はじめてのライブハウス 小野雄大編
「高校生になったらバンドをやろう」
と意気込んではいた。けれど右も左もわからず悶々としていた日々。きっかけは同じ地元の先輩だった。その人との話の中でひとつ年上の先輩のバンドの存在を知った。その先輩たちがジャンクボックス(現ゴールデンピッグス) でライブをするというので遊びに行ったのが初めてのライブハウス。
七月だった。自分はライブハウスまで自転車を一時間、汗だくでこぎまくって向かったのだ。その日は二〇歳以下のバンドのコンテストみたいなやつが開かれていて、多くのバンドが出ていた。先輩たちはとても楽器がうまく、椎名林檎のコピーバンドだった。「かっこいいなあ」と目を輝かせて、首にタオルを巻いて半袖半ズボンで冷房の効いた煙草が染み込んだライブハウスの臭いもあいまって、少しだけ大人になった気分で胸を踊らせていた小野少年。そこでarchaique というバンドをみた。そのバンドに心が奪われた。「二つの軌道」という曲を聴いた時のことを今でも覚えている。僕はとにかく感動した。少し年上なだけであろう人たちがオリジナル曲をやっていて、こんなにも素敵なものだなんて! 自分も同じように感動させたいと思った。
友達でありバンドメンバーに報告すると、そいつの従姉妹のお姉ちゃんがメンバーと同級生だからということがわかり後日CD をくれた。それが嬉しすぎて、MD に入れて毎日聴きながら自転車通学をした。当時、毎日のように魔法のi らんどで作られたHP を見ていた。なぜかというと歌詞のコーナーがあって、新作がどんどん更新されていたから、それが楽しみだった。探してみたけど流石に今は残っていなかった。なんだか悲しい。
ある日、「出たいんです」とライブハウスのスタッフさんに話しかけてから、自分のライブハウス通いは始まった。
たくさんの好きな人、嫌いな人ができて、たくさんの好きな音楽、嫌いな音楽ができた。手持ち無沙汰で帰りたくなることも、楽器に触りたくなることも歌いたくなることもしょっちゅうある。別にライブハウスのあらゆるすべてが素晴らしいとは言わないけれど、ただ、得られる素晴らしいものがあるから、それでいい。固まったものもほぐれるし、弛んだ気持ちがピンとなる、そんな感覚になることがある。
夢があって、でも現実ばかりで、でもやっぱり夢で溢れちゃっている感じが好きだな。それから、お客さんの近況とか聞けるのも面白くて嬉しい。その人が変わっていったり、綺麗になったり、大人になったり、落ち込んでいたり、恋をしていたり、失恋したり、恋人ができたり、子どもができたり。その変化を知った上で、音楽ができるのは、とても嬉しいことだと思う。みんなもっとライブハウスで、飲み物片手にでも僕に自分のことを教えて欲しい。
▼うたたね
小野・なつゆ・もーにんぐしー・ナムカワが所属しているバンド。今回のZINE でメンバー初集結。思えば遠くへきたもんだ。