自由すぎる自己学習機関ー 『バウヒュッテ-フォルケホイスコーレ』
『バウヒュッテ-フォルケホイスコーレ』
コンソーシアム・パスポート制度により、国籍、年齢、宗教、民族とは無関係に入学可能で、国内外からの参加者を受け入れています。
『バウヒュッテ-フォルケホイスコーレ』(以下フォルケ)とは「民衆の大学」を意味します。「大学」といっても大きな総合大学(University)ではなく、小さな日本の寺子屋(College Hutte)のようなもの。フォルケホイスコーレのキャンパスは「小さな家」です。
『バウヒュッテ-フォルケホイスコーレ』は、試験もなく資格も問わないので、もちろん年齢・国籍も問いません。この学校は国家からの自由というものが一番大事な思想になっていますが決して反権力の民衆の対抗教育ではありません
。「フォルケ」では「堂々と子供のような主張をしよう」を理念しています。パブロ・ピカソが「芸術」とは不正や不義や人間の権利の侵害、更には戦争などを阻止するための鋭利な刃物のような武器たらねばない」と言い、もう一方で「ようやく子どものような絵が描けるようになった。ここまで来るのにずいぶん時間がかかったものだ。」と言っています。
一般市民も参加出来るオープンキャンパスとしてアート小学校や民主小学校、家電小学校などのアネックスな活動も展開しています。
『BAUHYUTTE-フォルケホイスコーレ』(以下フォルケ)は、コンソーシアム・ミュージアムのアッセンブリーとして、自己学習によるアールブリュットな共同芸術運動です。主に4か月から6か月のコースで、美術、映像、音楽、文学、語学、環境、哲学、料理など、「フォルケ」ごとに複数のコースが定められ、教科は多岐にわたる。教師と学生が平等な関係の中で相互に学ぶことが重要な理念のひとつであり、授業ではカフェ・シネマ・シンポジウムなどのスタイルで自由な対話が重視されます。入学試験を含めたテストや成績評価はない。授業外でも学生や教師が生活の多くの時間を共にします。
・HECP…Human rights(人権),Environment(環境),Community(共同),Public goods(公共)のリベラルアーツ基本4科の概念の取得プログラム
・ Minimal POP(ミニマルポップ)…装飾的な要素を最小限に切り詰め、シンプルなフォルムを特徴として表現。映像や写真、ストリートアートなど、自分の表現したいことを上手い下手ではなく様々な形で実現する方法を教える。
・Stand3.0(スタンド3.0)- Political Activism…政治活動について学ぶクラス。直接民主主義に則り、政治的活動を起こしたい時はどのように考え、行動に移していくかなどを学ぶ。
・Industry 2.5(インダストリー2.5)- Organic Design…環境問題やアップサイクルなアートを通じてみんなで楽しみながらエコロジー活動を実際に行っていく。
・Cominal Kino(コミナール・キノ)…映画やTVシリーズのドラマを観て、登場人物の気持ちや作者の意図などをみんなで語り合うクラス。
「フォルケ」では、自由な時間の多さと、フラットで寛容な人間関係、そして何より、若者や高齢者、難民や障がいのある人など、様々なバックグラウンドの人たちが学び、食事をし、放課後には一緒に過ごす、日常生活に溶け込む多様性が存在します。
話題になっているニュースと結びつけて、その日の授業を行い、もしテロのことがニュースになっていたら、自分の身に起きたらどう反応するか考えさせます。社会に起きている問題が自分につながっているということを意識させるんです。授業の内容を実生活に反映させるような取り組みもあります。環境問題について学んでいるクラスが食事のゴミの分別をしたり、「フォルケ」は、参加者が楽しんで学ぶとともに、ひとりの人間として、「どのように社会とかかわっていくか」を一番大事にしています。ただ能力があるだけではなく、いろいろな目線を持ち、社会的な要素を備えて世の中に出て、学んだことを社会に還元しなくてはなりません。また、「フォルケ」は人生の休息の場でもあるんです。普段やっていることから離れて、別のことに挑戦しながら何をやりたいか考えたりできる大事な場所でもあります。考え方の違いにもすごく寛容で。フォルケの授業ではどんな意見や質問も、その人の考えとして大事にされます。育ってきた環境や文化が違う以上、考え方もそれぞれ違うのは当たり前。多少的外れに思われるような発言でも、参加全員が掘り下げて理解しようとすることにより間違った質問や、間違った意見などはここでは存在しません。難民や体の不自由な人など、それぞれ育った環境が全然違う人が「フォルケ」に集まっているから、自分の価値観だけでは測れない。背景を見ないとわかりあえないということはあると思います。
「フォルケ」は地域の共同保育運動としても機能します。子どもと大人の双方が創造性を発揮し、アート探求の活動をとおして共に学び、育ちあう関わりを形成するユニークな教育スタイルです。また、日本の障がい者によるアールブリュットは海外でも高い評価を得ています。地域社会でその独創的な発想と最後までやり抜く力を、障がい者から学ぶ場として、子どもと大人と障がい者によるグループアート活動など大胆なアプローチを期待したいところです。
欧州のモダンアートは、地域のコモディティの中から生まれてきています。イタリア人の家は、人を家に招いたり、招かれたりするサロンになっている。人と人との交流場所です。そこから素敵なモノを家に置きたい、人生の素敵なスタイルを作りたいという気持ちが生まれ、身につく情操は美大や美術館で得るよりもその影響は大きく、それがアートの土壌となっています。しかし、それは決して狭義のアート教育や技術教育という意味ではなく、子どもたちはコモディティを通じてオリジナリティな自らの思考や感情を表現し、伝達する感性豊かな個人として育っていくのです。
「フォルケ」の最大の特色はオープンアクセスであるということがいえます。誰もが自由に「参加」することが出来、プロジェクトを発展させていくことが可能です。有名なタレントや文化人だからといって全く特別扱いされることはなく、逆にその無名性が心地よい時間を過ごすことができます。「フォルケ」では国も文化も政治的な考え方も全然違うような人たちが、一緒に週末にイベントを企画したり、プロジェクトを進めていき、ダイナミックなものを生み出す経験ができるのも「フォルケ」の良さだと思います。当然意見の違いや対立はおきます。でもそこで、自分と他人との考え方の違いを学びながら、協力して一つのものを作っていく。「フォルケ」の人たちは、そうやって民主主義の考え方を学んでいきます。