きょうだい児へのサポート
なくなった子に兄弟姉妹がいる場合、親御さんは深い悲しみ・混乱の中で、きょうだい児への関わり方について、悩むことが多いのではないでしょうか?
◆多くの親が迷うこと、悩むことの例
・赤ちゃんの死をどのように伝えれば良いのか
・最後のお別れ・対面をさせるのか、葬儀には参加させるのか
・子どもたちから投げかけられる様々な疑問にどのように答えれば良いのか
・子どもたちのこころはどのような影響を受けるのだろうか
幼い子どもたちも、両親や周りの人たちの様子から何かただならぬことが起きたことを知り、様々な疑問や不安を抱えています。まずは、子どもの発達・理解力に合わせて、わかりやすく状況を伝えていくことが、子どもたちへの大切なサポートになります。
◆「赤ちゃんの死」をどのように伝えればよいか?
子どもはその年齢・発達に応じて「死」への理解を深めていきます。子どもの理解度に合わせて、丁寧にわかりやすく説明していきましょう。
◆子どもの年齢による死の理解と伝え方のポイント
参考図書)死ぬってどういうこと? 子どもに「死」を語るとき アール・A・グロルマン著
注)年齢は目安であり、個々の子供の発達により理解度も異なります
*未就学児
死が全ての終わりを意味することを認識するのは難しい。死者を見て、眠っていてまた目が覚めると考えたり、死者を見ずに別れた場合は、どこかに行っていてまた戻ってくると考えたりする。家族との死別後、周囲のただならぬ様子を察する能力はあるので、不安が高まり、親にまとわりついたり、赤ちゃん返りすることもある。死んだらどうなるのか?という質問があったら、人は死んだら再び生き返らないこと(魂について宗教的な信念があるのであれば、加えて説明する)、なくなった後は痛みや苦しみはなく安らかであること、死は誰のせいでもないことを説明することが大切。
*5〜9歳
死ねば生き返ることはなく、生き物は全て死ぬ運命にあると理解するようになるが、死が自分の身の上にも起こりうるということまでは考えられない。死について正しく、簡潔な知識を与えることが大切。
*10歳以上
医学的なこともかなり理解し、現実に即した死の概念がもてるようになってくる。子ども自身にも死が起こりうることだと理解しているので、身近な人の死は恐ろしく、つらいものになる。ある意味、大人と同じように死別の悲しみを体験しており、周囲のサポートが必要。
◆子どものグリーフを支えるための基礎知識
・死を理解できない年齢の幼児でも、「大切な家族の不在」や「親の悲しみ」を肌で感じ、その子どもなりのグリーフを体験し、悲しみ、戸惑いや不安、怒りなど様々な感情を感じている。
・大切な人に何が起きたのか、死とは何か、死んだ後はどうなるのかなど、子どもも本当のことを知りたがっている。子どもの年齢・発達に応じて、わかりやすく簡潔な言葉で丁寧に説明することが大切。抽象的な言葉、たとえ話やファンタジーで死を説明すると、子どもの誤解を招きやすい。
例)3歳のきょうだいに「赤ちゃんはお空に帰ったのよ」と伝えたら、お盆の時には空から戻ってくる、会えると期待していて、会えないことを知り悲しむ
・何か悪いことをしたから誰かが死ぬということはなく、家族の死は子どものせいではないことを伝え、子どもが間違った自責の念を抱えないように注意する。
・大切な人の死を悲しむこと、悼む気持ちは、人が皆もつ自然な気持ちであり、わきおこる気持ちを我慢せずに、泣いたり、怒ったりしても大丈夫であることを伝える。大人も素直に、共に悲しんで良い。親が悲しみ、周りに助けてもらう姿を見て、子どもも「自分も我慢しないで悲しんで良いんだ、助けてもらって良いんだ」ということを学ぶ。
・子どもにとっては、遊びや勉強など、日常の生活をいつも通りできることも大切であり、保護者が動けない時には、周りにサポートをお願いする等も検討する。
【参考となる資料】
◆「星になったぼくのおとうと」動画
小さな赤ちゃんとのお別れと家族のグリーフ について、8歳のお兄ちゃんの視点から描かれている動画です。書籍もあります。
◆Hope Tree ウェブサイトより 子どもの発達段階と悲嘆の表現
◆「大切な人を失ったあとに 子どもの悲嘆とケア 子どもを支える親と大人のためのガイドブック」 日本語版作成: PCIT Japan・国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部
子どものグリーフがどのようなものなのか、周囲の大人にできること、親御さんへの支援についてもまとめられたガイドブックです。
親御さん自身、グリーフのさなかでは心のエネルギーが低下して、普段なら許容できるような些細な刺激でもイライラしやすくなる時期があるかもしれません。余裕のない中で、きょうだいの育児にうまく対応できなくなることもあるかもしれません。
こちらの本 ↓ は対人関係療法の考え方に基づいて、子育て中のイライラがどんな機序で生じ、どんな風に対応するとよいのかが、わかりやすく書かれている本です。
死別後間もない時期は、なくなった子どものことばかり考えてしまい、目の前のきょうだい児も大切にしなくてはと思っているのに構ってあげられない、そんな自分が情けないと自分を責めている親御さんもいます。死別後、なくなった赤ちゃんのことばかり考えてしまい他に注意が向けられなくなる状態は、赤ちゃんをなくした親のグリーフ反応として珍しくない、ごく自然な反応なので、どうぞ自分を責めずに、「大切な赤ちゃんをなくしたばかりなのだから、こういう自分の状態も当たり前なのだ」「自分が構えない分、他の家族に遊んでもらったり、周りに協力をお願いしよう」と考えてみて下さい。
近年、自治体によっては、産後の家事などを支援するヘルパー派遣事業について、赤ちゃんをなくしたお母さん(産後1年以内)も利用できるように対応を始めています。体調や気持ちの状態が落ち着くまで、こういった支援サービスを利用することも選択肢の1つになります。