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J.S.バッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》寺神戸 亮 全曲演奏会第2夜

2023.01.25 15:00

今回、寺神戸 亮さんによって演奏される

J.S.バッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》

の全般について、まずお伝えします。

これは、第1夜のプログラム(こちら)のために寺神戸 亮さんが書いてくださった解説を要約・抜粋したものです。

全6曲からなるこの曲集は、1720年、バッハが35歳の時に完成されました。


ケーテン侯レオポルドの宮廷の楽長時代で、候がルター派ではなく、カルヴァン派であったために、教会音楽の需要がなかっため、この時代に器楽・室内楽曲の名作が生まれています。

この《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》全6曲はそれら名作の筆頭と言えましょう。


この曲集はソナタとパルティータ、それぞれ3曲から構成されます。

ソナタは緩-急-緩-急の4楽章構成からなる真面目な内容の音楽で、この曲集のソナタでは、第2楽章にフーガを据え、荘厳な空気を醸しています。

一方で、パルティータは緩急の舞曲を連ね、より自由で感情の思うままの音楽を聴かせ、楽章数も曲によって様々です。


当時の慣習では、曲集の前半に3曲のソナタ、後半に3曲のパルティータを置くのですが、バッハはこの曲集でソナタとパルティータを交互に配置し、同番号のソナタとパルティータが組になっているように見受けられるのです。


ソナタ第1番 ト短調 BWV1001 ‐パルティータ第1番 ロ短調 BWV1002

ソナタ第2番 イ短調 BWV1003 ‐パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004

ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005 ‐パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006


この曲集が書かれた年の春、バッハは、最初の妻、マリア・バルバラと死別してしまいます。

しかし、その数か月後、悲しみの只中にあっただろうにもかかわらず、バッハは この無伴奏ヴァイオリンのための曲集を完成しました。


寺神戸さんは、《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》全6曲を通しての構想に、バッハが施した特別な意趣があり、それは妻の死と大きな関連があると言われています。



私は絶望からの復活と再生と感じております。

私を含めて、全てのそれを願っている人に共鳴すると信じています。

バロック期では、芸術家が自分の人生や精神状態を作品に意図的に反映することはありませんでした。


しかし、バッハも人間です。

妻の死はバッハに最も大きなショックを与え、影を落としたはずで、その後、程なく完成したこの曲集にバッハの精神状態からの影響、妻への弔いやオマージュの気持ちがなかったとは言い切れないと思われます。

ただ、実際には、作曲した動機や誰のために書いたのかなど、詳しいことは何もわかっていません。


第1夜での、ソナタ第1番、パルティータ第1番、ソナタ第2番では全体に強い悲壮感、悲哀、メランコリーの表情が支配的でした。

しかし、そこには常に生命力が躍動しており、聴いた後には悲しみよりは満足感、喜びの方を多く感じさせます。


そして、これら3曲に綴られた悲しみからの復活が、今回の1曲目となるパルティータ第2番の終曲の《シャコンヌ》に顔を覗かせます。

パルティータ第2番の動画です。


続くソナタ第3番はハ長調の純粋な響きで長大なフーガでこれまでの悲しみと訣別するようです。

ソナタ第3番の動画です。


パルティータ第3番は華やかなプレリュードで始まり、軽やかなフランス風舞曲が続きます。

その輝かしい空気はバッハの心の転換=昇華を表しているようです。

パルティータ第3番の動画です。


あまりにも簡単で申し訳ありませんが、今回の3曲の解説はここで終わらせてください。

演奏会当夜、バッハが全曲を通して施しただろう特別な意趣を、寺神戸さんが演奏とお話しで紐解いてくださるからです。【編集注】

【編集注】寺神戸さんが今回の演奏会のためにお書きになられた下記プログラムの解説をご覧願います。


また、寺神戸さんは曲集全体についてこう言われています。 

「曲集を貫くのは、バッハ自身の宗教観と人間観です。非常に一貫性があり、綿密に構築された曲集です。バッハの作品の中でも最高峰の一つと言って良いと思います。」


【参考】第一夜の寺神戸さんの解説も再掲いたします。