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Welcome to the cermic art world of tadashi wada  工藝 Web個展

濱田邸茅葺長屋門修復その10

2023.01.13 08:32

濱田邸の長屋門もいよいよ「ぐし」も出来上がり「けんとうぎ(漢字でどう書くか不明)」を乗せる作業にこぎつけた。「けんとうぎ」は屋根飾りで色々な意味があるらしいが、余り長屋門には付いているのは見かけない。むしろ珍しい。屋根の峰にある「ぐし」は実用として頂点の雨よけとして重要な構造物だが「けんとうぎ」は飾りとなるので竹でできた「ぐし」には「けんとうぎ」の重さが負担となる。修復前の昔の写真を見ると立派な「けんとうぎ」が乗っているがやはり重さでぐしが歪み落ちてしまったようだ。今回の修復ではこの長屋門を移築した時に「けんとうぎ」を乗せたであろうと推測されるので、濱田庄司のこだわりだったろうとと敢えて「けんとうぎ」を新調することとなったようだ。

慎重に検討して「けんとうぎ」を従来のものより少し厚みを少なくして重量を軽くして新調する。幸い以前の「けんとうぎ」の端が残っていたのでカーブなどを参考にして棟梁が制作した。一本の木から作るのでは大木が必要になるし「ぐし」まで上げるのもクレーンが必要になるので四分割で作り「ぐし」の上に人力であける。本来は文化財的価値のある建造部物だあるため移築時のまま修復するのがベストだが、建物の保存性を考え敢えて「けんとうぎ」を小さくしたそうだ。

古い「けんとうぎ」の端の部分反りなどを参考に。

真新しい濱田邸の山から切り出しておいた材木で「けんとうぎ」を新調する。オリジナルより軽量化して棟梁が研究した天然素材の防腐剤をこの後塗布する。

防腐剤を塗布された「けんとうぎ」がいよいよ屋根の上に乗る。茅葺き屋根の整えは終わっていないが「けんとうぎ」が乗ると一段と風格を増してくる。しかし母屋などには「けんとうぎ」が乗っているところはあるが、やはり長屋門に乗っているのは珍しい。破風飾りもしかり。この画像では見えないが。

次第に「けんとうぎ」が次から次へと設置されていく。

最後の「けんとうぎ」のパーツを乗せるため慎重に間隔を計り調整して行く。

最後の木材が運ばれ慎重にはめ込まれる。ただ嵌めるだけではなく日本の木造建築伝統の「継ぎ手」という刻みが施されていて組み込まれると簡単には外れない構造になっている。

棟梁が先ず慎重に「掛矢」で叩きながら接合部を合わせて行くが、下が「竹製のぐし」なので水平が取りずらい。木をかまし「けんとうぎ」全体が水平になるようにしなが接合して行く。大変な作業だ。

屋根屋さんの職人が銅線で「けんとうぎ」と屋根を仮固定して行く。三番目の写真に見える丸く白いものは「けんとうぎ」の接合部分への楔だ。一般に大きな木材を接合する時に「継ぎ手」と楔で固定する。楔は開けた穴より真ん中の部分が膨らんでおり木が痩せても抜けない構造(現在ではテーパーというが、古い時代から日本では釘や楔に利用されていた。)になっている。これも伝統の技。木材に掛かる強度により継手の切り込みも何種類も有り横方向縦方向荷重見よって「継ぎ手」の構造も違う。いよいよ「けんとうぎ」が繋がり屋根の威容が増す。が、未だ作業は有る。「けんとうぎ」がバランスよく「ぐし」の上に乗っていないと左右どちらかに雨が多く流れその分片方だけ屋根の痛みが激しくなるという。最後に左右のバランスを取らなくてはならない。

大工さん達が「けんとうぎ」のバランスを見ながら屋根屋さんの職人さんに指示を出し「ぐし」の中に割り竹を入れバランスを見る。最後に棟梁がもう一度屋根に上がり「水準器」で様子を見ている。

「けんとうぎ」のつなぎ目に銅板をかぶせ固定する。継ぎ手からの水の侵入を防ぐためだろうか?銅線にしろ銅板にしろ昔から利用された素材。銅板も銅線も一度表面に緑青という酸化被膜が出来るとそれ以上錆びが侵食しないので薄い銅板でもかなりの年月保つ。古人の知恵が今に生かされている。