仕事で手首を痛めた症例を解説(その3)
この動画で終わりです。
左鼻を触ると左手首が痛みのない状態に戻ってきた感じと言ってます。
動画では、わかりやすく風邪の反応と言っていますが、実際は鼻あたりの軽い炎症のような感じですね。
実は来た時、鼻グスグスしてマスクしてやってきましたからね。
どうみても鼻風邪ですよね。
鼻そのものに直接鍼を刺した訳ではありませんが、治療後に鼻もグスグスしてませんでした。
手首と鼻を触ると手首の響きも更に違いました。
手首からの影響と鼻からの影響が複合してきていたということがわかります。
詳しく調べていくとこういう検査を行いながら緻密に調整していくことができます。
これぐらいのことができてはじめて身体には様々な部分と関連があるということを実感する訳です。
本で読んだ知識や教わっただけの知識では絶対にわからないことです。
つまり全身と関係があるということを実感できる訳です。
そしてそれは無数にあります。
本で読んで、こことここが関係があると書いてあっても絶対に信用してはいけません。
殆どが嘘ですからね。
嘘というより、それが適応の時にしか当てはまらないということです。
確率的にはあてはまりやすいものを本には載せているのだと思います。
それなら、現代医療のエビデンスと一緒やん!!
ってなります。
このようなテストを詳しくしていると自然に時間がたっていきますが、実際は、このようなややこしいテストをしないで治療します。
こんなテストは時間がある時しかできませんからね。
鼻を触った時と触ってない時では手首の動きが変わってます。
手首を触った時とは微妙ですが若干の違いがあるように見えますよね。
よくご覧になってください。
表面と裏側の違いですからそれがあって当たり前です。
でもどちらから刺激しても手首の動きそのものは良くなります。
これで勘違いしてしまうんですよね。
痛いところに鍼打ったら楽になるやん!!
ってね。
ある意味この例は簡単そうに見えて、それだけでは必ず痛みが残るパターンです。
意外に難しいパターンなんですよ。(^^;
つまり局所に刺激しても、全体の反応を刺激しても動きは良くなりますので、局所に刺激しても効いたという人と、全体の治療で効いたという人とに主張がわかれたりする訳です。
実際は全体も局所も両方が必要というパターンですね。
もちろん、全ての手首の痛みが必ず同じようになるとは限りませんよ。
局所を刺激した方が動きの度合が大きい場合もあります。
逆に全体の反応を治療した方が動きの度合が大きい場合もあります。
だからどちらが最適かをしっかり見極めて治療しないと駄目だということです。
この場合は、そのどちらでもない。
つまり複合パターンということです。
そして順番があるということです。
その判断ができないと崇高な理論があっても説得力が足りません。
患者さんは訳がわからなくてもそれを必ず見抜きます。
症状に対して、こことここを刺激すれば良いと書かれている本があって、それを刺激したとしても、それがハズレなら何の意味もないということです。
効果がなければ次の刺激という形になり、結局診断をする意味なんてないということです。
人はそれぞれ微妙に違います。
その微妙な差を感じとって調整していくということが何よりも重要ということです。
やっぱりケースバイケースなんですよね。
この場合、局所の手首は表面、鼻は手首の奥の反応ということで、どちらが優位かと言えば鼻ということだったということです。
水の流れで裏証、熱証という反応でした。
動画でみるとわかりますが、鍼刺激は殆どあたる程度です。
しかも一瞬です。
結構いい加減な打ち方に見えますよね。
得気を得たり気を集めたり置鍼をしたりする先生から見ると乱雑な刺激と感じるかもわかりません。
しかし、明確な診断ができれば、それで十分です。
意外にそのことをわかっていない人が多い。
刺激で良くなると思い込んでいる人が多い。
それは大きな間違いであり、鍼灸の枠組みを小さくしている証拠です。
だから刺激の量や質を変えようとする。
それは大きな見当違いです。
左膝の刺激が手首の表面と関係ありました。
ワザワザ手首に入念な刺激をする必要はありませんでした。
これも脉診を行い治療部位を決めました。
手首の橈側は、手首に刺激しても良いように思いますが、実際は、それでは後から不具合がでて、全身に影響がでると判断しました。
また手首に刺激する場合、より多くの条件を設定しないと効果がでにくいのです。
そこで左膝の内側(海論篇の海の治療)を行って調整した方が効果的だったということです。
尺骨に最初あった反応は、これらの反応が取れてからでてきました。
そしてそれも全体的な反応で頸椎3番の左前下あたりからくる反応です。
なので、左の咽を右上方向に触れると圧痛があります。
右咽は左上方向に触れても圧痛はありません。
角度や異常存在部位にも注意します。
この調整は心包経の内関(PC6)とPC7(大陵)で調整しました。
最終的には尺骨の付近に軽く刺激して終わりました。
つまり手首で刺激して良いところは圧痛が殆どなかった尺骨の外側(小指側)ということになります。
これで完全に抵抗がなくなりました。
痛みのある部分で刺激して良いのは、ここのみだったということですね。
如何だったでしょうか?
鍼灸を専門にやっておられる方やPTでも柔道整復師でも整体でも、どんな専門家でも刺激の仕方は違ってもこれぐらいの考察ができて症状が完全に緩和できる訳です。
手首を傷めたなんてごく一般的です。
しかし、その奥に隠れている反応をキチンと見つけてあげないと良くなりにくい。
また痛みがどちらに変化しやすいかも予測もできる訳です。
身体全体のことをロジックとして考察することはできます。
それだけでも十分臨床で使い物になります。
しかし、このような例(難易度は低いように見えて実は複雑)ではロジックだけでは絶対にわからないのです。
スポーツ選手なんかの場合には、なかなか良くならないと訴えるパターンです。
かなり詳しくやっておられる先生でも、このような例の場合ロジックだけでは予測できなかったと思います。
それが臨床です。
要するに重要なのは診断であり、細かい部分の調整です。
それらを把握してこそ治療を完了させることができるのです。
そのことにもっともっと多くの鍼灸師が気づいて欲しい。
そして鍼灸師の地位向上をめざしていって欲しいなと思っています。
今の技術で満足するのではなく更に上を目指していって欲しいと思います。
鍼灸治療って凄いって言わせられるようになって欲しいなって思っています。
専門家の方は是非勉強会に参加してみてください。
次回の専門家の勉強会は7月の予定です。