偉人『アルベルト・アインシュタイン』
2月だっただろうか小学校1年生の生徒さんが3年生の円と球の学習でコンパスを使用しているのだが、突然「アインシュタインはコンパスを作ったんだよね」と話しかけてきた。彼女の指すコンパスは描く道具であり、アインシュタインが病気になった5歳の頃に父から渡され、自然界の仕組みに興味を持ったコンパスは方位磁石である。彼女は偉人伝に興味を持ち読んでいることからアインシュタインに巡り合ったのかもしれないが、方位磁石がコンパスという別名があることには巡りあっていなかったようだ。
そんなこともあったなと思いながら今週は脳に関係する記事を書いているので、『脳』といえば天才物理学者のアインシュタインの脳は案外一般的脳とさほど大きな変化はなかった研究や彼の脳の盗難事件、更に2016年アインシュタインが人生最大のミスと語った重力場の方程式に間違いがないことを日本人の研究チームが証明したこと、長崎広島の原爆投下に一役かってしまったことなど次々と湧き出るアルバート・アインシュタインとはどんな人物だったのだろうか。死しても尚彼の偉業は止まることを知らず私たちにさまざまな可能性を与えてくれる。今回は彼の生い立ちから天才と言われる所以がどのように伸ばされたのか、そして彼とは真逆の努力を積み重ね子供を育てることを私なりの視点で少し考えてみたい。
彼のように世界中の注目を浴びる偉人となると研究され尽くしているが掻い摘んで彼の人生を考えてみよう。
1879年3月14日ユダヤ系のドイツ人である。父ヘルマンは羽毛布団を売る商人や電気製品を製造する会社を兄弟と立ち上げた人物である。
母パウリーネ・コッホはピアニストでもあり、アインシュタインにヴァイオリンを習わせるなど音楽的要素を与えた物静かな母だったと言われている。
20世紀最大の天才、現代物理学の父と言われるアインシュタインが子供の頃5歳になっても言葉が出てこず、9歳で言葉を構築し文章化することがとても難しい状態にあったのは有名な話であると同時に体を動かすこともことのほか嫌がり常に家で空想に耽り本を読んでいたという。言語性と暗記に関わることが非常に劣る反面、数学や物理に関して吐出していた。彼の発達の凸凹は周知の事実なので深掘りせずに彼の両親が施したユダヤ式教育について考えてみたい。
ユダヤ式教育は国を持たないユダヤ人が自分自身の身を守るために長く行われてきた教育法である。まず一つ目は『オンリーワンであれ』。ナンバーワンではなく自らの独自性を身につけよということである。二つ目はしっかりとした家庭教育にある。基本は全て家庭の中で行い彼らの信ずる教典を幼い頃から誦じ記憶し努力しながらアイデンティティを構築すること。三つ目が自分の頭で理解し問題を解決していくことを主として、質問や討論、熟考を繰り返していく生涯学習的教育だ。
アインシュタインの両親は彼の発達の遅れに心砕き悩み、知的遅滞があるかも知れぬと悩んでいたのだが、まさにユダヤ教育に則し両親は彼が彼らしく学びを行えるように彼のできないことに着目するのではなく、彼のできることを伸ばす方向での教育を行ない学習の出来やヴァイオリの出来不出来に着目するのではなく、努力することの重要性を説き教えていたのである。
両親は子供の一番の理解者であるのだが幼い頃のアインシュタインは抜きん出てはいなかったようで、同級生からは「馬鹿正直なのろま」、教師からは「お前がいるだけで私の権威が損なわれる」と余りにも酷い言われようであった。しかし彼が世界的天才、人類が誇る天才と言われるようになったのは、父が与えたコンパスによる発見と彼心の拠り所となるヴァイオリンを与えた敏感期、もしくは臨界期と呼ばれるタイミングが重要であったことがわかっている。アインシュタインは彼の長所を伸ばす教育によって唯一無二の天才物理学者になったと言える。
しかし私は彼が能力に秀でていてもコミュニケーション能力を構築していれば、更に物理学に新たな展開が生まれてきたのではないだろうか。例えばヘレン・ケラーを教育したサリバン女史のような教師が彼の幼き時から寝食を共にしと関わっていたならば、コミュニケーション能力を高めることができたのではないだろうか。サリバン女史のようにできないことをできるようにする教育を受けていたならばどうだろうか。このような意見を論じると長所を伸ばしたからこそ天才になったのだという意見を耳にするが、子供の能力の無限的可能性を目の当たりにしていると案外実行可能のような気がするのである。
大人の固定概念で子供の成長を見るのではなく、特性を押さえた上でしっかりと子供自身から生み出される生きる力や能力の開花を信じ続けることも重要なことだと日々感じるのである。