癒やしの五島
https://nordot.app/977031417855410176 【癒やしの五島】より
五島へ行くたびに心が癒やされる。夏は大瀬埼灯台の青い大海原、冬は久賀島のヤブツバキ原生林に咲く無数の赤い花など、四季折々の忘れ得ぬ風景がある
▲上五島生まれの母の血を引いているからだろうか。大人になり初めて上五島を訪ねた時、不思議なほど心が安らいだ。深みのある海の色が心地よく、港の岸壁に座ってずっと眺めていた
▲放送中のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」では、五島が「癒やしの島」として描かれている。心が疲れ、生きづらさを抱えた主人公や幼なじみは、主人公の祖母が暮らす五島に渡ることで心が解放され、元気になって都会の暮らしに戻ってゆく
▲ドラマの舞台が五島に移ると、風光明媚(ふうこうめいび)な自然や飾り気のない人々が登場し、画面がぱっと明るくなる。それはいわば日本の原風景。誰の心にもある「母郷(ぼきょう)」なのだろう。五島を旅する人は、母の懐に抱かれるような心地よさを感じるのかもしれない
▲昔から日本の西の最果てといわれ、平安時代の「蜻蛉(かげろう)日記」で「亡き人に会える島」とされた五島も、今日では高速船やジェットフォイルなどで手軽に行けるようになった
▲ストレスと付き合いながら生きている現代社会だ。朝ドラがきっかけとなって、たくさんの人が癒やしの島・五島の良さを実感してほしいものだ。(潤)
https://heiseibasho.com/heiseibasho-comment-kukai/ 【長崎県五島の名所「夕陽の大瀬崎灯台」と日本最西端の地】より
遣唐使船の日本最後の寄港地
空海と「辞本涯」の碑
長崎県の五島は今話題の世界遺産だけでなく、「国境の島 壱岐・対馬・五島~古代からの架け橋」というストーリーで日本遺産にも認定されています。
これらの島に残る史跡や文化財で構成される物語は、朝鮮半島や中国大陸との交流や交易によって作られた「国境の島」特有の文化が伝わり、特に五島では奈良・平安時代に大海原へ漕ぎだした遣唐使たちに想いを馳せることができます。
すなわち、五島市の「三井楽」は日本最西端にあり、遣唐使船の日本最後の寄港地として弘法大師、空海も804年に立ち寄り、命を賭して日本を去るという意味の「辞本涯」という三文字を残しています。
「本涯」とは日本の最果ての地という意味ですが、かつては福江島の三井楽は「亡き人に会える島」、「此岸と彼岸の交わる場所」と考えられていたのです。
五島に残る弘法大師、空海の足跡
また、空海は唐より帰国の際にもこの福江島の寺に立ち寄り、明星の奇光を拝して、自分が修めた密教が国家や民衆のために役立つものと、仏より示されたと歓び、寺の名前を「明星院」と命名しました。
現在、この明星院は高野山真言宗に属し、「五島88か所島へんろ」の第一番札所になっており、五島家の祈願寺でもあります。
空海の唐での偉業と密教の教え
空海は五島を出港した後、苦難の末、赤岸鎮に漂着、福州を経由して長安に赴きました。
そして長安に着いた空海は、金剛頂経、大日経という2系統の密教を統合した第一人者のインド僧の恵果に師事し、胎蔵界・金剛界・伝法など密教のすべてを教わり、灌頂(かんじょう)を受け、正式な継承者となったのです。
密教という難しい教義も空海の次の名言で私たちにもわかりやすく理解できます。
片手だけでは拍手できない
片足だけでは歩けない
右手と左手が感応して拍手になり、
右足と左足が感応して歩く
だから相手が感応するまで祈り続けなさい
修行して悟りを得ようとする人は
心の本源を悟ることが必要である
心の本源とは清らかできれいな明るい心である
周りの環境は心の状態によって変わる
心が暗いと何を見ても楽しくない
静かで落ち着いた環境にいれば、
心も自然と穏やかになる
五島での空海の軌跡を訪ねる五島88か所島遍路を巡ると、四国のお遍路とはまた異なる体験が得られます。
私はこの自然豊かな島の大瀬崎断崖にたたずみ、大瀬崎灯台のかなたに日本で最後に沈む黄金色の夕日を眺めていると、弘法大師の教えの通り、心も穏やかに、また素直な気持ちになれたような気がします。