妖のおはなし:飛頭蛮(ろくろくび)(第十一話)
飛頭蛮(ろくろくび)生息地: 関東、中部、四国、九州の一部
一般には轆轤首の漢字を使用します。また落語などでは「ろくろっ首」とも言います。寝ている間に首が延々と伸びていく怪、またタイプとして伸びた首が身体を離れ飛び回り人を襲う、こちらは「ぬけ首」と呼ばれ妖怪図鑑などの絵巻にはこの名が書かれております。飛頭蛮(ひとうばん)の名もそれに当たり画図百鬼夜行ではこの名前にろくろくびのルビが振られています。飛頭蛮は中国大陸の妖怪で首が頭から離れる妖怪・落頭民(らくとうみん)と言う耳を羽根の様にして首が飛ぶ妖怪もおります。さらにマレーシアにはペナンガランという頭が胴体から離れ飛行しますが、こちらは胃袋と腸を引きずっております。内臓を引きずる飛行する頭はタイのガスー、ミャンマーのケフィンとか東南アジアの首は首だけでは腹が減るためか消化器官も一緒に付いて来ます。どうやらペナンガラン等、この東南アジアの首妖怪が、中国を経て日本でろくろ首として伝わった様ですね。
ろくろ首の首は昔の絵を見ると紐の様に細く、いわゆる幽体離脱の表現の様に描かれております、寧ろ現代のイメージのろくろ首の首が太いのは解剖学的根拠と昔の見世物小屋のイメージが影響していると思われます。
妖ばなしの、ろくろ首の話は十返舎一九の「列国怪談聞書帖」の中のろくろ首話を忠実に再現しております。
遠州で回信という僧が、およつという郷士の女と駆け落ちしました、その後およつが病気になりさらに旅の資金が尽きたために回信は、駿河と甲斐の境でおよつを谷底に突き落とします、その後、還俗して藤岡右膳と名を改め、家士となった回信は泊まった宿の娘と惹かれ関係をもったところ、娘の首が伸びて顔がおよつと化し、怨みの呪詛を吐きます。回信は過去を悔い、娘の父にすべてを打ち明けた。すると父が言うには、かつて自分も木こりをしていた頃、谷底である女が倒れているのを見つけ、金を持っているのを発見すると女が息を吹き返したので殺して金を奪い、その金を元手に宿を始めましたが後に産まれた娘は因果により世に言うろくろ首として生まれ落ちてしまいました。しかも今日が十七回忌の祥月命日でした。回信は再び仏門に入って駿河と甲斐の山中におよつの墓を建て、「ろくろ首の塚」として後に伝えた・・・げに恐ろしきは人の執着、因縁因果の物語です。
(妖ばなし文芸部/文責:杉本末男(chara)・イラスト:けんじゅー)
「飛頭蛮(ろくろくび)」の話はDVD妖ばなし第四巻に入ってます!