レビュー論文 | Knowledge translationに関する文献で使われている用語に関する調査
EBPに隣接する学問領域の1つにKnowledge translation(KT)があります.とくにカナダでは、EBMと近い意味でKTという用語が使われている、とも言われています(Straus, et al. 2018).McKibbonらは、KTに関する研究(以下、本記事では「KT関連研究」とします)が報告されている論文では、どのような用語が使われているのか等を調べた結果を発表しています (McKibbon et al., 2010).
この論文が発表されたのは2010年ですが、結論としては、KTに関連する用語は様々であることが報告されました.
▾研究の概要
【文献の分類】
・文献検索データベースで特定された論文を、KT論文 or NOTで分類
・KT論文をさらに分類:KT projects/implementations (KT application articles)/presented the theoretical basis, models, tools, methods/techniques of KT (KT theory articles)
【分析】
・KT論文 or NOTで、タイトル・抄録にKT用語が使われていた頻度・割合等を比較
【結果】
・文献検索データベースで2,603 件の論文が特定され、スクリーニングの結果、581 件が KT 論文だった.
・KTに関連する用語として100個が特定され、このうち46個は、文献データベースで特定された論文2,603件全てに含まれていた.・KT論文では、KT論文ではない論文よりも、次の用語がよく含まれていた:implementation, adoption, quality improvement, dissemination, complex intervention (with multiple endings), implementation (within three words of) research, and complex intervention.
この結果から、KTの文献を特定するには労力が伴うこと、論文で使われる用語に注意を払う必要があること等がわかります.
文献レビューは、新しい研究を行ううえで非常に重要な作業ですが、用語が普及していない場合や多義的に使われる場合には、検索も容易ではありません.これはEBPに関する研究も同様ではないでしょうか.
近年は様々なツールの開発やAIにより、文献検索のあり方も変わってきていますが、文献のsearch strategyに関する研究の発展が期待されます.
Reference
McKibbon KA, Lokker C, Wilczynski NL, et al. A cross-sectional study of the number and frequency of terms used to refer to knowledge translation in a body of health literature in 2006: a Tower of Babel?. Implement Sci. 2010;5:16. https://doi.org/10.1186/1748-5908-5-16