Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

パレッターズpaletters.

たかしまを彩る人 color.17 コティカフェ オーナーシェフ 中村フミコさん

2023.02.01 00:00


 高島市マキノ町にある人気観光スポット・メタセコイヤ並木の入り口のほど近く。

白く愛らしいおうちが目を引くカフェ「コティカフェ」(マキノ町沢)は、地元食材を使用したランチやケーキが楽しめる。


ランチタイムには、「牛すじ肉とごぼうのトマト煮ドリア」、「鶏のクリームドリア」、「てりやきハンバーグ」などが千円前後で楽しめる。(いずれもライス・サラダ・小鉢・ドリンクつき・数量限定)


 「コティとはフィンランド語で〈家〉という意味です。もうひとつの家のように過ごしてもらえたらと。」とオーナーシェフ・中村フミコさんは話す。



定番メニューのひとつ、「タコライスドリア」
(小鉢・ドリンク付き900円/単品700円・税込)。ライスの上にはスパイスで旨味を引き出した挽肉。その上にチーズを載せて。新鮮なトマトとレタスが散らしてあって軽い仕上がり。ピリッとしたサルサソースも添えてあり、食が進む一品。



「あの頃身につけた経験のお陰で、タルトは手早く作れますよ。」コティカフェの人気タルト(ドリンク付き900円/単品550円・税込)は洋梨とりんごから選べる。米粉100%のシフォンケーキ(使う果物は季節によって変更)などもおすすめ。



親が美容師だったこともあって、かつては東京で美容師をしていたフミコさん。

大津市で母親と姉が営む美容院に、いずれ加わって仕事をするだろうという身内の予測とは対照的に、自身にその考えは無かったと話す。


その頃は、休日の過ごし方のひとつに、オシャレなカフェで過ごすことがトレンドとなっていて、癒しと息抜きを求めてカフェで過ごすことも多かったという。


そこで一緒に過ごした人から、生き方のヒントをもらったり背中を押してもらったり。たまたま読んだ本に希望を感じたりも。お客同士で何かが生まれたりする場に居合わせたり。そんな経験から、私もそんなカフェをしようと思ったのだそう。


ここにしようと決めた場所は人通りの少ない一角。集客が目的だったら賑やかな土地を選ぶけれど、以前から落ち着いた場所に身を置きたかったフミコさん。


 「父親の出身が高島で、馴染みのあるエリアでした。自転車で市内をリサーチしていくうちにどんどん北上してしまい、こちらに。他力本願ですが、近くの観光地を訪れた方にうちの店を紹介してもらってお越し頂けるほどよい位置で。」と笑った。


人にも自分自身にも心地よいと思えるお店で、カフェメニューを提供しようと考え、開業に向けて都内フランス菓子店の門を叩き、下積み生活がスタート。

スイーツ作りの舞台裏では、制作しては自宅で寝るだけのハードな生活。覚悟を試されるような日々を重ね経験を積んでいった。



 「あの当時は、カラーやパーマの待ち時間にコーヒーなどを無料で提供するサービスが始まった頃で。それを契機に内側からキレイにするのは、私が担当する、と。親の店の隣でカフェをやる体で地元に戻ったものの、「無理」「あかん」と周りからは否定と反対の嵐でした。」

満を持して、さあ始めようと地元に戻ったものの、自分がやろうとしていることはそんなにあかんことなんやろうか?と。実行する気力が削げ、1年ほど停滞していた時期もあったという。



 「東京時代から、良いなと思ったカフェの内装を撮り溜めたスクラップブックがあって。ある日、それを同級生に話しをすると、『いいやん。やったらいいやん。』と言われて。」

彼の放った一言は、まるでフミコさんの頭上の曇天を吹き飛ばすようだった。

間を置かず、彼は携帯電話を取り出し、工務店をしている同級生に連絡。「ほな明日の十時。」と、フミコさんに伝えた。

その背中を押す一件からは驚くほど急展開だったという。


 「相談の気持ちで同級生の工務店に行くと、『じゃあ、どんな店構えにする?』と。具体的な話があれよあれよと進んでいって。」


楽しそうだから手伝うよ。と色んな助っ人が現れて。その場にいるみんなで力を合わせて作り上げていく。

まるで部活のようで、わくわくした気持ちもありつつ、心の準備より先に店が建ってしまう。そんな勢いの良さだったと振り返った。



そうして、様々な人から手を借りて作り上げたお店は、営業を始めてから今年の9月で12年を迎える。


お店は飲食の営業だけではなく、コミュニティの場にもなっていて、地域の人たちと協力し合い、イベントやワークショップの開催も。

2022年9月25日、みなくちファームとコティカフェの敷地内で行われた「たかしま里湖マルシェ・くるるもり市」。では、地域循環をコンセプトとした催しを開催。



農業や漁業の生産・加工者や飲食、ハンドメイドまで幅広い出店者が軒を連ねた。エネルギーの自給自足を紹介するブースもあり、出店者や来場者が一緒になって考えるきっかけにも。


店内で販売中の焼き菓子(150円・税込)は、「見守りネットワーク活動」支援として、お菓子1個の売上から5円を赤い羽募金に寄付。巡り巡って、誰かの役に立っている。


地元農家や、さまざまな作家による商品も取り扱っている。そこから人を繋いだり、また新たな交流も。



 「場づくりをしていくとすれば、何ができるだろうと考えたとき、カフェだったんです。」とフミコさん。



厨房でずっと料理を作り続けていたいほど作ることが好きなフミコさんは、〈変わらない安心感があるお店でいたい〉との想いから提供するメニューのほとんどを定番化している。


 「常連さんがいつも同じメニューを注文くださって。いつもの味をほっこり楽しんで頂けたらと。一時期はメニューを刷新していくべきか葛藤もありましたが、常連さんに支えられて、それで良いと思うように。」


レストランのように一皿に物語を生み出す腕はありませんが、と遠慮がちに話しながら。



ここでは、一息つく時間を過ごしたり、立ち返ったり。

なにかを決意したり。

本や人から踏み出すきっかけをもらったりでも、きっとなんでもいい。


ごちそうさま。と店を出ればまた、その人の日常へと踏み出していく。

そうやって、かつての私もしてもらっていたのだから―…。



 今後は、今ある場づくりのもう一歩先に取り組み、いずれは一緒にやってくれる仲間を募りたい。と語った。

人と人、モノとコトの循環を可視化した自由な憩いの場所として。

彼女の実直で温かい構想の庭が、少しずつ育まれている。


(取材・撮影/川島沙織)


koti cafe(コティカフェ)

高島市マキノ町沢1443-1(駐車7台可)

0740-27-0021

11:00-18:00 (17:00 L.O.)水曜・木曜定休 

イベントなどで臨時休業あり。事前確認がおすすめ。

フェイスブック

インスタグラム

お店で食べる時間がなくてコティカフェのお菓子がおうちで楽しめる自販機も。