ワイヤレス・テクノロジーに広がる不安
リン・ウィチャーリー (Lynne Wycherley) が、電磁波汚染と闘う新たな動きをレポート
翻訳:浅野 綾子
第5世代移動通信システム (5G) への目立った反対運動は今のところ起きてはいませんが、アメリカのマサチューセッツ州ではワイヤレス・テクノロジーにともなう健康被害の可能性について不安が広がっており、6つの法案が州議会の承認を求めて提起されています。州委員会は、このあと議員が審議する第2読会に法案を付すかどうかについて報告することになっています。
下院議員キャロリン・ダイキーマ (Carolyn Dykema) により提起された法案(法案番号:H2030)は、学校におけるワイヤレス・テクノロジーの利用について生徒と職員の安全を優先する「最適な利用方法」を求める内容です。ダイキーマ議員の2名の選挙人は、サウスボローにあるフェイ・スクール (Fay School) を裁判所に訴えています。申立てによれば、同校は、この選挙人の子供である男子生徒がWi-Fiによる被曝の軽減措置を講じることを許さず、障害をもつアメリカ人法 (Americans with Disabilities Act) に違反しているといいます。この男子生徒を診察している医師は、マイクロ波の被曝を計測する機器を用いて測定したところ、この生徒の頭痛や吐き気は学校のWi-Fi出力のピークと何度も一致したと指摘しました。
ある選挙人の請願により上院議員ドナルド・ヒューメイソン (Donald Humason) が提起した2つの法案はさらに踏み込んだ内容です。法案S2080は、この手の法案では初めて、電磁場にかかわる健康被害についての研修を全ての医師に義務づけるものです。法案S2079にいたっては、学校内でのインターネット利用について有線通信のみを推奨しています。この法案の請願者であるクリスティン・ベイティ (Kristin Beatty) は教師でしたが、ワイヤレス通信の被曝症状ー「電磁波過敏症」ともいわれるーによって働くことをあきらめなければなりませんでした。新たな研究では、被曝症状に悩まされていると訴える人たちのMRI画像に他では見られない特徴があることがわかっています。
上院議員マイケル・O・ムーア (Michael O. Moore) によって提起された法案S1864は、地方税納税者にスマートメーターの設置拒否またはパルスマイクロ波を出さない従来のメーターに取り替える権利を与えようというものです。専門家の証人には、ワイヤレスがもたらす悪影響の鍵となる仕組みについて論文を発表した生化学者であるマーティン・ポール (Martin Pall) 教授もいます。ポール教授は、健康への影響について、スマートメーターの強力なパルスにより「多発しているとの報告」があり、心機能の変化もその1つであると述べました。(以下エコロジストのインターネット記事参照:Smart Meter Radiation and Health (スマートメーターの放射線と健康)、 Smart meters and cell damage from pulsed em radiation - our health at risk?(スマートメーターとパルス状電磁放射による細胞へのダメージ~私たちの健康が危険にさらされているのか?))
上院議員ジュリアン・シアー (Julian Cyr) によって先の法案よりも前に提起された法案S107とS108は、携帯電話メーカーが作成した小さな文字の警告文を大きな文字の見やすい表示にするよう求めています。同時に、マサチューセッツ州公衆衛生局の環境疫学プロジェクトの責任者であるロバート・クノール (Robert Knorr) が、携帯電話や鉄塔やWi-Fiについて書かれた一般向けの健康予防の印刷物を許可しており、事態は進展しています。
さらには、上院議員カレン・E・スピルカ (Karen E. Spilka) が提出して迅速に決議 [下院において] された法案S1268は、電磁場がもたらす健康への影響を調査する委員会の創設を求めています。最も重要な点は、委員会が創設されれば、そこでは「産業界の資金に基づかない科学研究を調査する (examine non-industry funded science) 」としていることです。この科学研究には、例えば、出生率や免疫、心機能、睡眠、頭痛や認知症への影響、それからがん発生率についての研究があげられます。
リン・ウィチャーリーは、自然をテーマとする詩人。6冊の選集がある。先駆的な医師との活動と並び、非電離放射線について多年にわたり調査を続けている。
Concern Over Wireless Technology • Lynne Wycherley
Reporting on new moves to counter electro-magnetic pollution
307: Mar/Apr 2018