理学部 江部日南子先生
理学部の江部日南子先生にご加入頂きました。次世代太陽電池やLEDへの応用が期待される、ペロブスカイト化合物の研究に取組む、若手の先生です。どうぞよろしくお願いします!
研究略歴 :
2022年 4月 山形大学 学術研究院 理学部主担当 テニュアトラック助教 着任
電荷移動錯体-ペロブスカイト複合化結晶の創出と光電デバイスへの応用
2022年 3月 山形大学大学院 有機材料システム研究科 博士後期課程 修了
表面構造制御による高効率・長寿命ペロブスカイト量子ドットLEDの開発
2019年 9月~2020年 3月 短期海外研修 (カナダ、University of Toronto, Sargent Lab.)
配位子置換法を用いた高性能ペロブスカイト量子ドットLEDの開発
2019年 4月~2022年 3月 日本学術振興会 特別研究員 (DC1)
2017年 3月 長岡工業高等専門学校 物質工学専攻 卒業
気相反応法を用いた有機無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池の開発
研究概要
半導体ナノ結晶のハロゲン化鉛ペロブスカイト化合物は、優れた光電子物性および構造の選択性、大面積化プロセスへの応用が容易などの利点により、光電デバイス材料として期待されている。また、低次元型層状ペロブスカイトは、ハロゲン化鉛八面体骨格 ([PbX6]4-) の無機層が有機スペーサーで挟み込まれたナノプレート構造を形成し、無機層の積層数nに応じて、バンドギャップを調整することができる (図1)。近年、バンドギャップの異なるペロブスカイト結晶間の高速エネルギー移動により、非放射失活を抑制し、発光効率の向上が報告されている。また、低い三重項準位をもつ有機スペーサーの導入により、ペロブスカイト結晶から有機スペーサーへのエネルギー移動を発現し、有機スペーサー分子内での励起子再結合が促進されることが報告されている。以上のように、ペロブスカイト結晶および有機スペーサーそれぞれのバンド構造の調整により、自在にエネルギー移動および光物性を制御することができる (図2)。我々は、電子ドナー分子および電子アクセプター分子からなる電荷移動錯体 (CT) を新規スペーサーとして導入し、CT-ペロブスカイト複合体におけるエネルギー移動の利用を目的としている。二分子間CTスペーサーは、分子内CTに比べ、低い立体障害と高い材料選択性によりバンド構造の制御が容易である。我々は、高い緻密性および結晶性をもつCT-ペロブスカイト複合化膜の作製プロセスの開発およびCT-ペロブスカイト結晶間のエネルギー移動機構の解明により、高性能なエネルギー変換材料の開発を目指す。
江部日南子先生
Fig. 1 低次元型層状ペロブスカイト半導体の概要
Fig. 2 CTスペーサー-ペロブスカイト結晶間のエネルギー移動の概要