【川口維新共通政策】川口市に高額な美術館が必要?
昨年12月、川口市美術館建設基本計画が改訂され、総合文化センター・リリア西側のリリアパークでの美術館整備が示されました。建設費用は従前の25億円前後で収まるかは定かではなく、最終的に50億円超ではとの意見もあります。例えば、町田市国際工芸美術館は資材高騰で19%工事費が上昇、高額化しています。また、施設整備費以外にも、公共施設は毎年かかる施設運営費や、一定年数毎に修繕費がかかる点も課題となります。
他自治体の美術館整備費事例
町田市立国際工芸美術館:約40億円
すみだ北斎美術館:約34億円 (既設)
他自治体の維持管理費事例
すみだ北斎美術館:年2.5億円前後
東京府中市美術館 年2~3億円
美術館の閑散事例多々だが、市は経費や利用人数詳細開示を先送り!
日本博物館協会の調査によると、美術館を含む博物館で年間入場者数が伸び悩んでおり、苦労する館は『約8割』に達しています。
運営自治体の声
利用者の増加を図る / 利用を促進する / 会員拡大を目指す / PRを行っていく / 来場者の確保に努める / 入館者数が想定を下回る状況が続く / 年度を経るごとに利用者が減少 / 来場者が前年度を割り込む結果 等々...
厳しい事例が多々で、なぜ川口市は推進するのでしょうか。神奈川県相模原市では、行財政構造改革プランによって『選択と集中』を実施し、駅前美術館整備事業は期間中『事実上の凍結』し、市民に『必要な事業』を選択しました。美術関連事業は既存の公共施設を利用した収蔵美術品の有効活用により所期の目的は達成しています。しかし、川口市は事業開始一辺倒で整備経費その他詳細も後回しです。『基本設計の中で積算、検討』では、整備事業による成果の評価指標もなく、白紙委任で市民も納得できません。
市民の知的欲求への対応
子どもの情操教育に寄与 / 自己実現を目指せる環境 / 文化芸術活動を促進 / 質の高い文化芸術の発信・振興 …美術館の整備が必要?
好立地の土地利活用は民間に任せては?
リリアパークについては現状維持で問題なく、そもそも集客力も稼ぐ力も乏しい美術館を川口駅至近に整備が妥当でしょうか。他の自治体事例を踏まえると、これほどの好立地用地は民間に任せれば、商圏やマーケティングに沿った適切な利用方法が見込め、川口市は歳出なく新たな歳入が見込めます。
土地の利活用には、10年以上50年未満で市に返却される事業用定期借地権を用いることで、市がかかわった形での開発も可能です。川口では最近もSKIPシティC2街区の利活用にこの制度が用いられており、利用可能です。東京のお台場では、この制度で集客施設が多数立地し、昨年利用期間満了後に返還され、隣接の民有地とも連携し、時代に合った新たな土地利用が可能となっています。
税金支出は格差是正に使っては?
川口駅から上野駅まで快速18分、不忍口を出て上野の森美術館迄徒歩3分。その他にも上野の森には複数の美術館、博物館があります。建設予定地である川口駅の北には既にアートギャラリーアトリアがあります。上野にこれほどの施設があるなかで、立地を生かし都内を活用するべきであり、重複して新規建設の必要性は乏しいです。地域のステータス誇示や豊かな文化的イメージのために、優先度の低い事業へ税金投入は妥当でしょうか。
大阪市では保護者の経済的負担軽減等で市立の全小中学校の給食費を無償化し、ウクライナ情勢に伴う物価高騰対策で上下水道料金の基本料金を全額減免するなど、格差是正策をどんどん打ち出しています。しかし川口市はこうした対応が一切なく、美術館建設計画を進めております。
公共下水道及び道路交通網等生活基盤整備は?美術館より下?
川口市は慢性的に交通渋滞が発生している地域や、交通不便な地域が存在するなど多くの課題を認識していながら、まだまだ安行、新郷、芝地区等の不便地域が残ります。都市交通目標の達成時期を前倒しし、幹線道路ネットワーク強化や、バスの定時性及び速達性の確保を優先するべきです。
さらに、公共下水道の普及率が87.9%と低すぎます。人口規模が類似する自治体の平均は93~94%、 全国平均でも90.4%の普及率との差がひどく、下水道未整備地区の整備促進及び関連する区画整理について前倒しが急務です。
こうした住民サービスや市内の格差是正等の課題を優先するため、川口市は公有財産の最適利用に向けて大幅な軌道修正を行わねばなりません。各課題が一定解消するまで、『美術館計画は撤回』が当然ではないでしょうか。