コラージュの力
リサーチ結果であるとか、設計の思想を示すための手法には図面、パース、ダイアグラムなどがある。アメリカで一般的なものとしてもう一つ、コラージュという手法がある。コラージュというのは、写真を切り抜きつぎはぎして組み合わせるもので、図面などでは説明しきれない、その時代の様相を示す際に使われることが多い。
コラージュは日本の建築分野では一般的でないため、最初はそのやり方も目的も良くわからなかった。図面はデータや形状を示すため、ダイアグラムはその理解や分析を示すためにあるので、それらで十分ではないかとも思う。
ただ、図面やダイアグラムなどを読み込むスキルがある建築・都市学生だけんでなく、もっと多くの人にダイレクトに伝えるためには、写真のコラージュが有効だ。コラージュは短時間でお手軽にかっこ良い絵が作れてしまうので、時によっては意味もないただかっこ良いだけのコラージュが散見される。そのため、コラージュについてはそれほど良い印象を持っていなかった。しかし、クラスメイトの作品を一つ見たことによってその考えがまるっきり変わった。
表題の画像はクラスメイトのヨナ、エヴァン、オースティンが、韓国ソウルの清渓川のプロジェクト分析として作成した絵だ。1960-70年代の韓国の高度経済成長に合わせ、ソウルの中心を流れる清渓川を朴正煕主導で埋め立てて高架が作られた。その後都市環境に関する意識が高まった2000年代に、李明博主導で高架が取り壊され、川を復活させたという歴史を持つプロジェクトだ。
この絵からは、清渓川とその周辺の都市の様相の移り変わりが、断面図と写真コラージュを組み合わせることによって一瞬で目に入ってくる。高度経済成長期にどれだけ高架がもてはやされたか、朴正煕がどれだけ力強くそれを主導したかが、ビシバシと伝わってくる。グラフィックの完成度も極めて高く、ポスターとして売り出して良いんじゃないかというレベルだ。
コラージュというのは史実である写真に基づいている。ただそれをどう切り抜いて構成するか、どの画像を選ぶかは作者の一存で決まる。編集の方針によってポジティブにも、ネガティブにも見える。言ってしまえば、グラフィック版の論文のようなものかもしれない。
重要なものを抽出して編集して組み合わせて人に伝える、全ての分野に共通する重要な作業だ。このクオリティのものが作れるようになるまで、アメリカにいる間にスキルを鍛えたいと思った。