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Classic Music Diary

RAVEL:Cantates Pour Le Prixde Rome

2023.01.21 09:32

Pascal Rophe / Pays De La Loire National Orchestra. (BIS) 96Khz/24bit

これはとても面白いアルバムだった。モーリス・ラヴェルが『ローマ大賞』に応募した作品ばかりを収録したラヴェル好きすらほぼ聴いた事がないであろうカンタータ作品集。

クラシックをよく聴く人なら名前は聞いた事があるはずの『ローマ大賞』。ドビュッシー、ベルリオーズ、グノー達も受賞している。このフランス政府による芸術学生に対する留学制度はルイ14世によって始められたが、対象に音楽が加わったのは1803年ということで随分後のことなんですね。選考方法はまず予選を通過するために課題のフーガと合唱作品を提出する。通過すると本選として弦楽+カンタータ作品で審査されるのだが、試験課題に対して1ヶ月以内にほぼ隔離状態で仕上げる必要がある。ラヴェルは1900から1905年の間に5度も参加したが本選に進めたのは1901年だけという残念な結果なのだが、それに対しては選考委員の恣意的政治的な内幕が明るみに出て音楽院長が辞任に追い込まれるというということになりそれは『ラヴェル事件』として知られている。因みにその5年の大賞受賞者を見てみたが現在まで名前を知られている作曲家はいなかった。

このアルバムの作品群で広く知られているものはない。これを聴いてラヴェルだと察しがつく人はいないくらいラヴェルらしくない。もともと作曲数の多くないラヴェルの作品のしかもカンタータということでそれを五作品も揃えているのはとても貴重な録音と言える。その頃は既に『水の戯れ』、『亡き王女のためのパヴェーヌ』、『ソナチネ』などを発表しており、新進気鋭の作曲家として名前は売れていたので敢えて『ローマ大賞』に応募を続けた動機はハッキリしていない。このカンタータを聴くと学生として若いラヴェルが大賞を取るため保守的な審査員が受け入れ易いように作曲した苦心というものが偲ばれる。

2023-50