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SAIJYU Days

彼のこと。

2018.04.17 16:02

空を不意に仰ぎ見た時、空の高さにハッとする秋。

深深と降る雪の寒さに、体を小さくする冬。

風に髪の毛を遊ばれ、土埃で目の前が霞む春。

うだる暑さの中、活発に動き回る夏。


季節が流れるのは大人になってから随分と早く感じる。

彼が居なくなってから2度目の春。

3回前の春はまだ、居た。

不意に思い出す。

毎日、不意に彼は記憶の中に蘇る。

彼が息子にくれたDAISOの鯉のぼりを今年も玄関にそっと飾る。


最初、彼は家の外の杉の木の洞に鯉のぼりを刺して

「来年また買ってあげる!」と、笑った。


来年は来ないことを、あの日私たちは知らずに笑いあった。

穏やかな時の中で、笑いあった。


時間に追われ、笑うことも出来なくなったこともあった。

イライラしてきつく当たってしまったこともあった。

それでも、彼は「姉さん」と一回りも違う私を、そう呼んだ。

ピリつく空気を、彼は和やかにする天才だった。

細かな気配りは、ひたすら「お母さん」のように。

不安な時のすがり方はまるで弟のように。

そして、私にとって優秀なミキサーだった。

阿吽の呼吸。

私たちのことを読み、先回りした。


そんな彼は42歳で居なくなってしまった。

今も多くの思い出が、頭を支配する。

こんな時、こうだったな。

もし、今もいたらこうだったかな。

彼のお母さんと話すたび、彼の知らない面を私は一つずつ教えてもらう。

そして、彼のお母さんが知らないことを少しずつ共有する。

彼が本当は住むはずだった、あの家で。


2016.1月9日、出産後すぐ、息子を病院に見に来たいと言ったあの日。

管だらけの姿を見せて心配させたくなくて、断った。

退院した1月15日、すぐに会いに来てくれた。


彼のお姉さんから「子供が産まれるってこんな感じなんだね!凄く可愛いんだ」って珍しく興奮して言ってた事があったんだと葬儀の日聞いた。


生きていたら、きっと息子の良い相談相手になり、友達になり、信頼出来る大人になったと思う。

思春期を迎えた時、母親には相談したくない悩みも、聞いてもらえたかもしれない

そうならなかった未来が悔しい。


そして、2017年、息子の一歳の誕生日。

朝、荷物が届いた。

差出人は彼の名前だった。

中を開けると、手紙と息子へのプレゼントが入っていた。

手紙には、「充が生きていたらきっとこうしたかったはずだから」と、そして

「りゅうちゃん、たんじょうび おめでとうっ! モリモリより」と綴ってあった。

プレゼントをくれたのは、彼のお姉さん。

朝から沢山泣いた。


お食い初めにも呼んだし、事あるごとにに一緒にご飯を食べた。

必ず一歳のお誕生日も生きていたら呼んでいた。

息子の誕生日の日まっちと、そして彼の写真を持って撮った。

4人で撮ることに意味があったのだ。



私は今年32歳になった。

あと、10年で彼の年になる。

季節は思ったよりも、早く過ぎる。

大人になったら特に。