「チョコレートな人々」(映画感想)
2023年劇場鑑賞1本目は、楽しみに待ってた東海テレビ制作のドキュメンタリー作品。
何と言っても大ヒット作の「人生フルーツ」が大好き!
他の骨太な社会派の問題作も勿論好き。「死刑弁護人」や「ヤクザと憲法」とか衝撃的だった。
今回の作品は、タイトル通り、甘くて苦い…!障碍者が頑張って働いて美味しいチョコレートを作ってます、っていうだけのお話ではありません。
映画の序盤、この会社の社長さんが「大切なのは、もがくこと。いろんなことがあるけど、もがき続けること。」って言ってて、その時は、うーん…それはそうかもだけど、もがきたくてもがく訳じゃないし、もがくことが目的みたいなニュアンス、ちょっと違和感…と感じたんだけど、いやいやいやいや!この夏目社長すごい!言葉通りちゃーんともがいてる!
障碍者の人達を追ったドキュメンタリーはたくさん観て来て、その度に、切なかったり、何もしていない自分を情けなく思ったりするんですが。
この作品は社長さんを中心にした青春群像劇のような趣で、しかもみんなめちゃくちゃ魅力的、つか人間的!で、1番人間的なのが夏目社長😊
酔っぱらってフニャフニャしたり、よく分からないまま名刺渡してペコペコしたかと思うと「ペコペコすんのやめた!」と言ったり、大口の仕事失敗しそうになってマネージャーに当たり散らしたり…チャーミングです!
(キャラは全く違うんですが、この社長さんを観てて「ホームレス理事長」を思い出してしまいました。あの理事長も凄かったなあ)
東海テレビはこの夏目社長を20年近く前から取材し続けていたということで、相当強い絆があるみたいで、この方の人間臭い部分をばっちり捉えていて…おもしろー!!
他の登場人物の方々も、1人1人ドラマがあり、この会社に来るまでのことや、夏目社長のもとを去った人のその後も描かれています。
障碍者の人達の賃金が嘘のように安いことは、何となく知ってはいました。授産所や作業所というところは、きっと職場ではなく職業訓練所のような位置付なのだと思います。福祉の手当てや家族のサポートがあることが大前提の賃金形態。
夏目社長は20代の頃から障碍者雇用の事業を立ち上げて、取材も受けていたそうで、当時の映像が沢山出て来ます。
パン屋さんをやっている時に、障碍者の従業員にも当時の最低賃金を保証していた為、キャッシング会社のカードを何枚も持って借金まみれになっていたというシーンが(こういうところが「ホームレス理事長」っぽいなと)!
会社を大きくしてシステム化していけば利益も増える。だけど、この会社の従業員は、従来のシステムにはなかなか組み込まれなかった人達。個別にぶつかり合いながらも一緒にやっていくのがここの人達のミッション…もがくしかないでしょう!
大口の仕事を受注したは良いけど、納期に全然間に合わないシーンなんか、観てて胸がぐぐぐっと苦しくなりました。営業職の経験ある人なら1度は味わってるんじゃないかな~納期に間に合わなくて徹夜!とか。
個人的にぶわっと泣いてしまったのは、新店舗で初任給を渡すシーン。障碍者の人達は保護者と来ていて、社長は給与と共にお花を1輪渡す。「お花はお母さんに渡してね」。
受け取った人はそのまま母親のもとへ駆け寄ってお花を差し出す。その時の母親の表情が本当にもう…😭😭😭
中には大きい息子をハグするお母さんもいて、我が子が社会から認められた喜び、その気持ち解り過ぎる!と涙が止まりませんでした。
ありのままでいられる、とか、みんなちがってみんないい、とか、言うのは簡単だけど、それを実践できる社会かどうかはまったく別。
ちょっとでも「普通」のレールから外れた人に対しては、皆あまりに無関心だと思います。そういう人達の数はどんどん、どんどん増えている。
そして、自分の周りや自分自身も、いつ、外れた人になるか分からない。
そしてそのうち、外れた人の方が多くなって、それが「普通」になるかもしれない。
それもまたよしなのではないかしら。
みんながどこかでちょっとずつ外れて、結果、多様性という言葉が本当に現実的になるんじゃないかな。
映画の後、ロビーで売っていた「久遠チョコレート」買って帰りました。むちゃうま!