ひきこもりへの支援について(代表質問より)
以前、ご相談対応のため、あるご家庭を訪問いたしました。70代の年金暮らしと思われる父親と、30代後半になる息子との二人暮らしのご家庭でした。
ご相談をお伺いし終わったあと、そばにいた息子さんに話しかけましたが、一言も言葉が返ってきません。お父さんに事情を伺うと、小学校の頃に不登校となり、それからは、買い物を含めて一切外に出なくなったそうです。20年以上、家では、本やテレビを見て過ごしていているとのことでした。
2019年、内閣府が行った中高年のひきこもり実態調査の結果が発表され、40歳~64歳で、ひきこもり状態にある人は、全国で約61万人という報告がなされました。
筑波大学の斎藤環教授は、「一度ひきこもった状態が数年続くと次第に無気力になり、自ら抜け出すことはほぼ困難であり、平均年齢はさらに上がる」と予想しています。
さらには「8050問題が深刻化し、十分な対策を打たずに、手をこまねいていると、すぐに9060問題が訪れる。福祉財源が破綻するか、孤独死が大量に発生する」と警鐘を鳴らしています。
現在、全都道府県や政令市に「ひきこもり地域支援センター」が設置され、制度は充実してきました。しかし、それが本当に支援へとつながっているのか、気になるところです。
そこで、ひきこもりに対する認識と支援について、何点か質問しました。
本県における ひきこもり対策の現状と課題はどうか。また、市町村におけるひきこもり支援の実施状況はどうか?
県では、ひきこもりの状態にある本人や家族等を支援するための相談窓口として、「ひきこもり地域支援センター」を設置し、電話相談に応じるとともに、医療・教育・就労や 福祉など、具体的な支援ニーズに合わせて、適切な支援機関につなげています。
ひきこもり対策を推進するためには、身近
な市町村における支援体制を構築することが重要ですが、ひきこもり相談窓口を設置しているのは36市町村、また、居場所づくりやサポーター派遣などの「ひきこもり支援推進事業」を実施しているのは、5市町にとど
まっています。
市町村におけるひきこもり支援体制の構築に向け、県はどのような支援を行っているのか?
県では、ひきこもり対策を推進するため、市町村におけるひきこもり支援の取組状況を把握し、ひきこもり対策の意義に関し理解促進を図るため、市町村や支援機関の職員を対象としたひきこもり支援担当者研修を実施しています。
今年度は、11月16日に開催し、厚生労働省の担当者によるひきこもり支援施策についての説明や、先行している市町村から関係機関によるネットワークの立ち上げや支援の進め方等、具体的な取組事例の発表を行ったところです。
このほか、ひきこもりサポーター養成研修を実施するなど、人材育成にも努め、引き続き、市町村と連携しながら、ひきこもり支援体制の構築を推進してまいります。
県として、市町村が行うひきこもりの実態調査をどのように支援していくのか?
市町村が行うひきこもりの実態調査は、地域における支援内容・体制の検討や目標共有のため、支援対象者の概数やニーズ等を把握するものです。
これまでのところ、県内16市町で調査が実施されており、県では未実施の市町村に対して、先行して実施している全国の調査事例や 結果等についての情報を提供するほか、具体的な調査方法等について助言を行っています。
実態調査は、ひきこもり支援体制の構築に当たって基礎となるものであることから、引き続き、市町村が効果的な調査を実施できるよう支援してまいります。
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ひきこもりの実態調査について、県内54市町村のうち16市町が実施しているとのことでした。実施率は3割であり、まだまだ進んでいないのが現状です。
三重県では、引きこもり支援を総合的に推進していくため、県内で活動している民生委員や児童委員の方に対して、アンケート形式による実態調査を行っています。スピード感をもって、適切な支援策を検討するためにも、県独自で実態把握を行うことが必要であることから、県として実態調査をすべきと訴えました。
県として、ひきこもりの実態調査をするべきと考えるがどうか?
県としては、実際に支援を行うこととなる市町村が支援対象者の概数やニーズ等を把握して支援体制を構築することが重要であると考えています。
より多くの市町村で効果的な実態調査が実施できるよう、引き続き、実施に向けた課題を聞き取ったうえで、具体的な調査手法等について助言を行うなど、市町村を支援してまいります。
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ひきこもりの実態調査について、残念ながら、実際に支援を行う市町村が実態を把握し、支援体制を構築するべきであり、県は市町村を支援するとの答弁でありました。全市町村が、早急にひきこもりの実態を把握し、速やかに支援へとつなげられるよう、県としてしっかりと取り組んでいただくことを要望しました。
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