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横丁酒場 新木場暁

暁初の…。

2023.01.13 06:34

去年の12月。

といっても、まだ1ヶ月ほど前ですが。


「予約したいんだけど。」


と、ご来店のお客さまから声をかけられました。今日はご予約のためだけにいらしたとのことで、


お日にちは?と尋ねると、暁の年内最終営業日。


「大丈夫です、ギリギリお受けできます!」


と答えると、ニッコリ笑って店の前にとめてあった自転車に乗り、ロータリーの方へ帰って行きました。


後日また営業中に自転車でいらして、人数変更やお料理のちょっとした打合せがあった後、当日を迎えました。


去年の最終営業日。

といってもまだ1ヶ月も経ってませんが。

(しつこい)


12月28日火曜日。


この日は仕事納めだった方も多かったのか、おかげさまでたくさんのお客さまがご来店されました。となれば、私はホールに出られるわけもなく、終始厨房の中でてんてこ舞いだったのですが、そのお客さまが閉店間際、お会計のレジの前から、オーダーの調理が終わって厨房で少しホッとしていた私に声を掛けてくださいました。


「今日はありがとね。実はさ、俺たちこの店7〜8年ぶりでさ。」


「わー、ほんとですか?」


7〜8年前といえば、私は一度店を離れていた時期、先代の父と妹がやっていた頃です。


「昔はさー、よく大将に怒られながらここで飲んでたんだよ。いろんな酒教えてもらってさー。」


聞けば長く通っていたそうで、私のこともご存知でした。


「店全然変わんないね、懐かしいよー。」


「昔はさ、新木場だってこんなに店なくてさ、金が無い時はどさんこ。金があって旨い酒飲みたきゃここだったんだよ。どさんこだって、今みたいにあんなキレイじゃなかったんだぜ?」


「覚えてます!あとは、寿苑さんとか。」


「寿苑!」(今の炙り道場さん)


「あと、ロッキーとか。」


「ロッキー!!」(今のニコミトスミビさん)



…なんて、今新木場にお勤めでもわかる方がどれくらいいらっしゃるのかさっぱりわかりませんが、とても懐かしいお話が出来ました。


今から考えれば、自転車でわざわざ店まで予約をしに来たのも、そういえば昔はそんなお客さまがたくさんいらっしゃいました。今はグーグル、便利ですからね。


それにしても、懐かしいお客さまはとてもうれしいものです。ありがとうございました。



そして早いもので、その先代が亡くなって私が独り立ちしてから、3年と3ヶ月が過ぎました。



がんばれ!追いつけ追い越せ!


と応援してくださる方。



お父さんの真似出来なくたっていいんだよ、今はもう君の店なんだから。


と私の緊張をほぐそうとしてくださる方。



あのメニューは無くなったの?

このメニューはお父さんの味のままだね!


と思い出させてもらって、安心させてもらって、褒めてもらって。



いろいろなお客さまに支えられて、ここまで来ました。本当にありがとうございます。



父が22年、私が3年(しょぼい)。

足して25年。


今年はちょうど四半世紀の年なんですね。

びっくり。



それが、です。


そんな暁が25年間ずっと一度も出来なかったことが、この冬、思いもよらない形で出来てしまいました。


それは、店主不在の営業。

です。



父の時代は、父が体調を崩せば店はお休みでした。なんなら、ホールリーダーの妹が体調を崩しても店は休み。(ホールペーペーだった私は別です)


なので、私の時代になってからも、私が休みなら店も休みです。


もちろん、人を雇えばそうはなりませんし、そうしてるお店もたくさんあります。その方が多いはずです。ただ、暁にはそれが出来ない理由と、それをしない理由があります。


なので、店主が休みなら店も休み。

今まで当たり前のようにそうして来ました。



そして、先週日曜日。


この度私女将、コロナ陽性となりました。

(無念です…)


当然、陽性とわかってすぐに「店は休みだよ。」と関係各所に連絡をしたところ、バイトさんから、


「自分たちだけで開けてみたい。」


という申し出を受けました。



確かに元々そんな話はしていました。

だってこんなご時世です。


もし女将がコロナになったら自分たちだけでやってみたいと何度か言われていましたし、その時には「いいよ、やれやれー好きにやれー。やっちゃえー」なんて笑って話していたのですが、


いざ本当にそうなって。


改めて、こんなにありがたい申し出を受けてみて、


「いいよ。むしろお願いします。」


と電話越しに頭を下げてはみましたが、果たして本当にそれでいいのかと、電話を切ってから真剣に考えました。だって、先代の父と妹、家族という最強タッグの時代ですらそれはやらなかったことなのですから。


お酒は全部出せるけど、

お料理は簡単なものだけ。


というミニ営業。



いくら時代の利器、SNSを使って告知をしたところで、知らずにご来店する方もいるでしょうし、そうなれば説明も必要ですし、なんなら一見さんも多い新木場です。


そもそもその状態で店を開けていいものなのか。学芸会や文化祭じゃないんだぞ!とお叱りを受けることだってあるかもしれないとも考えました。何より、もし先代に相談できたのなら、なんと答えたんでしょう。目を閉じて考えてみても、わかるはずもなく…。




でも、今回やることにしました。

暁初、店主のいないミニ営業。


女将見習いでお料理担当のバイトのしゅりちゃんと、ホールリーダーに一時昇格、石井くんの2人営業です。




私もそうだったんですが、昔ホール係→今厨房で見えて来たこと、わかったことがたくさんあります。


経験って大事です。

あと、信じて任せること。


信じてもらうのって、うれしいです。


私も、いいから店に戻って来いと説得して来る父から「お前なら出来るよ。」と言われたときのことは、今でもよく覚えています。とてもうれしくて、必死な父に失笑しながらも、その時その気になりました。笑



そうと決まれば、全力サポート!!



…といっても、体力と能力は落ちていて、気力でどうにかがんばるつもりでしたが、足りていたかどうか。今の時点で自覚している不足がもうあります。


でももうミニ営業は始まっています。


あたたかいお客さまに見守られて、

残りはあと1日、今日だけです。



初日の営業を終えた見習い女将は、


「女将の気持ちをただただ知った日だった。大変さと、でも楽しさも。」


と言ってくれました。


それを聞いた私も、ただただ父の気持ちを知りました。


どうにか支えてあげたい。

そのありがたい気持ちに報いたい。

報えるはず、この店とお客さんなら大丈夫。

しゅりなら大丈夫、絶対に。


そしてもしこれで楽しくなったのなら、なんなら私のこと思いっ切り抜き去ってくれたっていい。だって私、絶対負けないから!


そんな気持ちも芽生えました。

父譲りですね。笑


とにかく、よしやろう!と一緒に同じ方向を向けたのなら、あとは少し笑いながら、そっと背中に手を触れてあげればいいということも。




なーんて。


ベッドの上からのサポートがちゃんと足りてたかどうかはわかりませんが、


かわいい子には旅。


の親心でしかありません。


心配で心配で、気が気じゃなくて熱が出ました。

(出てただけで理由は違いますが。)



とにかく、今日はミニ営業最終日。


お義母さんも、見習い女将と暫定ホールリーダーのサポートに動いてくれるようです。


石井くんも暁で何かの種を見つけてくれたらいいなぁ。




いつもとちょっと違う暁、


そして、まだまだこれからも成長中の暁を、


今日もこれからも、どうぞよろしく。



本年も変わらずお引き立てのほど、何卒よろしくお願いいたします。



来週から元気に頑張ります!!


女将まこ