2020質問集(プラスチックゴミ分別)
次に、プラスチックごみの分別方針について伺います。
今年のあの暑い夏、私は大好きなアイスコーヒーをラクーアにある某コーヒーチェーンで買って飲んでおりました。のどの渇きは癒されましたが、少々違和感が残りました。ストローが紙ストローに切り替わっていたからです。サステナブルな未来を作るための、使い捨てプラスチック資材削減に向けた取組なのだそうです。
スローガンは大変美しいのですが、コーヒーを入れるカップ、これはプラスチックのままでした。正に、頭隠して尻隠さずとでも言いましょうか、ストローで節約したプラスチック量とカップで使用したプラスチックの量を比較すると、何ともシュールな光景でありました。私は、環境保護運動の美名の下に隠された、欺瞞的側面を垣間見るような気分になりました。
そして、七月からはレジ袋が有料化されました。聞けば、プラスチック使用削減によるCO2排出量の抑制、海洋プラスチックごみの削減がその主な理由なようです。確かに、もっともらしく、なかなか反論しにくい理由です。
しかし、よく考えると、どれもこれもそんなに意味があることのように私には思えないのです。
まず、CO2排出量の削減です。ものすごく単純に言えば、プラスチックは、原油をガソリンや軽油などに精製した後の残りかすであるナフサから形成される製品であり、ある意味でエコな素材と言えます。
足元では、原油の下落によりナフサ原料も大幅に下落し、バージン素材も急落。プラスチックスクラップの在庫は大幅なだぶつきが報じられるほどです。
そもそも、日本全体の原油使用量に占めるプラスチック製品の割合は、三%弱しかありません。レジ袋はその中の更に僅かな割合です。
日本で使用される原油は、八〇%が熱源や動力として利用されていますから、CO2排出抑制を進めるためにレジ袋を削減しても、本当に微々たる効果しかなく、原子力発電所の再稼働、自動車の大幅な燃費向上など、根幹部分の政策を進めない限り、現政権が進める二〇五〇年に温室効果ガス排出実質ゼロという目標の達成はかなり厳しいというのが現実です。
海洋プラスチックごみについても、ウミガメがレジ袋の誤飲で窒息している、こういう画像を見せられると、なかなか衝撃的なものがあります。
しかし、よく考えてみると、レジ袋は、通常、家庭から燃えるごみとして回収され、焼却されていますから、ウミガメが誤飲することはありません。レジ袋は、その存在が問題なのではなくて、それを不法に投棄することが問題なのです。
海洋プラスチックごみは、漁に使う網やブイがその約半数を占めます。海洋プラスチックごみに占めるポリ袋の割合は、僅か〇・三%にすぎません。
もちろん、割合的には少なくても、減らせるものは減らした方がいいじゃないかという考え方もあるでしょう。それには私も同意します。しかし、レジ袋を減らすというよりも、ごみの不法投棄やポイ捨て防止を徹底することに力を注いだ方が、よほど合理的に問題が解決できるのではないかと思うのです。
東京都では、最終処分場の延命が大きな課題になっていますが、これについても、プラスチックごみ削減は余り意味のあることではありません。
私が子どもの頃は、プラスチックを燃やすと有毒ガスが発生するということで、燃えないごみとされていました。しかし、今や技術進歩によって、サーマルリサイクルという形できちんとリサイクルされています。
石油製品であるレジ袋を含むプラスチックは、ごみを焼却する際の燃料になります。ほとんどが燃えてなくなるわけですから、プラスチックごみを減らしたところで、ごみ全体のかさを減らす効果はほとんどないということであります。
ということで、そもそもプラスチックごみを必要以上に分類することや、削減を目的に複雑なルールを導入することは、余り合理的ではないというのが私の得た結論です。
二十三区を見渡すと、十二区が既にプラスチックの分別回収を進めているなど、まだら模様の対応となっております。
プラスチックの分類は、ごみの量を減らすことになったとしても、その先にある最終処分場の延命やCO2排出量の削減といった真の目的のための効果があることと、私には思えません。むしろ、複雑なごみ出しルールは、資源回収のコストの過度な増大やごみの不法投棄を招きかねません。
現状の文京区の考え方、リサイクル清掃審議会での議論の方向性はどうなっているのかをお聞かせください。
先日、手話で会話する方たちの御家族から伺いました。レジ袋有料化以降、買物をするのにとても苦労するようになったそうです。これまでは黙っていても買物が成立したのに、今は必ずと言っていいほど声を掛けられてしまう。それがレジ袋のことなのか、それとももっと大事なことを言っているのか、毎回確認しなければいけないからだそうです。
一見、絶対的に正しいように見えるレジ袋の有料化やプラスチックの分別ですが、その実質的な意味や波及的な影響も含め、一度立ち止まって再考してもいいのではないでしょうか。区長の御見解を伺います。
私が申し上げたことは、一部の環境保護に熱心な方からすると不都合な真実かもしれませんが、政策判断には、漠然とした不安や空気ではなくて、現実に目を向けていただきたいと強く思います。