餌箱
【ショート・エッセイ】
今は新緑のシーズンで緑が目に痛いくらい。
今日もスズメのご一行が4羽ほどでやって来ている。
この鳥たちは冬枯れの頃が大変だ。センリョウ、マンリョウ、ウメモドキ、ピラカンサ、ヤブコウジなどの赤い実をあっという間に丸坊主にしてしまう。
本当に小鳥を寄せたい人は、花などはどうでもよく、そういう実のなる植物で庭づくりをするって聞いた。不思議なもので、花の綺麗なものは実は大したことがなく、花がしょぼいのは実が綺麗だ。人間と同じで、一生のどこかで輝いていたいらしい。
閑話休題。
先日聞いて驚いたこと。蝶に魅せられたその人は、それぞれの蝶が好む花を咲かせる植物、そして彼らが卵を産み付ける好みの植物だけで庭を作るという。まあ、病膏肓などとは言うまい。
さて、庭の赤い実が丸坊主にされてもいい。でも、彼らがひもじいのは気の毒だなって、餌箱を吊るすようになってから15年以上にはなる。
冬枯れの頃は、穀類の餌箱にヒヨドリ、シジュウカラ、ヤマバト、スズメ、ときどきカラス…ちょっと離れたところの果実用餌箱はいつも夫婦で訪れてくれるメジロ用。ミカンなどを刺しておく。
しかし、ヒヨドリがこちらにも出張ってきてメジロを蹴散らし大いに貪る。はたまた穀物用の方ででも、ヒヨドリはスズメ、シジュウカラを蹴散らしての傍若無人振り。ナワバリ意識の強いヤンキー。
これには家人の不興を買い、眉を曇らせている。その彼女には、
「恐竜は羽毛を持つことで鳥類として生き延びた」
という言葉を言ってやり、彼らはわれわれよりずっと先輩なんだから……と心をマッサージする。
春が来て、スズメ、カラス、ドバトを除いて、皆山に戻って行った。最近餌箱に来るのは、もっぱらスズメたち。そのうち子雀も連れてきていいぞ。
本当に彼らは貴重だと思う。
だって、都会の空を飛ぶものが飛行機とドローンだけって悲しいよ。