【歩み寄る独裁者:2】北朝鮮、核・ミサイル実験中止の意向 日本は“裏切り”警戒
南北首脳会談を目前に控える北朝鮮が、朝鮮労働党の機関紙を通じて核兵器の使用およびICBMなどのミサイルを含む実験を中止すると発表した。
ただ、保有する核兵器を削減あるいは廃棄する「非核化」には言及しなかった。
あくまでも、「他国からの威嚇がなければ」という条件を付けた形だ。
それに加え、わざわざ「核兵器開発が実現したため」との理由も述べた。
核・ミサイル実験の中止を具現化するために北朝鮮は、北部にある核実験施設の破棄を宣言。
史上初の米朝首脳会談を控える米国は、北朝鮮の姿勢を評価した。
北朝鮮への対応において各国から置き去りにされてきた格好の日本では、安倍首相が「前向きな動きと歓迎したい。大切なことは、この動きが核、大量破壊兵器、ミサイルの完全、検証可能で不可逆的な廃棄につながるかどうか」と珍しく正論を述べた。
確かにここ数ヵ月、北朝鮮は対話の方向へと傾きつつある。
そのなかで核実験施設の廃棄とICBMなどのミサイル発射実験中止という外交カードを切るほど積極的だ。
しかし、北朝鮮はこれまでにも日本に対し拉致被害者の帰還をちらつかせ幾度となく反故にしてきた。
日本は対話へと舵を切りつつある北朝鮮に、今度こそ拉致被害者全員帰還の実現を迫りたい。
警戒するのも無理はない。核を保有する国ならともかく、拉致被害者を人質に取られ核も保有していない日本だからこそ北朝鮮が完全な非核化に言及しなかったことは大きな懸念を残す。
もう一つ言えるのは、北朝鮮の対話路線への姿勢を評価するならこれを契機として核を保有する国々が連携して非核化へと動き出してもらいたいということだ。
何度も言うように、北朝鮮にだけ非核化を迫って自分たちの核保有を正当化することは国際社会のあるべき姿ではない。
どの国も、戦争が起きれば自らの立場を正当化するし核を持っていれば自分たちの核兵器は持ちうるだけの正当性があると主張する。
そんな不毛な議論をし続けるなら、戦争と核兵器のない世界はずっとユートピアのままであるだろう。