監督した『赤い風船』はファンタジー映画の傑作で珠玉の短編です。
台詞はほとんどなく、映像と音楽だけで構成されているので、世界中の子どもや大人たちに受け入れられます。いわば、言葉の壁を超えたエンターテイメントですね。
ある朝、パスカル少年が学校に行く途中で街灯に引っ掛かった赤い風船を取ってあげます――すると、風船は命を吹き込まれたようにパスカルの後をついてくるようになります。学校では、風船が窓からパスカルをのぞいたり、パスカルを叱った先生に仕返しをします。つねにパスカルを見守るのでした。
モンマルトルの街並や石壁、石畳のパリの街に赤い風船が映えて詩情豊かな映像美となっています。
パスカルと少年たちが路地裏で追いかけっこをするシーンが格別で心が和みます。
風船は動くだけで言葉を発したりはしません。だからこそ、少年と風船のふれあいが伝わるのです。想像力で、風船の表情までも捉えることができるのです。
台詞のない映像には、音楽の力で、ここまでの演出が可能だということです。
やがて風船は、いたずらっ子たちの標的にされて最大の危機が訪れます。が、ラストの魔法のような展開にほっこりとした気持ちにさせられ救われます。
私は今でも映画のテーマ音楽が映像と共によみがえってきます。同時にそれは、子どもの頃に見た我が家の壁を上っていく風船の夢のつづきでもありました。
因みに、いわさきちひろさんが偕成社から出版した「あかいふうせん」はこの映画を絵本化したものです。
『赤い風船』一九五六年短編映画パルム・ドールアカデミー脚本賞、英国アカデミー賞特別賞、カラー、上映時間34分
浜尾
赤い風船/白い馬 デジタルニューマスター (2枚組 初回限定生産)スーベニア・ボックス
発売日: 2008/12/12
製作年: 1953/1956
収録時間: 75分
出演者: パスカル・ラモリス ヴラディミール・ポポフ サビーヌ・ラモリス フランソワ・プリエ ミシェル・プザン ルネ・マリオン アラン・エムリー ジョルジュ・セリエ ポール・ペレー ローラン・ロッシュ
監督: アルベール・ラモリス
字幕: 日本語字幕
音声: ドルビーデジタル/2chサラウンド/仏
シリーズ: ----
メーカー: 角川映画
ジャンル: オムニバス
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あかいふうせん (いわさきちひろの絵本) 単行本
発売日|1968/12/01
ラモリス|著、いわさきちひろ|イラスト、 岸田 衿子|翻訳
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