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精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

モラトリアムを認める

2023.01.18 12:52



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



昨日のブログ

・分からない、分かろうとしない、

分かりたくない

の続きです。

昨日の記事からお読みください。





上司から

「思春期の延長線上の年齢の人で、

自分が何をしたいかを

考えたくない人は多い。」

と聞き、驚愕したわたし。



わたしは反論します。

「自分がどうしたいかを

考えないと、

前に進めなくないですか?」




上司は言います。


「そうなんだけどね。

考えたくないんだよ。


例えばその大学生の方ね。


大学を辞めたい。

でも親は反対している。


親の反対を押し切って

退学する勇気もない。

だったらこのままでいい。


自分で決めるより、

親の言うことを聞いてた方が

楽なんだよ。


えみり先生が出した宿題は、

今後の人生をどうするかに直面する。


だから

考えたくない。


宿題ができないから

外来に来れない。


モラトリアムっていう言葉があってね、

どうやって生きていくかを

決めずに延期するの。


アイデンティティ確立のための

猶予期間かな。


30歳くらいまで。


その子も

その状態なんじゃないかな。」





わたしは黙り込みました。

自分がどうしたいかを

考えたくない人がいるなんて

思いもよらなかった。



わたし自分を掘り下げるのが趣味。

・自分が何をしたいのか、

・どう感じているのか

を、考えるのが好きです。



でも、そうではない人もいる。

大きな気づきになりました。





ここで出てきたわたしの疑問。

「だからと言って、

ずっと受容的に接してていいんですか?

考えたくない患者さんに

寄り添っているばかりでは

変わらない気がします。」



上司はニヤリと笑い、

「そこが精神科医、心療内科医の

腕の見せ所だよね。


受容と傾聴をする。

そして

患者さんが自分で決めれるよう

上手く誘導する。


それが醍醐味よ。」


と、言いました。



2人で爆笑。



上司は続けます。


「もしかしたら

またひょこっと

来てくれるかもしれないよ。


それに、

一生外来に来てもらうのが

いいとも限らないでしょ。


どこかで卒業する方が

いいんだから。」



そうですね。

本当にそうです。





もし彼女がまた

外来に来てくれるなら、

わたしは謝罪したい。


良かれと思って

わたしの考えを押し付けてしまった。



でも、

今は謝ることさえできない。


もどかしい。





そんな気持ちと

新しい視点とともに、

今日もわたしは外来を行う。