認知革命と虚構
7万年前、新しい思考と意思疎通の方法を得る「認知革命」が起きた。
人類は「現実には存在しないものについて語り、信じられる」ようになり、「大勢で柔軟に協力するという空前の能力」を手に入れた。
貨幣、国、宗教——。虚構・共通の神話を信じることで、無数の見知らぬ人同士が力を合わせられる。
(『サピエンス全史』:ユヴァル・ノア・ハラリ)
イスラエルの学者ユヴァル・ノア・ハラリのこの著作はザッカーバーグやオバマ大統領のリコメンドもあって、グローバル規模でのベストセラーになった。
「認知革命」ってなんのこと?これあんまり詳しく解説はしてないんだけど、“想像する力”って言っていいのかな。この「ホモ・サピエンス」というのは「噂話」や「陰口」が好きだった……というところから入っていくのね。(まあ、間違いではないのだろうが……)それでこれって、「目の前にいないもの、つまり想像上または記憶上のものを
語っているということ」なんだと説く。
これが他の動物にはできない……ネアンデルタール人でさえ持っていなかった能力だという。
例えば、目の前に「ライオン」が現れたときに、「やばいのが現れたぞ!!」って警戒の音声を立てる動物はいる。サピエンスもそれはする。でも、「昨日ライオンがこの場所に来たんだよ」とか、
「ひょっとすると明日もライオンは現れるかもしれないぞ」ということを言語化するのはサピエンスだけなんだって言う。
さらに、その言い出しっぺが死んでも、口伝えとか伝説で残って次代に伝えられる。「あの谷にはライオンが出没する」とか。
ついでに、あまりにおっかなかったのでライオンを「神」として祀る。自分たちの部落の守護神として祀る。
で、たとえば同時代に生きていたネアンデルタール人との戦いになったとき、ネアンデルタールは30人しか集められないが、サピエンスはその祀った神を共通言語にして500人集める。戦いには必ず勝つ。
「宗教」「神話」をハラリは虚構っていうが、それだけではなく、「国家」とか「「貨幣」や、「株式会社」も「資本主義」も虚構だという。
「虚構」というと門構えが大きくて立派過ぎるが、英語版ではfictionになっている。つまり、フィクションを作り、それを受け入れることがサピエンスを生き物のテッペンに押し上げのだとハラリはいう。とにかく、彼はこの「認知革命」のふいごから取り出してきた切っ先鋭い名刀の「虚構(フィクション)」で快刀乱麻なのだ。切っ先鋭いし、腕も立つので、串刺しになるばかりなのです。
もうすでに、ハラリの次の著作「ホモ・デウス」(神の人)が英語版で出ている。「サピエンス」が“過去語り”とすれば、これは“未来語り”だという。
(完)