ほっとする味 [ハレ]の味[ケ]の味の話
令和の中では はれとけ という言葉がどこか図書館の片隅で埃をかぶっているでしょうか。
ハレの舞台
晴れ着
は今でも言いますね。
け はあまり聞かないでしょうか?
晴れ は 英語で言うとオケージョナルなシーンで特別なもの
け は普段といいますか日常 と相対する言葉
さて料理の場合のお話です。
料理屋が小さな時にご贔屓にして頂いていたご夫婦がありました。総合病院をなさっていて
美味しいものだけでなく、遊びの所作を何気ないお話の中で教えていただきました。
ご主人からは「ママちゃん」と可愛がっていただきました。多分私が未熟でとてもとても「おかあさん」と呼べる代物ではなかったことを面白がってくださっていたのだと思います。
そうそう私の筒型の絵唐津のぐい呑みがお気に入りで、予約の時は「お貸し」笑 させていただいたものです。
ある時、お魚のお話から
「先代も美味しいものが大好きであちこち食べ歩いたりしていました。その先生が隠居して、家でも料理を楽しんでもらおうとなかなか気に入っていた料理人を家で雇ったんだよ。」
さぞや喜んでくれると思っていた。
ところが・・・
じきに
料理人さんに気がつかないように、そっと外に食べにいらっしゃるようになっていた。
聞くと
さんまでもなんでも食卓で こう焼き魚が(手でくりくりとうねる姿をして見せてくれながら)なっている。なんだか違うんだよね。夕餉には真っ直ぐ焼いているのを食べるのがいいんだよ
ご贔屓のご夫婦は、料理人さんにおわびをしおやめ頂いたのだそう。
はれとけの口は違う美味しさを求めているのだなあ
そうかもしれない。
飽きるとかそう言うことではなく、まあ晴れではちょっと背伸びする気持ちにもなるものですが。そもそも口が変わるのかもしれない。
環境と味わいはそこにふさわしいものがあって。
け の食卓は きっとほっとする、なんだかほっこりする暖かさと優しさと安心 そんなものがあるのでしょう。それは自分の育った故郷やお家の味ということとはまた違うような気がします。
当たり前があるようにある。
それが根底にある け の美味しさ。
本当にそうしてご贔屓の百戦錬磨の方々からたくさん学んだものでした。